禁じられた森
短
森の中に放り出された少年は、道なりに真っ直ぐと進んでいく。
僅かに日の差し込んだ森の中は、奥へ行くにつれて徐々に薄暗くなり、視界も悪くなってくる。
しかし整備された道は奥へ奥へと続き、荒れた様子も全く無かった。
(随分奥まで来たような気がするが・・・。)
ひたすら真っ直ぐ続く道を歩いていると、徐々に日が暮れ辺りは暗くなってくる。
(このまま辿り着けないと困るな・・・。)
だが少年はそれでも真っ直ぐ進むだけだと、歩みを進める。
すると完全に日が暮れるのと連動するように、道の両端をうっすらと光を放つ何かが浮かび上がり、道を照らし出した。
(おぉ・・・。)
只道がよく見えるようになっただけではあるが、少年の目には幻想的に映り、改めて一人で居るという実感を思い出させる。
(この森には凶暴な動物は居ないのかな?流石にこれだけ暗いと怖いな。)
孤独を再認識した少年の肌に弱い風が通り過ぎる、何事も無い普通の事なのだがその気持ちが若干揺さぶられる。
(寒い・・・。流石にこのボロボロのパジャマじゃ無茶だったかな。)
あの男の居た場所では寒暖など全く感じず、感覚が麻痺していたうえ、日のある時間帯は暖かかった。だが夜の森は想像を上回る肌寒さで少年の体力を一気に奪い去っていく。
(何だか凄く寒くなってきた。今迄屋敷で暮らしていた時でもこんなに寒い事は一度も無かった。)
少年の暮らしている地方は一年を通して温暖な気候が長く、四季はあっても気温の上下は殆ど無いと言っても過言では無い。
冬には長袖を着るだけで充分寒さを凌げるし、夏でも薄着にしていれば大した暑さでは無い。
しかし森の中というのは木々に含まれた水分が、より周囲の空気を冷やしていく。
(ちょっと走ろう、幸い道はハッキリ見えるように目が慣れてきた。)
しかし走って汗を掻いてしまうとその汗と共に更に体温が奪われる、それも経験として理解している少年は焦って速く走らないように注意しながらジョギングするよりも遅くゆっくり走るという傍から見れば何をやっているのかと思うような動きで、軽くスピードを上げたが、逆に今迄やった事の無い動きをしていたせいで大きな疲労感を覚え、じわりと汗がにじんでくる。
(まずい・・・変な動きをして余計に疲れた・・・。)
駆け足のようなジョギングのような中途半端な動きで、体力を無駄に失ってしまった少年は再び自身の肩を抱いてとぼとぼと歩き出し、何とか止まる事無くゆっくりと進んでいく。
(あれ・・・?)
森に来てからどのぐらい時間が経っただろうか、浅い息をついた少年の目に仄かに光を放つ、大木が見えてきた。
その大きさは尋常では無く、子供の両手で大きさを測ろうとすれば、何百人が必要だろうかと思う程の巨大さを持った木だった。
しかしその大木の根は決して整備された道を侵す事無く広がっており、近付いて周りを見渡してみると、周囲に既に木々は殆ど無く、あるのは巨大な大木の根によって通る事の出来ない空間だった。
(凄い・・・これがユグドラシル!?デカい!)
いつの間に目の前まで来ていたのかと思うぐらい急に気付き、ぼーっと歩いていればあわや衝突してしまっても可笑しくは無いぐらいはs、少年はその大木に気が付かなかった。
少年は何かに導かれるように大木に触れ、大木の温かさと鼓動を感じる。
(凄い・・・暖かい。)
少年は身体ごと大木に身を預け、その場に崩れ落ちた。
ポチッとな