表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/29

真夜中の訪問

第一王子の部屋へ。


ノックをする。

返事が無い。


もう一度叩く。

ドンドン。

やはり反応が無い。


もう眠ってしまったのか?


最後にもう一度。


兄上! 兄上! お休みのところすみません。

明日のことについてお話があります。


なんだナリットか?


警戒しているのか外の様子を窺う。

入れ!


明日の儀式について何か問題でも?


いえ。王子様。

ランが間に入る。


ううん? お前は誰だ? 


私はランでございます。ナリット王子のお世話をしております。

ああ、新入りの者だな。それでどういった要件だ。


何か良くない噂があります。

王や王子たちを狙った輩が乱入するやもしれません。

お気を付けください。


私からは以上です。


我らを狙う者が襲ってくると言うのか?

か…… 返り討ちに…… してやっる!


明らかに動揺している。


これはどう捉えればいいのか。

演技でもなさそうだ。

震えが声からも動きからも伝わってくる。


兄上。心配なさらぬように。

全力でこのナリットがお守りいたします。

安心してください。


ただ…… 不穏な動きがある事を事前に知らせておくべきかと思い、お伝えした次第です。

そうかナリット。よく知らせてくれた。

どうぞご心配なく。


明後日には旅立つのだったな。頑張れよ。

はい。そのご挨拶も兼ねて伺った次第です。

安心したぞ。我が弟よ。立派になれ!


第一王子との対面を果たし次に向かう。


第二王子。


どうだった?


さあ。第一王子については何も知らないからな。でも演技してるようでも何かを隠しているようでもなかったし問題ないんじゃないか。


そうすると残るは……


次は俺が仕切るよ。

そう。ご自由にどうぞ。


時刻は十一時に迫ろうとしていた。


トントン。


誰だ?

ナリットです。

何用?

明日のことでお話が。


よし入れ!

許しを得て中へ。


うん?

ランに視線を送る。


大事な話に得体の知れない新入りを同行させるとはどう言うつもりだ!

ご心配なく。彼女は口も堅く優秀なメイドです。


信用していいのだな?

はい。


では要件を聞こうか?


明日についてですが。儀式の段取り……


ああ、その事なら大丈夫だ。抜かりはない。

お前の好きなようにするといい。


ありがとうございます。


明日が最後だ。楽しむがよい。


はい。それから不穏な動きが見られます。

兄上もどうか慎重に行動願います。


ああ。どこに目があるか分からない。お前も気をつけるんだぞ。


二人は互いを気遣った。


何かあるかラン?

特に何も。ナリット王子の気の済むように。


はっはは。手なずけているようだな。

それならば少し込み入った話をしても良かろう。


明日は何時からだ?

遅くても夕方にはお願いします。


そうだな。何と言っても参列者が完全に揃うのは夕方からだからな。

よしそれまでに用を済ませてしまうか。


それではくれぐれもお気をつけて。

ああ、ナリットお前もな。


部屋を後にする。


どうだったラン?

別に! これと言って不審な動きは見られません。


仲がよろしいのですね?

いやそんなことはない。兄上も小言ばかり言うが内心は心配しているのだろう。


部屋に戻るか。

そうですね。


うん? 人の気配がする。


ストップ!

 

ううん? 誰もいない?


どうしました王子。

いや人がいたような気がしてな。


こんな時間に?

勘違いでしょう。


そうだろうか……


辺りを見回してもそれらしき気配は感じられない。

まさか監視されている?


謎が残る。


その時物音が聞こえた。


と同時に黒い影が動き出した。


何者?

敵か味方か?


急いで追いかける。


館から出て行った人影。


この屋敷は夜になると見張りも少なくなり、ある程度自由に出入りできるが、外には見張りもおり簡単には侵入できない。


おーい!


王子お気を付けください。


草陰からごそごそと物音を立てる何者か。

その正体は……


うっす。王子様。ごきげんよう。けっけ。

ツンデーラ?


酔っぱらっているのか?


へへっへ。固い事言わない。

少しぐらならいいいしょ! へへへ。


王子。私は戻っております。

おい。助けてやってくれラン。

いえいえ。危険はないようなのでゆっくりお楽しみください。


そう言うと面倒はごめんとばかりにそそくさと屋敷に戻る。


中から見守ってくれているようだ。


とにかくツンデーラを介抱してやる。


どうした何があった?

裾を引き摺ってみっともないぞ。


王子。へっへへ。


間もなく明日となる時間。


ドレスを泥まみれにし袖はひどく裂け靴も脱げかかっている。

特注のガラス製の白い靴が泥にまみれて輝きを失っている。


残念なドレス。

残念な靴。

残念なツンデーラ。


王子! 私……

何かを訴えかけるが聞き取れない。


お酒でごまかそうと思ったけどやっぱりダメ。

どうしたんだツンデーラ?

王子ごめんなさい。


フラフラのツンデーラを確保。


私結婚できない!

ええ? 冗談だろ?


怖いの……


初めてのことで憧れよりも恐怖が強くなってしまったらしい。


いわゆる元の世界で言われていたマリッジブルー。


大丈夫だ! 何も心配はない!


いや待てよ。俺も経験ないぞ。

不安が押し寄せてきた。

ツンデーラを宥めようと口にした安易な言葉に自分が囚われてしまう。


大丈夫だ! たぶん…… 一緒に幸せになろう!


ツンデーラを抱きしめる。


これですべて解決だ。


いや! 

拒絶する。


ツンデーラ?


腕を振りほどき駆けていくツンデーラ。


おい! 待ってくれ!


泥まみれのガラスの白い靴が片方脱げてしまったようだ。


待ってくれツンデーラ!

靴を! 靴を!


ツンデーラは振り返る素振りも見せず全力で駆けていく。


このまま放っておくのは危険だ。


ツンデーラ!


                      続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ