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#80 研究員

目覚めると、彼女はベッドで僕の横に寝ていて、何も喋らなくて、最新のマイク型のカラオケ機材を持ってきてカラオケを始めて、前日と同じだなと思ってトイレに逃げると音楽と共に、歌声が聞こえてきて、歌えるのかと思い、戻ってゆくと、事前録音を流しているだけだった、その次の日が今である。


彼女は、僕が目覚めるといなくて、それはつまり、彼女の姿がないということで、それはつまり、彼女の何もかもをまだ感じられていないということで、大まかに少し変な感じでいうと、ベッドにひとり僕ひとり、というそんな感じで、今を過ごさせてもらっている。


彼女のお気に入りの靴が、玄関の土足スペースの、右手前隅にないから、たぶんどこかに出掛けているのだと思っていて、どこに出掛けたかを推理するとしたなら、特に手がかりはないから、靴という漢字の、革が化けると書く、その単純さに浸るところから、始めようと思う。


鞄などは、持っていってないみたいで、リビングにある、縦ゴボウに横からいくつも、やや短いゴボウをぶっ指したみたいな何かを引っかけるやつに、帽子と一緒に鞄がかけられているから、まだまだ家にいる可能性はあって、屋根裏や床下系の、かくれんぼではギリ使わないくらいの場所に、いる気がする。


こんなことは、たぶん初めてだと思っていて、ひとりで出掛けるということは、つまり、ひとりで出掛けるということで、僕は建物内での唯一の人間になるわけで、僕の建物内空気所有率および面積所有率は、半端ないことになるわけで、とにかくヤバイ。


彼女が無口のときもあったけど、彼女が関わりをふわふわさせてきたこともあったけど、そのときはこんなに寂しくなくて、こんなに寂しいと思ったことは、現世では初めてかもしれなくて、彼女のあんなまつ毛や、こんなまゆ毛が脳内に、ボンと浮かんだ。


彼女が持っていかなかった鞄からは、いろんなものが覗いていて、覗いているといっても、目撃者系でも、野次馬系でもなく、ギリギリ土の中から穂先が覗いているかなくらいの、タケノコ系の覗き方くらいだったが、気になって気になって気になって、気になっている。


その中に、日記のような、スケジュール帳のようなものがあって、気になって気になって気になって、気になって手を伸ばしたが、鞄という漢字の、革で包むと書く、その単純さが、靴の漢字の感じと似ていて、それが気になって気になって、そればかり、すこしばかり、考えてしまった。


彼女の日記のようなノートを見てみると、それは日記で、日記のなかには、あんなことや、こんなことや、そんなことや、もういろんなことが、わんさかわんさか、わんさかわんさか、たっぷりたっぷり、書いてあって、僕に関することで、全てのノートの白地を埋めているのか、くらいの感じだった。


紳士キャラとか、チャラ男キャラとか、色々書いてあって、紳士キャラってなんだ?と何回も何回も思ったけど、僕にもキャラがあって、紳士キャラという、僕にあまり合わないキャラまである、という事実と、真摯に向かい合わなければいけないな、と思った。


僕にもキャラがあったということか、僕にも、僕自身も意識をせずに、垂れ流していた、そんなキャラがあったのかと思ったら、落ち着かなくなって、ノートを一秒間に、3開閉か、4開閉くらいしてしまっていて、でも、5開閉には、流石に届かなかった。


実は試されていたというのか、みたいに思ってしまって、彼女が本当の彼女であるのかさえ、よく分からなくなってきてしまっていたけど、本当によく分からないのは、自分のことで、そういえば、最近の記憶が段々と消えてしまっているような、くっきり残っているような、そんな感じだ。


今までのことを思い出してみた、僕も変だったのかもしれなくて、僕はかなり変だったのかもしれなくて、現実世界と妄想世界のどっちにいるのかも、分からなくなるときが、あったのかもしれなくて、もっともっと、もっともっともっと、想い出を滝登りしてみた。


彼女のことが、よく分からなくなってきてしまっていて、さっきチラッと目に入ってきてしまったのだが、彼女のキャラは全てがキャラで、つまり全ての変人は、脚本家、演出家、女優などなど、全てを綺麗にこなしていた、彼女のドラマ世界でのこと、だったのだ。


一旦ノートを閉じて、呼吸を意識してしたのだが、落ち着きはたぶん一生来なくて、来たとしても、餅つきの季節くらいには、なってしまうだろうと思っていて、ノートの文字をしっかり認識できるレベルで読める日は、この先来るのか?というくらいの、やつだった。


真実は、このノートの、このメモのなかにあるのだろうけど、一番ショックを受けるかもしれない、一番事実だったら嫌なことは、彼女が僕を好きではないことで、彼女が僕を好きでいれば、他にどんな衝撃事実が待っていようと、受け入れられそうだと、今は思っている。

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