#78 ゼスチャー②
目覚めると、彼女はベッドで僕の横に寝ていて、普通に戻った可能性があると思ったけど、何も喋らなくて、どこに行きたいか聞くと、彼女は突然ゼスチャーゲームのようなものを始めて、僕がカラオケ?と答えると、彼女は首を縦に振って、最新のマイク型のカラオケ機材を持ってきた後が今である。
カラオケを今からやるのだが、ゼスチャー彼女が、声を発することに絶対なるので、歌えるのか?歌えるのか?歌えるのか?と三回か四回思ったりして、普通に歌ったのなら、ゼッタイスゴいチャーミングになるよと、思ったりなんかもした。
声を出す気がないのに、なぜカラオケを選んだのか、それが疑問で、疑問といえば、ケガよりも伝統を重視する日本特有の文化とか、文化とか文化とか文化とか、それが僕のなかでの疑問であるが、それと同じくらいの疑問が、ゼスチャーキャラのカラオケ挑戦にはある。
ずっとピコピコピロピロして、パロパロプロプロして、設定していて、設定が終わり、曲を入れて僕にマイクを渡してきたのだが、一般的なピコピコ音ではなく、変にエコーが入ったその音は、脳内の隙間をこじ開けて、脳のメインスペースで大の字になってきた。
彼女が入れた曲は、知っている曲だけど洋楽で、洋楽は歌ったことないよとか、洋楽は英語が得意な人しか歌えないのに、英語が得意ではない僕に、そんな曲を入れないでおくれよ、とは思ったが、だんだん追い込まれていき、考えれば考えるほど、脳がピコピコした。
英語は挫折してから、縁を切っていて、友達とも両親とも、誰とも縁を切ったことのない僕が、外国人の美女を好きになることと、英語を上手くなることとは、縁を切っていて、それは単純にいくら飲み込もう飲み込もうとしても、飲み込めなかったからだ。
歌えないと言うと、彼女はマイクを受けとり、邦楽に変えてくれようとしていたみたいだが、ピコピコ音がスゴくて、曲を取り消す際には、新たに変なホワンホワンする電子音みたいのが鳴って、もう脳が爆発してしまうかもしれないな、と思うほど、頭で暴れていた。
気持ちよく歌っていると、歌詞を忠実にゼスチャーしてくれていて、彼女はしっかり置きにいくゼスチャーダンスをしていて、これはこれで気持ちいいな、とは思ったが、これから1デシベルも声を発しなかった場合、僕はたぶん発狂をしたくなる一歩手前になることだろう。
歌い終わると、彼女が拍手していて、それがなんとも言えない感じで、かなり大きな音で、今日あなたが身体から出した音のなかで、これが一番大きな音だと、自信をもって言えるほど、気持ちいい音を鳴らしてくれた。
拍手は、軽く叩いただけで、かなり響くプロの拍手で、拍手習ってた?ねえ拍手習ってた?と聞きたくなるようなレベルで、拍手のプロがこの世に存在するのなら、もう、今すぐにでも活躍できる、そんな完璧な拍手だった。
彼女は、自分で歌う曲というか、自分でゼスチャーする曲を選んでいれて、マイクを持ったのだが、たぶんマイクは飾りで、バトントワリングのバトンのように、振り回したり振り回したり、または指揮者の指揮棒のように、拍を取るのだろう。
僕も知らない、オペラとかそんな感じの曲が流れていて、彼女には歌えそうにない、重厚感のある曲が流れてきて、これは踊ることも、かなりかなりかなり大変じゃないかと思うくらいで、逆に楽しみで楽しみで、楽しみで楽しみで楽しみ、的な感じだ。
彼女は【はっ?】と【えっ?】のちょうど真ん中あたりの【ふぇっ?】みたいな驚きを口に出していて、ああ、これは入れ間違えたのか、とは思ったが、オペラみたいな曲と、似たようなタイトルをした、有名曲を僕は知らないし、この世にそんなものが、存在するのだろうか。
自分で喋らないと決めていたのか、悔しがっていて、たとえ、驚いた一秒に満たない発声でも、許せないみたいで、ずっとずっと悔しがっていて、もしかして、神様と静寂を守るゲームでもしているのかな、と思ったりしてしまった。
床を叩いて悔しがっていたが、どんなパントマイマーより上手い悔しがりで、というか、床を手で叩くのは、パントマイムではなく、ふつうの生理現象というかなんというか、生きていく上での、自然な感情吐き出し現象というか、とにかく上手かった。
英語でも、日本語でもない歌なので、とりあえず踊ってみた、みたいな感じで普通に踊っていて、彼女のこのキャラを、僕は普通に見られるようになっていて、次にかなり強烈なキャラが来たって、平常心継続人間になることができるなと、自信が溢れてきた。




