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010 わたしも、聖女探しに参加すべきでは?

 改めて自分のやらなければならないことは、レース編みではないような気がしてきた。


「えぇと、一応軟禁の身なので、考える余地もありませんでしたが、確かにそうですね……」


 本物の聖女を監禁している奴らは、今の聖女が身代わりの存在だというのも知っているだろう。

 毎日が必死でそこまで考えが及ばなかったことにぞっとする。


 精霊王は、じっとわたしを見つめてくる。

 何か言おうと言葉を探していると、ノックもなく部屋の扉が開かれた。


「精霊王。やっていいことと悪いことがあります」

「……デセオ」


 現れたのは、まだ帰っていなかったらしいデセオだった。

 入室はせず、廊下から声を張ってくる。

 今にも腰に差している剣に手をかけそうな勢いだ。


「人間の世界に干渉しないのでは?」

『そう睨むな。眉間の皺が取れなくなるぞ』


 精霊王がぼそぼそと答える。


「我を捕らえた者の顔に興味があっただけだ。さらば」


 すうっ、と精霊王の姿は溶けるように消えていく。

 わー。流石精霊王。

 じゃなくて。


「入室しても?」

「ど、どうぞ」


 一応断ってくれてから、デセオは部屋に入り扉を閉めた。


「迂闊に窓を開けたり、ヴェールを取ったりしないように。誰が見ているとも分からない」

「ご、ごめんなさい」


 不機嫌さ、五割増し。

 威圧感がすごい。


「だけど精霊王に言われて気づきました。わたしも、聖女探しに参加すべきでは?」

「必要ない。お前は役に立たないし、こうやって身代わりになっているのが最善だ」


 うぐっ。

 そりゃ、そうですけど。

 そんな言い方をしなくたってよくない?


「聖女が見つかったら解放してやる。そのときにはそれなりの報酬も用意する。だから、今はきちんと民の前に立つことだけを考えろ」

「……はぁい」


 でも、もやもやするなぁ。


 また精霊王は現れてくれるだろうか。

 人間の世界に干渉しない、って言ってたけれど。

 何か尋ねたら、教えてくれたりするかな。




★ ★ ★




 聖女のありがたーいお言葉の日が近づいてきていた。

 ということで、わたしは城の敷地内にある、騎士団の館に訪問することとなった。


 デセオ曰く。

 騎士団員に対して、鼓舞するのが仕事だという。

 ただ、わたしはそれをきっかけに、早々に正体がバレるんじゃないかとひやひやしている。

 だって、わたしにはおしとやかさの欠片もないし。


 悶々としつつ一階へ降りていくと、まさかの人物が待っていた。

 朱色の髪と瞳の持ち主といえば。


「迎えに来たよ」

「グラシア王子!?」


 何故、デセオじゃなくて王子が!?

 よほどわたしが驚いた表情になっているのだろう。

 グラシア王子は自らの顎に手をやって、くすくすと笑った。


「もちろん、本来ならデセオの仕事だよ。だけど、指導が長引いているんだって。だから代わりに迎えに行くと申し出たのさ」

「は、はぁ……」


 だから、グラシア王子だって忙しいのでは?

 と思ったのはやはりヴェール越しにも伝わっていたようで。


「大丈夫。私だって本当に忙しいときは忙しいから。さぁ、行こうか」


 不安はあるものの正体を知るグラシア王子が案内してくれるのは、ほんのちょっとだけ心強い。

 もしかして気を利かせてくれたんだろうか、なんて。


 城と塔と、植物園以外に足を運ぶのは初めてだ。

 少しだけ楽しみが不安より勝ってきた。思っている以上に、わたしは緊張していたのかもしれない。


 まるでテーマパークのような敷地内。

 グラシア王子の後ろをついていく。

 ペールグリーンのマントがひらひらと揺れて、それだけでも優雅に見えるからふしぎだ。


「あれが騎士団の本拠地だよ」


 見えてきたのは平屋の建物だった。

 デセオの制服と同じ、ダークグレー。

 窓の縁も輝いているものの同じ色で、騎士団はやっぱりダークグレーをテーマカラーにしているようだ。

 紋章のような飾りが扉の上についている。


「さて、デセオは中庭かな?」


 慣れた様子でグラシア王子はすたすたと歩いて行き、扉から入らずに建物の後ろに回り込んだ。


「そんな腑抜けた面構えで聖女を守れると思っているのか!? 次!!」

「うおおおおお!」


 分かりやすい大声が奥から轟いてくる。


「ほら、いたいた」

「うわぁ……」


 イメージとしては、剣道? フェンシング?

 本物ではないだろうけれど、剣で激しく打ち合っている。

 その中央にデセオがいた。


 薙いで、交わして、打ち付ける。

 受け止めて、跳ね返して、打ち込む。


 つ、強い……。

 人間じゃないみたいな強さだ。


 流石は騎士団長さま。

 次々と団員が芝生に倒れ込む。

 下手なアクション映画よりも迫力がある。

 最終的に立っているのは、デセオのみ。


 ぱちぱちぱち。


 思わず拍手をすると、わたしに気づいたデセオが近づいてきた。

 あんなに激しく動いていたのに、汗をかいていなければ息も乱れていない。


 言葉よりも先に、デセオはわたしに向かって跪いた。


「来たか」

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