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僕の部屋に置き逃げする人。

作者: 七瀬







僕の名前は、『瀬戸内 義秋』25歳、フリーターだ。

僕が大学に行くために、田舎から都会にある大学に1人

で引っ越してきた。

初めての一人暮らしに、僕は心躍らせていた。

親からの仕送りも、僕から母親にしなくていいと言った。

僕の母親は、僕を女手一つで育ててくれたからだ。

僕の父親は、僕が4歳の時に病気で亡くなった。

それからというもの、母親が必死に僕を育ててくれる。

朝から夜中まで、新聞配達をして家に帰って来ると?

家の事をしてからパートに出かける、それが終わると?

スーパーで買い物をして僕の夕ご飯を作ってスナックで

働きに行っていた。

帰って来るのは? 夜中の2時頃だ。

少し仮眠を取って、また新聞配達に行く。

それが毎日の事で、睡眠時間も2時間ぐらいしか取って

いなかったに違いないのに、、、。

それでも、ほんのわずかな時間を僕の為に使ってくれていた

のも僕は知っていた。

なかなか? 母親と話す機会がない僕でも、お母さんと話せる

ように、ホワイトボードに思ってる事を書いたり。

何かあると? 僕の話をちゃんと聞いてくれたり優しい母親

だったから。あまり、僕は母親に迷惑かけたくなかったのだ。

僕は、高校に入ると? 母親が行っている新聞配達を始めた。

少しでも、お金をためてお母さんを楽させたかったからだ。

僕は、初めての給料をお母さんにあげようとしたら、、、?

お母さんは、涙ぐみながら僕にこう言ってくれた。



『義秋! そのお金は? 貯金でもしておきなさい! 自分の

為に使って! お母さんは、義秋のその気持ちだけで十分だから。』

『・・・でも、お母さん! 僕は、少しでもお母さんを楽にしてあ

げたいんだ!』

『義秋は、大学に行きたいんでしょ? それなら、そのお金に使い

なさい! お母さんの事はいいから。』

『・・・う、うん。』






僕は、こうして夢の大学に入学する。

お母さんが言ったように、コツコツバイトで稼いだお金を

貯金したおかげで、一人暮らしのお金も自分のお金ですべていけた。

母親に、迷惑をかけずに大学も行けた。

だから、僕は仕送りも断ったんだ。

自分の力で、頑張ると誓ったから!

お母さんに、絶対に迷惑をかけないと決めてね。





・・・だけど?

現実は厳しく、僕は大学を留年する。

授業についていけず、だんだんと大学にも通わなくなった。

バイト先を2つも掛け持ちして、家の家賃は何とかなった。

でも、食費にまで手が回らずお腹を空かす事はしょっちゅう

あったんだ。

何とかやってこれたのは? こっちで仲良くなった友達から

ご飯を良く奢ってもらったからだ。

実家暮らしの友達は、バイトでもらった給料は全部遊びに

使っていたから、僕にご飯を奢ってくれる事が殆どだった。

気のいい友達で、僕も何か彼にあると? 相談ぐらいなら聞く

ようにしていた。

それと? なんと言っても母親から月に一度。

荷物が届くんだ! 段ボール箱、いっぱいに入った食べ物。

お米や味噌、醬油にお菓子も入っていた。

母親の手紙に、僕は何度も泣いた。

結局、僕はお母さんに迷惑をかけているだけなんだと一人で泣いた。

部屋の中に、初めに買った家電製品も最低限のモノ以外は?

リサイクルショップやネットで売った。

僕が、子供の頃から大事にしていた単行本も売った。

食べるために売った。

部屋の中は、ガランとしている。

家には、生活感がほとんどなくなっていた。






 *




・・・そんなある日。

僕の部屋の前に、誰かが袋に入った荷物を置き逃げするようになる。

僕は、キョロキョロして部屋の中に袋に包まれた荷物を入れた。

取りあえず、僕の部屋の前にあったし! 僕宛に誰かが置いて行った

モノだと勝手に思った。

もし違っていれば? 管理人さんに直ぐに言えばいい。

でも、袋に貼り付かれた手紙には、“瀬戸内”と僕の名前が書かれて

いる。やっぱり、僕宛のモノだ。

僕は、袋を開けると? 中に入っていたのはトイレットペーパーだった。

トイレットペーパーは、物凄く嬉しいモノだった。

消耗品費だし、毎日使うモノだし、値段も、高い訳じゃない!

何かあれば! 僕でも払える金額なので素直に使わせてもらった。

その日を境に、いろんなモノが僕の玄関先に置いてあるようになった。

はじめは消耗品費から日常品、小物から電化製品に変わっていった。





・・・誰が一体!?

僕は、誰が何の為に僕の家の前に荷物を置き逃げして行くのか?

突き止めたいと思うようになる!

いつも朝早くに、荷物は置いてあるから。

僕は、ドアについてある覗き穴から監視することにした。

そこに現れた、“犯人は?” 僕のお母さんだった。

僕の為に、夜行バスで朝早くから荷物を置いてまた田舎まで帰って

いたのだ。 僕は、ドアを開けて!



『お母さん!』

『・・・義秋!?』

『何してるの?』

『・・・・・・』

『取りあえず、中に入って。』

『・・・ううん。』





部屋の中で、何故? お母さんが僕の部屋の前に置き逃げして

行っていたのかを、説明してくれた。

どうやら? 僕が母親に迷惑かけないようにしていた事が逆に

心配になったらしい。

いつまでも、母親にとって僕は子供なのだろう。

お母さんには、随分と助かっていた事を話した。

母親は、泣きながら嬉しいと答えてくれた。

母親と僕の絆は、何処に行っても変わらないものなんだと実感した。

大事な母親の為にも、僕は必ず大学を卒業すると心に誓う!




最後までお読みいただきありがとうございます。

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