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013 というかほんとうに引きこもりなの?

 ふん、とレフィナド王女は鼻を鳴らした。

 黒い布にくるまれてなかったら、それこそ悪役王女っぽい立ち位置に収まっていそうなオーラがある。


「あなたに頼みがあるの。あたくしのために、レースを編んでくださる?」


 拒否権はない、と言葉の端々に滲んでいる。

 うーん? こっちは十歳上の余裕で対応せねばなるまい。 


「はい。どんなレースですか?」

「それを被ればどんな屈強な者でもあたくしを動かすことができないものを」

「ははは。見ての通り、レフィナドは引きこもりなんだよ」


 兄、呑気に笑ってるけど、妹めっちゃ睨んでるー。

 ふたりとも目元がよーく似ている。


「使用人からもお兄様からも聞きましたわ。貴女の編んだレースモチーフは、特別な力があるんですって?」

「レフィナドには黙ってたのに、問い詰められちゃってね。連れてこい、連れてこいってうるさくて」

「お兄様は黙ってくださるかしら」


 というかほんとうに引きこもりなの?

 黒い布はデフォルト?

 それにとってかわるものがほしいってこと?


 いろいろとツッコみたいけれど、ツッコめる雰囲気ではないのは確かだ。


「被れるくらいのものですね。かしこまりました」


 ここは大人の余裕で敢えてそっとしておこう。


 それにしても、精霊王に投網したくらいの大きさっていうことか。

 なかなかの大作になりそうだ……。

 これまでに編んだものも使って、繋げていこう。


「さぁ、話もまとまったことだしアフタヌーンティーを楽しもうか」


 何故だかいちばん満足げにグラシア王子が言い、扉の外に控えていたらしい使用人に声をかけた。

 慌ててわたしはヴェールを被り直す。

 絶妙なタイミングで金色のワゴンと共にメイドさんが入ってきた。

 ワゴンの上には三人分のアフタヌーンティーのセットが乗せられている。

 そのままスタンドと紅茶一式がクリアパープルの丸テーブルに移された。


「あとは自分たちでやるから、下がっていいよ」

「かしこまりました」


 メイドさんが退室したのを確認して、再びヴェールを外す。

 グラシア王子が椅子を三脚、丸テーブルの周りに移動してくれた。

 どの椅子も博物館に置いていそうな豪華な見た目で、猫足で可愛い。


 当然ながら部屋の主は真っ先に椅子に座った。

 空いている片方に、王子が手を差し伸べる。


「どうぞ、イロハ」

「し、失礼します」


 わたしの左側に王女、右側に王子が座るかたちになる。


 きょろきょろ。


 室内、カラフルで、どれも可愛いなー。


「何かしら」

「いえ。レフィナド王女はセンスがいいなと思いまして。あの棚もこのテーブルもめちゃくちゃ可愛いですね」

「ふん。当たり前でしょう。あたくしはこの国の王女なのよ」


 よく分からない理屈だけど、これがツンデレってことだろうか。

 憎まれ口もなんだか可愛く感じる。


「そうですね。そう思います」

「砂時計が落ち切ったから、まずは紅茶を飲もうか」


 グラシア王子がてきぱきと紅茶をカップに注いでくれる。


 三段のアフタヌーンティーセット。

 下にはきゅうりのサンドイッチ、真ん中にはほかほかのスコーンとクロテッドクリームとラズベリーのジャム。

 いちばん上には、いちごのケーキとオレンジのタルトとミニグラスのプリン。

 ホテルのカフェで出てきそうなアフタヌーンティーセットである。


「どうぞ、イロハ。貴女のために用意したのよ」

「ありがとうございます。いただきます」


 しゃきっとしつつも塩味の効いているきゅうりがたっぷり挟まれたサンドイッチは、シンプルながら、パンもしっとりとしていて美味しい。

 紅茶はアールグレイのようなフレーバーティーだ。


 シェフのごはんも美味しいけれど、王城の食べ物も上質な感じがして美味しい。


 王女は丸いスコーンを真ん中で割って、たっぷりとクロテッドクリームをつけた。

 そしてふぅふぅ息をかけて冷ましてから、ぱくりと頬張った。

 頬が上下する度に、朱色の瞳が強く輝く。


 か、可愛い……。


「はひはひら」


 なにかしら、と言いたいんだろうか。可愛い。

 悪役王女だなんて思ってごめんなさい、レフィナド王女。


「イロハ。二つ返事で引き受けたけれど、大丈夫かい?」

「安心してください。これまでに編んだもののけっこうあるので、わりとすぐにできると思います」

「食堂に置いていたもの以外に?」

「ハイ、ソウデスー」


 だって食堂に置いておくと、どんどん持って行くんですもん。王子が。


「道理で最近、少ないと思った」

「どれだけ持って行ってたんですか!?」

「淑女の方々には喜ばれるから、ちょうどいいんだ」

「は、はぁ……」


 贈り物と共に愛の言葉でも囁いているんだろうか。

 グラシア王子らしいといえば、らしい話だ。


 紅茶を飲んで、わたしもスコーンに手を伸ばす。

 外はさっくり、中はしっとり。全然ぱさぱさしていない。

 ラズベリーのジャムも甘酸っぱくて、ちょうどいい。


「レフィナド王女は、この部屋から出たくないんですか」

「あたくしに指図するつもり?」

「いえ、そういうのじゃなくて。そんなに可愛らしいドレスをお召しなのに、外に出たりしないのかなって」

「イロハが来るちょっと前までは、レフィナドも引きこもりじゃなかったんだけどね」


 グラシア王子が代わりに答える。

 すっ、と朱色の瞳に怪しげな光が浮かんだ。


「正しくは当代聖女が行方不明になる直前、かな」

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