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あなたは誰?

エミ―の部屋へ。


ノックをする。


男が立ち塞がっている。


それでは私はこれで失礼するよ。

うん? お客さんかな?


おお! 王子ではありませんか。こちらに何用で?

いや、明日のことで話がある。


エミ―さんは体調を崩されています。

体に障りますので短めにお願いします。


医者はそう言うと去って行った。


ゴホゴホ

はあはあ


どうした体調を崩したと聞いたが。


エミ―はベットに横になって安静にしていた。


王子様!


よい。大人しく寝ていろ。


お見舞いに来たのではなくあくまで話を聞きに来たに過ぎないのだ。

怪しい言動が無いかどうか。

彼女に悟られないよう気をつける必要がある。


しかしこの様子では無理だろう。

たとえ裏切り者だったとしてもこれではどうすることもできないのだから。


ゴホゴホ

王子様ご心配をおかけしてすいません。必ず明日の儀式には万全にしますので安心してください。


無理するでない。体調が悪ければ欠席しても構わん。

いえ、そうは行きません。村の皆にただでさえ顔向けできないと言うのに……


一つだけ聞きたい。明日のことで王やここの者から何か指示があったか?


ゴッホゴッホ

いえ、何も…… 特に何もすることがありませんし……


はあはあ はあはあ


よし分かった。ゆっくりしておれ。


花嫁になれず体を壊すとはかわいそうなことをしたものだ。

しかし私の気持ちは変わらない。

明日は彼女たちの為にも無事に式を完遂させねばならない。


イーナイナの様子を見に行く。


トントン


王子!


もう寝ているかと思ったが反応があった。


一緒に遊びましょう。

おいおい。もう寝る時間だぞ。

早く! 早く!

寝てなくちゃダメじゃないか。

わたち子供じゃないの!


困ったなあ……

王子! 遊ぼ!

イーナイナは元気だね。


早く早く!

はっははは。


次は次は……

ご本を読んで!

えー 昔あるところに太郎という……


イーナイナに振り回されること一時間。


うーん。まだ…… 遊びた……

イーナイナは眠ってしまった。


こうしてようやく解放された。


イーナイナをベットに運び、じっっとりと濡れた服を脱がしてやる。

全てを脱がすと、新しい服に着替えさせる。


おやすみイーナイナ。


最後にアルールの元へ。


ノックをする。

どうぞ。

失礼するよ。


王子? 会いたかった!

アルールが抱き着いてくる。


どうしたアルール?

王子私を抱いて!

おいおい。そんな訳に行くか!


突き放そうとするが決して離れようとはしない。


アルール?

分かってる! でも気持ちが!


ただの幼馴染じゃないか?

何を言っているの? 小さいころに約束したじゃない!


約束?


大きくなったら一緒になろうって!

それは……


ただの幼馴染の関係ではないようだ。

これ以上の長居は危険である。


ナリット!

俺は……


一旦距離を取ったが再び胸に飛び込んでくる。


俺は…… 王子なんかじゃない!

へえ? どうしたのナリット?

いや…… 私は君にはもったいない男さ。

そんなことない!


まずい。このままの態勢では最後まで行ってしまいそうだ。

結婚前日に他の者に手を出したと知られたらいくら王子とは言え追放されるとも限らない。


それだけ明日の儀式は大事なのだ。

儀式を汚すわけにはいかない。


苦しい心と反応してしまう体を何とか抑えてアルールを突き放す。


済まない!


そんな情けをかけるような人ではないわ!

あなたはいったい何者?


はっはは。何を言ってんだい。

私。あなたが偽物だって知ってるのよ!

王子の私が偽物だと言うのですか?

ナリット王子。あなたはいったい何者なの?


アルール! もう行かなくては…… 済まない……

逃げるのね?


いい加減にしろ! 私が私でなくて何だと言うんだ?

後ろめたさから声を荒げる。


そう。それよ。あなたはそうでなくちゃ!


失礼する。


ナリット!


何とかごまかすことができた。

少々の疑念は残っただろうが証拠は何一つないのだ。


アルールは何もできないはず。

それにしても幼馴染とは厄介なものだ。

少しの変化も見逃してくれないのだから。


元のナリット王子は相当な性格の持ち主。

俺とは正反対のようだ。


ふう。疲れた。


どうだった王子?

ランか。疲れた。話は明日にでもして今日は休みたい。


そうも言ってられないでしょう。明日はもう儀式が始まるのよ。

今夜中に手を打たないと。


しかしどうしろと? ああ疲れた。

王子! お兄様たちにお会いなってはいかがでしょう。


ええ。今から? もう寝てるだろう。

寝る前にあいさつに行くのよ。


勘弁してよ。何を話せばいいのか。

大丈夫。私がついて行ったあげるから。


休むことなく次の任務へ。


ランと二人で兄たちの寝室に向かう。


時刻は十時過ぎ。


見張りの者もお付の者もこの時間には居ない。


チャンス。

忍び足で廊下を進む。


ねえ。別に話を聞きに来ただけなんだから堂々と歩けばいいじゃない!

馬鹿! 他の者に疑われたらどうする?


それで花嫁候補さんはどうだったの?

今その話?

良いでしょう。時間がもったいない。


ランには悪いが怪しい言動の者はいなかったよ。

まあ一人だけ俺をひどく疑っている者がいたけどね。


うふふ。その話しぶりだと幼馴染のアルールさんね。


ああ。本当に驚いたよ。俺が偽物だと知っているなんて言った時は心臓が飛び出そうになったよ。


まあ疑って当たり前よね。

中身は太郎なんだから。


その呼び方は止めてくれ!


はいはい。結局収穫なしでいいの?

たぶん彼女たちは関係ないよ。


それが分かっただけでも前進じゃないかな。

それは困ったわねえ。とにかく明日までに何とかしないと。


そうだ。一人、気になる人物がいるんだ。


しっ! 黙って! いい?


第一王子の部屋へ。


                   続く



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