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最後の賭け

作戦開始!


ひと眠りのつもりが……

あっと言う間に朝になった。


早朝。


ファイナル

処刑の朝に。


おい! 起きろ!

うん? まだ眠いよ……


もうとっくに他の奴は向かってぞ。

残るのはお前らだけだ!


ランとツンデーラを先に引っ張っていく。


看守は苛立っている。

時間が迫っているのだ。


朝飯は?


寝ぼけるな! どこに食う必要がある?

お前はもうすぐ終わりなんだよ!

はっはは!


王子ともあろう者がなんと情けない。


しかし……


早くしろ! 言う事を聞け!

看守たちは馬鹿にしたようにはやし立てる。


王子の成れの果て。

最期を見届ける。


その瞬間はもう間もなくだ。


言われるままにトボトボ歩き出す。


ふあーあ。

まだ眠いと言うのに……


ずいぶん余裕だな王子様。

いや、元王子か? はっはは!


両腕を掴まれた状態では逃げようもない。


早く歩け!

急ぐんだ!

ほら大人しくしてろ!


広場までお連れしてもらった。


儀式が行われた思い出の場所。

出立式の前夜祭では多くの者が身分に関係なくバカ騒ぎ。


懐かしい。

つい最近の出来事のはずだがもう遠い昔の記憶。

急襲を受けた嫌な記憶も蘇る。


ここが処刑の舞台。

何と言う皮肉。

王の考えそうなこと。


大丈夫ナリット?

ツンデーラが心配する。


目の前にはツンデーラの他にラン。カップ。

第二王子も見える。

残りの者は良く分からないが襲撃メンバーに違いない。


それでは始めるとしよう。


少し離れた前方に王。椅子に腰かけ険しい表情を浮かべる。


時刻は間もなく七時。

早朝に片を付けるつもりらしい。


申し開きのある者は?


王が最後の温情を見せる。


お許しください父上!

深く反省しました。どうぞ命だけは!


兄上が命乞いを始めた。


他の者はどうだ?

良いのか? 最後のチャンスだぞ?


王の質問に沈黙で答える。


よし皆を始末せよ!


あの…… お命だけは…… どうか! どうか!

黙れ! 少しも反省してないではないか!


王様! どうかお許しを! 父上!


王は何も答えない。


代わりに手を叩く。


男達が斧を持って配置につく。


どうする?

このまま流れに身を任せるか。

最後の手段に出るか。

決めかねる。


王の気持ちは変わらないだろう。

それならばいっそこの手で……


左隣の少し離れた位置にいるランに話しかける。


大分予定と違うが?

王子! お静かに!


一応聞いてみるがもしもだ……

もし失敗して処刑された場合私の魂は次の世界にいけるのか?


何を…… そんなはずがないじゃないですか!


おいそこ! 大人しくしてろ!


兵士が睨みつける。


まずい!

後には引けない。


王の機嫌次第だ。

王の号令ですべてが決まる。


もうこちらには打つ手がない。


よしもう良かろう。

手を叩く。


後ろの男が斧を振り上げる。

よく見ると彼は親衛隊の隊長のブルダであった。


隊長!

ナリット王子……


せめて俺の手で葬ってやる。

後のことは俺に任せろ!


隊長……


演舞の師として敬っていた隊長が立ち会うとは何という偶然。

もちろん隊長自らの申し出であろうが。

それはそれでむごい。


隊長!

ナリット許せ!


王命が下る。


やれ!


と言いたいところだが儂も鬼ではない。

最後の望みぐらい叶えさせてやらなくてはな。


何でもよい。順に言って行け!


王の慈悲が見られた。


おお! 何と慈悲深いお方か!


王の威厳か? 民からの信頼か?

バランスが大事だ。


慈悲深い王を演じればさすがに王子殺しという暴挙も少しは薄まるというもの。

ただ反逆者を制裁するその大義だけでは心もとないのだ。

王子は、特にナリットは民からの人気も高い。

下手を打てば王自身に帰ってくる。

慈悲深くもなるというものだ。


しかしそれは同時に甘さでもある。


第二王子は案の上命乞い。

見苦しいことこの上ない。


最後の望みと言ったろ!

愚か者め!


兄上……


第二王子は諦めたのか口を閉ざす。


他の者!


誰も応えようとはしない。


良いのか?

本当にもう良いのか?

今なら叶えてやれるのだぞ!


ナリット!


私はいいです。

できたらツンデーラの願いを叶えてやってください。


何? 何もないとな? 

はい!


本当に良いんだなナリット?

もう覚悟を決めました!


よろしい。ではツンデーラよ。

言ってみよ!


私は…… 王様……


何だ? はっきり言え! 聞こえないではないか!


私の願いは一つ。


だからその願いを言え!


はい。私の願いは……


婚姻の儀式で献上した家宝をお返しください!


今さら何を言う!


しかし……


一度献上した物を戻せとは無礼な!


ですが私にとってはあれはナリット王子との思い出の品であり家宝でもありますから。大切なものなのです。どうかどうかお願いします!


うーん。困ったな。


今一度この手に!


ツンデーラは迫真の演技で迫る?

いや、必死なのだろう。

これも計画のうちとは言え……


想定したよりも厳しい状況。

ツンデーラも緊張が見て取れる。

後ろには依然斧を持った兵士が控えているのだから。


頑張ってくれ。ツンデーラ。


我らの命運が尽きる前に!


                 続く


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