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#79 前日コピー

目覚めると、彼女はベッドで僕の横に寝ていて、何も喋らなくて、最新のマイク型のカラオケ機材を持ってきてカラオケを始めて、でもゼスチャーキャラだから踊るだけで、拍手はかなりプロで、間違えて入れたオペラ曲に、驚き声を出していて、床を叩いて悔しがったが、普通に踊り、僕は次にどんなキャラが来てもいいと思った、次の日である。


彼女は、ベッドで僕の横に寝ていて、特に変わった格好は今日もないので、心臓をだらっとさせていたのだが、なんか変な表現が浮かんできてしまって、使ってしまっていて、伝わりにくいと思うが、簡単にいうと、リラックスしているということだ。


今日こそ、普通かもしれない、今日こそ普通に喋り、普通に息をする普通の彼女が、この沸々と沸いてもない、沸いてなくなくもない心に、普通の気持ちを与えてくれるかもしれないし、与えてくれないかもしれない、そう思ったりしている。


挨拶をすると、ニコッとしただけで、首から下は何も動かさず、というか口角より下は何も動かさずいて、ニコニコは嬉しいが、右脳に二個、左脳に二個、計4個の悪い予感の塊ができてきて、その二個二個が、ニコニコを悪いものにしていた。


どこかに行きたいか聞くと、カラオケゼスチャーをしてきて、昨日と同じやないかーい!と突っ込みたくなったが、我慢して、昨日と違う日常にしたくて、脳内言語の『ゼスチャー』という単語を『ズェスチャー』に置き換えて、未来を変えようとした。


もしかして昨日と、同じに進行しているかな、という段階ではなくもう、あの悪夢をもう一度、味わうことになるのか?、悪夢というより、悪天候で視界が確保できない、悪い霧の中に迷い込んだみたいな感じの、悪霧の方ではないかと、思ってしまっている僕がいる。


嫌は嫌だが、『嫌だ嫌だは普通の道に通ずる』みたいな、ことわざ的な文章の連なりがあった気がするから、とにかく普通をテーマに、普通にやっていくのが、普通の考えで、こちらは、彼女のズェスチャーキャラに、普通に付き合っていった。


彼女が部屋に行き、マイク型の最新カラオケ機器を持ってきたとき、前日と同じだと確信したというか、もう朝起きたときには、確信の一歩手前には来ていて、確信から革新に、考えを変えようと、考えるまでには、そんなに時間は掛からなかった、そういうことにしておく。


こちらから運命変えてやるよ、とか思っちゃったりなんか、しちゃったりしていたけど、こちらから運命変えてやるよは、どこかの何かの物語のなかで、主人公が言うようなセリフだから、全然全然全然全然全然、自分に合っていないなと、思った。


どの作品のどの場面に、こちらから運命変えてやるよ、みたいなセリフが出てきたかなと考えたとき、それは、復讐したい主人公が、タイムリープで過去に戻ったときに言うセリフか、とピンときて、背筋がピンとなった。


何をすればいいか分からなくて、このまま普通の僕で行けば、たぶん昨日と変わらない感じになってしまうから、何か奇行を執り行わなくてはいけないが、出来なくて、解決案を誰かに聞こうと思っても聞けないし、いい気候のなか、何も出来なかった。


とりあえずトイレに引きこもることにして、トイレは部屋のなかで鍵がかかる唯一の場所ではないかと、思っているから、とりあえず移動したが、罪悪感は否めなくて、ポッキンアイス共有強要罪で、禁酒中の友達がいるけど、誰かと一緒にいることは、難しいと改めて感じた。


引きこもるではなくて、立てこもるが正解かと、頭のなかで考えたが、引くとか立てるとか、もうよく分からなくて、僕は自分の中の小さな自分に押しこもってみようとしたのだけれど、自分でも、今何を思っているのか、分からなくなっていた。


音楽が流れてきたから、たぶん彼女がカラオケで踊るのだろうと思っていて、トイレにいるから何も分からないが、きっと小学生の時によくした、サボりみたいなことは、今の彼女はしないから、昨日見た踊りを、全力で放っていることだろう。


なぜか彼女の歌声が聞こえてきて、なぜだなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ、と言い続けて、タレントさんが3文字を何度もリピートして励ますことを、テレビでいつもやっているが、そのくらい長く長くなぜだと思って、思って思って思って思って思いまくった。


慌ててトイレを飛び出すと、全力で彼女の元に走っていったが、前にスマホで録音した、音源みたいなヤツを、再生して流しているだけで、変なトリックするよねー、変なトリックするよねー、みたいな、今ブレイク中のテレビタレントみたいな言い方を、言ってしまった。

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