#81 研究員②
今は、彼女がいなくて、彼女の鞄を探ったらノートみたいのが出てきて、それを見たら、僕にもキャラがあって、なんか変なキャラのことが書いてあって、彼女のキャラは素ではなく演じている、というようなことが、書かれていたような気がして、今は今は、今は今は今は、パニックだ。
キャラを引き出すためにやっているけど、よく分からなくなってきた、という言葉が、メモの中にあって、僕のキャラを引き出したいのは分かったけど、そのキャラというのが、キャラクターの略称なのか、キャラメルみたいな甘い部分の略称なのか、キャラバンの略なのか、そこに確信はない。
僕のキャラを引き出す、という行為にハテナがいるのは当然で、今の僕の中にいるミニミニクエスチョンたちは、公園のハトの前で、激しく動いたときみたく、パタパタパタパタ、パタパタパタパタと、羽ばたいて、羽ばたいて、羽ばたいて、羽ばたいている。
ページを、シャーァァァァァ、ではなく、ぺランチぺランチと、やさしく捲ってゆくと、キャラを引き出して、消滅させるためにやってきたけどダメなのか、みたいなことが書いてあって、消滅という言葉がやや引っ掛かったが、自分で作った、ぺランチぺランチの方が違和感があった。
二重人格とか、そっちの話になるみたいかなとか、思ったが、僕は全然そんな感覚なくて、二重人格というものを、あまり理解していなくて、一人の人間の中に、全く異なる二つの人格が、交互に現れるみたいなことであることなんて、僕は全く知らない。
演技には自信があるけど、もしも与えられた役が犯罪者だった場合、その物語の登場人物になりきりすぎて、私生活で犯罪をしてしまうかもしれないから、やらないと思っている僕だが、彼女は、普通にキャラを使い分けて、すべてを演じていた訳だから、スゴいと思った。
私は女優をやっているが、彼のあのキャラはスゴいよ、みたいに書いてあって、素の僕のキャラを褒めてくれたことに、喜ぶよりも先に、彼女が女優をやっていることを、知らなかったという事実に、驚いていて、驚いていて、今ここで、一度白目になったとしたら、二度と戻ってこられないと思うくらいにまで、いってしまった。
彼女がプロの女優だと聞いて驚いたが、あのクオリティーだから、納得して、納得して、納得していて、彼女との思い出の中に、その女優だったという片鱗を、探したけど、見つからなくって、クオリティーとクエスチョン以外の、Qから始まる英単語の方を、探している自分がいた。
好きなキャラもいるけど、普段の彼を愛してる、とメモがあって、好きなキャラもいるけど、普段の彼を愛してる、ということは、つまり、好きなキャラもいるけど、普段の彼を愛してるということで、今の僕はそれほどそれほどそれほど、ということだろう。
外のどっかで、カラスが鳴く度に、ビビっている僕がいて、カラスではなくて、カラスに化けた彼女ということも、無くはないから、窓から外を観たが、普通に黒光っているカラスがいるだけで、ガラス越しのカラスという、ダジャレみたいな行動をしてしまっていた。
刺激を与えて、他の人格を滅ぼして、最初の彼に戻したい、とメモがあったのだが、滅ぼして、という言葉に、カラスハートではなく、ガラスハートの僕は、ダメージをかなり受けていて、そこに、撲殺してと書かれていたら、どうなっていたか、分からない。
彼女の愛は、とてつもないんだなと、感じたけど、とてつもない、とは何なのか、よく知らなくて、たぶんだけど、アルミと鉄もない、の略かなんかだろうと思っていて、アルミと鉄がない、からヤバイという意味に行けないけど、合っているだろう。
ノートのメモを読んでいるときに、帰ってこられたら終わりだと思っていて、彼女は、僕がスマホをなめ回すように見ていても、怒らなかった人だけど、今は違うかもしれないから、怯えているわけで、彼女は勢いよくドアを開ける女だから、気を付けたい。
勝手に何かを探られるのが、嫌いと言っていたから、あの日のスマホなめ回し見、の件から、そうなったのだろうと、思ったりなんか、してしまっているが、これは探っていいものかもしれない、これは探っていいものかもしれない、と思ってきた。
これがわざと読ませたくて、やや目立つようにしたとしたら、恐ろしい女確定で、恐ろしい女といっても、いろいろな方向性の恐ろしい女がいるから、そこは、おのおの解釈ということで、おのおの解釈ということで、そんな感じにしておこうと思う。
いったん床に寝転んで、リセットしようとしたけど、脳内にたまった、かなりズッシリしている情報たちを、忘れて初期化するなんて、出来るはずがなく、寝転んで目の前に現れた、天井の模様に見つけた、彼女の顔のことをずっと、考えていた。




