【翼の本音】
俺の世界は誠だけだった。
ハリウッドスターである両親の影響で子役として活躍していた俺は周りとは浮いている存在だった。
学校に行っても本当の俺ではなく、子役として活躍している俺しか見てくれない。
近づいてくる人は全員敵に思えた。
そんなある日、誠に話しかけれた。
誠も大財閥の息子ということで、ある種浮いている存在だった。
仕事で学校にあまり行けていない俺でも知っている有名人だ。
一方誠は子役である俺の事を知らず、ただ気になったから話しかけたらしい。
初めて俺個人として見てくれた唯一の存在。
俺はそれが無性に嬉しくて仕方なかった。
ある日、両親がアメリカでデビューしないか言われたが俺は誠と離れるのが嫌で断った。
そして芸能界自体も引退する決意をした。
普通の一般人になりたかった。
そんな時に、誠の付き添いでFour Princeのライブに行くことになった。
なんでも鷹司財閥の次男がそのグループにいるらしく、誘われたらしい。
いつも自分がスポットライトを浴びる側だったが、客席から見るステージはすごく印象に残っていた。
ライブが終わり帰ろうとすると誠は突然アイドルになると言い始めた。
誠は財閥を継がなくてはいけない。
俺とは違い、誠には辞めるという選択肢はないのだ。
誠自身もよくわかっている。
だからこそ誠が財閥を継ぐまでの間、アイドルとして輝けるように俺は誠の盾としてアイドルを目指すことにした。
2人とも無事にFour seasonの養成所のClubコースに入所することができた。
そこで俺は玲華に出会った。
最初の印象は騒がしいやつ。
会うたびに話しかけられた。
最初は挨拶程度だったが、玲華はいつの間にか俺と誠の間に入ってきた。
最近では3人でいる方が落ち着くそんな風に思い始めた。
両親の頼みでブライダルのCMに出演することになった。
本来なら花嫁役には今売れ始めてる新人女優No1を起用するはずだったが、俺は出演するかわりに玲華を花嫁役にすることで了承した。
監督的には俺がメインだったらしく、俺の要望はあっさり通った。
この頃から玲華のことが好きだったんだと思う。
役とは言え、誰かの花婿になるのが嫌だった。
キスシーンの時に俺は色々な理屈を並べて合法的にキスした。
そしてその時、俺は玲華の事が好きだということに気づいた。
ラストのシーンが撮り終わり帰る途中、俺のファンだという人に玲華は崖から突き落とされた。
俺は真っ先に玲華が落ちたであろうところに向かった。
後ろからスタッフの止める声が聞こえたが俺は一目散に向かった。
捜索すること1時間、俺は木の中で光り輝くものを見つけ向かった。
するとそこには血だらけのウエディングドレスを着た玲華がいた。
もしかしてと思い、慌てて駆けつけると微かに息をする音が聞こえた。
何度も何度も声をかけすると玲華は目を覚ました。
目を覚ますや否やダイヤモンドの心配をした玲華に思わず怒ってしまったが、そこが玲華らしく逆に安心できた。
奇想天外な行動を起こす玲華に、俺は惚れてしまった。