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悪夢

覚醒。


闇夜。

辺りは暗くなっていた。

戦乱の跡は見られない。


終わったのか?

誰か?

誰かいないのか?


いくら叫んでも反応が無い。


ラン!

ラン!

ツンデーラ!


誰でも良い返事をしてくれ。


暗いよ!

怖いよ!

誰か?


走り出す。


俺はここだ。

ここだ! ここにいるぞ!


まさか一人も? 残ってない?

ラン!

ツンデーラ?


あれ動かない。

どうしてしまったんだ?


手に何かが絡みつく。

まるで蜘蛛の糸のように。


終わったかと思ったら足に引っ付き始めた。


誰だ?

肩を掴む何者。


何をする!

姿を見せろ!

名を名乗れ!

王子に対して失礼であろう!


へへへ。

何だ言ってみろ!

へっへへ。


笑うばかりで意思の疎通ができない。


ぼんやりしていた顔らしきものがはっきりと見えてきた。


どういうことだ?


太郎君見っけ!

お前は?

おっと大人しくしようね。


こっちだよ。

ほらおいで。


ジタバタするな!


止めてくれ!


どうした太郎? 今度はどんな言い訳を考えたんだ?

ははは!


なぜ生きている?


太郎!


俺は…… 太郎じゃない!

ナリット王子だ!


太郎!

うるさい!

太郎!

太郎なんかじゃない!


ムニャムニャ


うん?

いつの間にか朝になっていた。


朝日が眩しい。


ここは一体どこだ?

誰かいないのか?


お目覚めですか。

ここはどこだ?

どこって見ればわかるでしょう。


懐かしい風景。

前世では嫌というほど体験した狭い空間。

今は一人だが何人入ってくるやら。


ここは……

絶句する。


ヨーク家所有の牢獄。


主に国王に立て突いた物を一時的に保管する。

もはや人間ではなく物扱い。

ラン情報。


ふわああ!

やる気は感じられず欠伸ばかりしている看守。


私は王子だぞ!

それで?

ナリット王子だぞ!

だから?

何かの手違いだ!

はあ?


なぜ王子の私がこのような場所に居ねばならない?


うるさいなあ。少し静かにしてくださいな。王子様。

はっはは! 元王子か。


どうなっている?

まだ夢を見ているとでもいうのか?


そうだ。王様はご無事か?

しらじらしい奴だな。何が王は無事か? だ。


見る夢を間違えた?

悪夢はまだ続いているのか?


仕方がない。

もうひと眠り。


昼。


おい! 起きろ!

ムニャムニャ…… 王子だぞ……

起きろ!



看守の叫びで目覚める。


何だまだ夢の中じゃないか……


起きろと言ってるだろ!

うん? 夢?


王様がお見えになった。


王? ヨーク王?


ご無事で何よりです。

うむ。


私は勘違いでここに収容されてしまいました。

いや…… 勘違いではない!


王? 父上?


ナリットよ。お前には失望したぞ!

えええ?


兄殺しとはな。

まさか予定が狂わなければ儂も暗殺するつもりだったのか?


何を言ってるのかさっぱり。

シラを切るとは情けない。


しかし王様。私はあなた様をお守りしたはず。

儂だってお前の貢献を評価しない訳ではない。

ではなぜ?


裏切ったであろう。

父上! まさか私が裏切ったと言うのですか?

それ以外に考えられん!


証拠はあるのですか?

証拠か。それを裏付けるメモならお前の部屋から見つかったがな。


私は無実だ!


それよりも兄殺しの汚名を着せられては黙っておられません!


あくまで関係ないというんだな?

はい。潔白を証明して見せます。


意識を失ってから何が起きたのですか?


計画が失敗した。

いや成功したのかなナリット王子にとっては。


教えてください国王!

うるさい! 立場を弁えよ!

父上……


ナリットよ。詳しい話は他の者に聞け!

お前が意識を失ってからすぐに儂は捕えられた。


そこにいたのは誰だと思う?

誰って…… 

しらじらしい奴め! 第二王子だ!


兄上が裏切ったんですか?

この…… まだ言うか!


お前たち王子を信頼しておったのに。やはり歴史は繰り返されるな。


実は昔。


王の長い昔話が始まった。


儂もそうであった。

あれはいつだったかな?

十もいってなかった。

幼き儂には二人の兄がおった。

名前はとっくの昔に忘れたがな。


儂の目には二人は実に仲の良い兄弟で優しい兄だった。

それがいつの間にか口も利かなくなってな。

幼き儂にはなぜそのようになったのか分からなかった。


そして勃発してしまう争い。

王位継承をめぐって二人は対立する。

醜い争いの果てに共倒れ。

両者とも瀕死の重傷を負う。

二人は回復することなく逝ってしまった。


代わりに第三王子である儂が王位についた訳だ。


ラッキーだと思うか?

悲しいか?


儂はそのどちらでもなかった。


ヨーク家を守るのは自分以外いなかった。

必至に王を演じた。

それが儂に与えられた使命だからな。


以上。


ナリットよ。お前も第三王子だ。

儂の気持ちが分かるだろう?


ええ。少しは……


お前は権力におぼれた。

第二王子を唆し第一王子を亡き者にした。

その代償はは大きいぞ。


父上……


よく聞けナリット!

明日だ。

明日までにすべての罪を認めろ!

そうすれば最悪の事態は避けられる。


いいな?

ええっと……

何かあるのか?


私は無実です!

なぜ信じてくれないのですか!


この状況でシラを切るとは正気の沙汰か?

しかし私には身に覚えがありません。

よしそこまで言うのなら連れてきてやる。


そこで待ってろ!

父上?

その代りもう後には引けんぞ。


事実ならば愚か者と同様の刑に処するぞ。


いいな?


愚か者とは一体……


その一人を連れてきてやる!


そう言うと出て行った。


                      続く


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