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ランの告白

手薄な警備をすり抜け運よく脱出に成功。

外へ走り出す。


強運。

おそらくナリットの強運。

しかしその強運も長くは続かない。


行くぞ!

待ってナリット!


ツンデーラが遅れる。


大丈夫かツンデーラ?

もう少しだ。もう少しすれば……


その時だった。


脱走したぞ!

早く捕まえろ!


辺りが騒がしくなった。


急ごう。このままでは追手に捕まってしまう。


ツンデーラの腕を持ち無理な態勢で走る。


そっちだ!


すぐに見つかってしまった。


このまま逃避行と行きたかったが…… 現実は甘くない。


追手の必死の追及に心が乱れる。


何度も振り返り距離を測る。

差はほとんどない。

今にも追いつかれそうだ。


待て! もう逃げられないぞ!

観念しろ! 

逃げ切れると思ってるのか!


くそ!


とにかく前へ。

走るしかない。


きゃあ!


ツンデーラが足を滑らせ転倒。


その巻き添えを食う形。


ナリット先に行って!

私がおとりになる!


だめだツンデーラ! 君一人を置いてはいけない!


そこを動くな!


男達が連れ戻しにやって来た。


万事休す。


逃げる意思が無い事を伝え大人しく言う事を聞く。

こうして逃避行は失敗に終わった。


おい! ふざけやがって。

まったく迷惑な奴だ!


散々嫌味を言われ牢に戻される。


へっへへ。ここがお前らにはお似合いだ。

もう二度と変な気を起こすんじゃないぞ!


王子様。おっと元王子様か。はっはは!


済まない。ツンデーラ。

私のせい…… 

そんなことないさ!


ツンデーラを抱きしめる。


大丈夫か? 怪我してないか?

ええ。心配いらないわ。


結局、建物を出たところで取り押さえられた。脱走未遂とは情けない。

しかしこれで処分はより厳しいものになる。

もちろん報告すればだが。


大失態。

敢えて報告するか?

うーん。微妙だ。


大失態だがすぐに取り戻した。

彼らのに保身とやる気の無さに懸かっている。


最悪ツンデーラも同様に処されるかもしれない。


ブツブツ。


ナリット! 落ち着いて。

ああ、済まない。


夕方。


陽が傾いた。


おい! 夕飯だ。


看守が一人増え目が行き届くようになった。

欠伸もしていない。

緊張感を保って任務に当たっている。


もう同じ手は使えない。

後は意表を突く何か。


何か方法があるはずだ。

諦めずによく考えろ。


男が一人入ってきた。


お伝え致す。王子の処分が決定した。


明朝早くに決行致す。

それまでに心の準備をしておけ!


以上。


男はそう告げると姿を消した。


最悪の結果。

最悪の展開。


ツンデーラまで巻き込んでしまった。


上の決定。

それは王の判断。

覆しようがない。


もうダメだ。

王は切り捨てる決断をした。


それがどれだけ理に適っていようと。

実の息子。


王子を処刑するとは何とむごい。

何と非情か。


明日に迫った現実に恐怖する。


もう冤罪などと言ってられない。

腹を決めねば。


ナリット?

心配そうに見つめるツンデーラ。


大丈夫だよ。俺が何とかする。


ナリット!

その眼には涙が。


思いっ切り抱きしめてやる。


ずっとこのまま。

朝まで。


しかしその思いも敵わない。


おい! こっちだ!


痛いわね! 何をするの!

いいから入れ! 変な気を起こすなよ!


あれ……

どうも。


ラン? ランじゃないか!

どうも。お邪魔だったかしら。


私のことは放っておいて好きなだけ抱き合うといいわ。


ラン!

ランさん。


エヘヘヘ

捕まっちゃったみたい。

最後の切り札なのにね。


ラン!

何ですか王子太郎!


ずいぶん余裕だな。

いえ明日には私も王子と一緒に……


お前もなのか?


ええ。王子に関わったばかりに。


俯く。


そんな馬鹿な……

俺は一体……


大丈夫。何とかなりますって。

三人で助かる道を考えましょう。


そうだな。まだ諦めてたまるか!

その意気です。


とにかく知っている事を話してくれ!

分かりました。王子の役に立てるなら。


では今度の襲撃事件の首謀者だが……


それはもちろん。ナリット様あなたです!


おい。冗談はよせと言ってるだろ!


そうではありません。真実なのです。


俺が首謀者?

馬鹿な! そんなはずない! どういうことだ?


少しは自分の頭で考えてください。太郎王子!


だからいくら考えても思い当たるはずもなく……


私はこう言いました。この襲撃事件の首謀者はナリット王子だと。

黒幕は第三王子のナリットだと。


太郎王子!


言っている意味が分からんのだが。ツンデーラはどう?

私にもさっぱり……


二人とも理解力が無いですからね。仕方ありません。

いくら取り繕っても元が元だけに。


侮辱する気か!

いえ。事実を述べたまでです。


だが……


分かりました。理解できるように説明します。


太郎!


それは止めろと……


首謀者はナリット。あなたが王子になる前に計画したのです。


どういうことだ?


少しは自分で考えてください。ボンクラ王子!


嫌味ばっかり言いやがって! うん…… 待てよ……

そうかそういうことか!


ようやくご理解いただけましたか。


ああ。俺がここに来る前に全て始まっていたのだな?

ええ、数週間前から襲撃計画は始まっていました。


その首謀者がナリット王子。

そうか。この体の前の持ち主。


うん? どういうこと?

ツンデーラにはまったく理解できない。


それもそうだろう。

そろそろ真実を知らせる時が来た。


いいかい。ツンデーラ……


語り始めた。


               続く


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