全く怖がらない優斗くんと絶対に怖がらせたい霊子ちゃん
どうも柏木ユウマです。多分初めましてですね。
この作品は要望があれば連載しようと思ってます。(無くてもするかも)
面白いと少しでも思えてもらえたら感想かレビューかで言ってもらえると助かります。
それでは、本編をどうぞ。
「う、うわぁぁぁあ。く、く、来るなぁああああああああ!ひぃいい」
恐れ慄く男。
自分が裸なことを気にする余裕もなく。
床に尻餅をついて後ずさる。
しかし、ここは浴槽逃げ場なんてない。
情けない悲鳴を上げて恐怖する男。
あぁ、楽しい。
少しづつ近づいて最後にわぁってするだけで皆んな凄い驚いてストレス発散にもなる。
私は霊子。幽霊だ。
生前の名前は覚えてない、だから霊子と名乗ろうと思ってる。
まぁ、今まで聞かれたことないんだけど。
1年程前に気がつくと霊になっていただけの普通の女子高、いや去年高3だからもう…。
と、取り敢えず女子大生ってことで、生きてたら大学行ってただろうし。
家に特別な事情がなければだけど。
霊になった私は特にやることもやれることも無くなって。
人を脅かすようになった。
お化け屋敷は苦手だったけど案外怖がらす側は面白い。
昨日の男も面白かった。
男なんて皆んなクズだ。イキってばかり、ああやって情けない姿を見ると残念なような軽蔑するような気持ちが湧いてくる。
さぁ、今日はどこにしようか。
あぁ、あそこ何て良いだろ。
一人暮らしの男子高校生が住んでたはずだ。
◇◆
「ふ〜、ふんふふふふん、ふふふ〜♪」
あぁ、今日も疲れた。
学校って面倒くさいな、だがしょうがない。
1人暮らしとかそれなりに自由にさせて貰ってるし、学校ぐらい頑張ろう。
ん?今音がしたような。
上の階の人か?
頭を洗い終えシャワーを手にとろうと手を伸ばした。
◆◇
今日狙う、男子高校生のところに来てみると丁度シャンプーをしているところで目を閉じていた。あ、ついでに言うと浴槽を狙う理由は逃げ道がないから、別に男の裸が見たい訳じゃない。
少し、音を立ててみる。一瞬ピクッと反応する男。
だが直ぐにまた頭をシャンプーで洗い始める。
少しして男がシャワーに手を伸ばした。
(そうだ!触れてみよ)
実際に触ることは今は出来ないがヒヤッとした感触が伝わるはずだ。
触れてみると、手も一瞬反応する。
シャワーをとって頭についてるシャンプーを流す。
さぁ、目を開けるぞ!
「へ?」
呆けた顔で固まる男。
驚いてる驚いてる。
一歩、前に進む。
「え?ちょ、ま、ちょっ」
戸惑う男。きっと今に情けない声で叫びだす筈だ。
さらに一歩近づく。後ずさる男。さらに一歩近づく。
そして顔を上げ…
「み、見るなぁぁああああ!」
そう、そう来るなね。え?見るな?
何か怖がってるって感じじゃない?
その男子高校生は近くにあった洗面器を手に取りアソコを隠していた。
「何いきなり入ってきてるの!?俺裸何だけど」
「アキラ100%かよ」
思わず本音が出てしまった。
「不本意だよ」
不機嫌さを前面に出しながら言う、男。
しまった、お化けとしての怖い感じが。いや最初からコイツは怖がってないけど。
「あ〜、ちょっと待って服着るわ」
そう言って脱衣所に向かう男。
それから何故か私はリビングに正座で待たされていた。
(何で?私幽霊。恐れられる存在だよね、何で正座させられてるの?)
少しするとパジャマに着替えてきた男子高校生略してDKが来た。
「人に正座させといてパジャマで出てくんなよ」
「いや、お前幽霊でしょ」
あ、そうだった。
「取り敢えず、お前誰?」
踏ん反り返って聞いてくるDK。
ムカつくな。幽霊怖くないのかよ。
「見ての通り幽霊の霊子。漢字は幽霊の霊と子供の子。あとアンタより年上だから敬語使え」
考えて置いた名前と年上だということを伝えて置いた。
「ファーストコンタクトが風呂場じゃなければ気兼ねなく敬語で話せるんですけどね」
でも、敬語で喋るんだ。高校生って今そんなに上下関係厳しいの?
「霊子、偽名か。俺は夢京 優斗です。男子高校生、以上」
速攻で偽名なことバレた。
簡潔に自分の名前と男子高校生ということだけだけドンキーコング改め優斗は言った。
(あ、ドンキーコングじゃなくて男子高校生のりゃくで使ってたんだ)
「何か用ですか?」
う〜ん、そう言われると困る。
実質アレが用だったし目的は達成出来なかったがやることはやれたと言える。
「別に…。ないかな」
「まぁ、貴方が生前どれぐらい男に飢えてたか何て知らないですけど。いくら幽霊だからと言って何でもして良い訳じゃ無いですからね?」
別に男に飢えてないし!それに高校生何て男とも思ってない!
私だってそれなりに弁えて幽霊生活してるし!
基本女子には優しいんだからね。
「分かってるって」
「怪しい…。良いですか?人にはプライベートってものがあるんです。霊になってどれくらい記憶があるのか知りませんけどモラルぐらい知ってて下さい」
何で、私正座状態で高校生に説教されてるんだろう。
「良いですか?」
「…はい」
反抗気味に露骨に不機嫌なのが分かる返事をする。
私幽霊だぞもっと怖がれよ。
「じゃあ二度と風呂場に出てこないでくださいね。それじゃ帰って下さい」
そう言って蚊でも払うかのように手を振る夢京。
ホントに幽霊のこと舐めてるな。
だが、しょうがない今は策が思い浮かばないからまた出直そう。
次は絶対ビビらせる。
ザー、ザー。
「あれ?砂嵐?嫌、今の時代に…。このチャンネルちゃんと見れる筈なんだけど」
そしていきなり明かりが消える。
「停電?ブレーカー落ちたか?」
玄関にあるブレーカーに向かおうとしたとき。
プツっとコードが途切れるような音がした後井戸の映像に切り替わる。
これ、知ってるような。
「貞子さん?」
ん?よく見ると井戸の淵に手が見える。
え、嘘だろ?
井戸から這い出てくる髪で顔を隠した女。
だんだん、こっちに近づいてくる。
「い、いや、く、来るな」
そして画面を透けてくる。
「く、くるなぁぁああああああ!」
そこで、俺の記憶は途切れた。
「よし、これなら行けるでしょ」
◆◆◆◆
「……」
よし、この時を待っていた。
あの生意気な男子高校生。
確か、夢京優斗だったかがテレビを観ている。
今からさっきみたいに貞子みたいな登場の仕方をしてビビらせてやる。
じっと、静かにテレビを見つめる夢京。これなら問題ない筈だ。
よし、先ずは砂嵐を起こす!
「砂嵐?今の時代に?」
少し困惑した様子の夢京。しめしめ。
ポルターガイスト的にちょっと疲れるけどこれは簡単。
そして速攻でブレーカーを落とす。
「あ、暗くなった」
この時、テレビは消えないようにする。
そして、戻ってきて井戸の映像を映す。
あとは、私が登場する!
「井戸…」
夢京も既視感を感じているようだ。
貞子見たことあるかは知らないけど知っているでしょ。
井戸から出てゆっくり近づく。そして上半身だけ体を画面の外に!
「…」
「…」
説明しよう。
コイツちゃんとテレビを離れて見てやがる。
一人暮らしの癖に立派にミニテーブルを挟んでソファに座って観てたんだ。
即ち、遠い。
迫力が足りない。
逃げられないって恐怖がこれじゃ足りない!
「あ、この前の幽霊か」
ずっと考え込んでいた夢京がガッテンが行ったと手を叩く。
そして、直ぐに口をえの形に開いて眉を少し寄せ面倒くさそうな顔をした。
露骨過ぎるでしょ!わざと何だろうけど。
「え〜、とまぁ。昔はブラウン管のとか画面小さかったから近かったんでしょうけどね。そのお帰り願います?さっきの続き観たいんで」
ムカつく、言われんでも分かったわ!今。
丁寧だけどお前早く帰れって言ってるだけじゃん。
私幽霊だから追い払えないだろうし居座ったろ。
すーとテレビから移動する。
「ブレーカー落ちてるから上げてきなよ」
「いや、落としたの貴方ですよね」
うぐ、正論。でも、ポルターガイスト的なのは疲れるんだ。
「むり〜」
呆れた目を向けてくる夢京。
「はぁ」
と、溜息を吐いて立ち上がり夢京はブレーカーを元に戻した。
そして、リモコンを操作して観ていたのに戻す。
あ、金曜ロードショーじゃん。
しかも、これ観たかった奴!
丁度、死んだ直後で記憶が消えてたときに上映されてたのだ。
「ねぇ、それ最初から観せてよ。巻き戻して」
「え?」
「え?」
2人の間に沈黙が流れる。
何故かお互いに驚き合う。
「もう、帰ってくれよ…。そこまで普通要求します?」
「見せてくれたら帰る」
良いように使ってやるんだ。
ほら、私は居座るぞ?
折れろ折れろ。
「…。恥ずかしくないのかな」
それだけ、ボヤいて夢京は最初から放送してくれた。
その程度の煽りは通用しないぞ。
夢京がソファの右側に行った。
自然と開く左側。
これは、座れってこと?
「私幽霊だから座れないよ?」
「いや、前に立たたら嫌だから開けただけです」
心なしかソワソワしている気がする夢京。
あ、さては。
「こんな綺麗なお姉さんと2人きりで緊張してるんだね?」
「は?ただ単に他人が俺の家にいるのが落ち着かないだけだし」
急に、言い訳っぽい感じ。
慣れてないのか〜。
ちょっと一瞬可愛く思えた。
ただ、この映画普通に名作でそれからは見入っていた。
「うぅ、感動した」
「お前が号泣してるせいで俺逆に涙出なかったんだけど、てか幽霊も泣くのかよ」
「うん、泣く。てか、敬語」
「あ、」
「ふふ、もう良いよ」
何か、ムカついたとかどうでも良くなってきた。
「あそこの、命を賭して守るシーンカッコよかった」
「分かる、すげぇ。カッコ良かった」
2人で映画の話をして盛り上がる。
最初は、コイツは感情が薄かったり出ずらかったりするタイプかと思った。
でも、意外と表情も豊かだ。何故、怖がらないのか…。
う〜ん、分からない。
ただ一つ分かったのは人と映画を観るのは楽しいということだ。
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