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#74 ミュージカル③

ご飯を彼女は、簡単に用意してくれて、彼女は、本当のミュージカルにもあるかもしれないなくらいの、いい感じのヤツを食べながら演じていて、やさしいメロディーで、やさしい歌詞で、やさしい表情で、やさしい動作で食べていた彼女だったが、突然、目玉焼きの目玉に箸をぶっ刺してしまって、僕は自発的に♪やめてくれ~と低音で歌った、その後が今である。


食べ終わって片付け終わったのだが、嫌な予感というか、嫌な悪寒というか、とにかく変な感じの、何か嫌なことが起こるのでは?、みたいな感じがして、とにかくとにかくとにかくとにかく、かなりかなりかなりかなり、変な感じだった。


♪このあと公園行こう~と歌ってきて、嫌な予感当たった、当たったよと思っていたが、公園という漢字二文字を頭に思い浮かべたときに、[公]という漢字が、どうも、こちらを憐れんでいるようにみえて、[公]に、大丈夫だよ大丈夫だよと、心のなかで言った。


外出は、あまり求めていなかったけど、仕方がなくて、もしも外に出た場合、外に出たけど外じゃないみたいな、外は外なんだけど、ふたりの世界は透明なボックスに包まれていて、まわりとの温度が全然違う、みたいなものになることも、あるかもしれない。


ふたりでミュージカル風に歩いていたら、変人カップルだと思われるから、もしも頼めるなら、もうひとりくらい、脇役の男性役者をプラスしてほしくて、フラッシュモブは、苦手だと公言してきたが、行きずりの人が突然加わってきた方が、この場合は全然良い。


まだ、想像でしかミュージカル風に外に出ていないけれど、もう大体は想像が出来て、想像内で完結するくらい、完璧に想像できていて、絶対道端で、クルクルまわりながら歌うよな、みたいに思っちゃっているいるいるいる、そんな感じである。


♪外に行かないで家にいようか~、と僕は彼女に歌ってしまって、明るいメロディーではなく暗いメロディーで、柔らかい声ではなく、渋めの地響き系の声でしてしまい、彼女の顔をおそるおそる見てみると、特に変わった様子はなく、普通の顔でいた。


だが、時間が経過し、彼女は落ち込み、恐れていた《ネガティブ自問自答系短調ミュージカルモード》に入ってしまって、外には行かなくても良くなりそうだが、代償として、暗さにヒタヒタに浸ることになってしまうかもしれなくて、ため息を吐かずに、ため切ろうと思った。


彼女は、床に座って、床に座って座って、とにかく床に座って座って座って、自分に何がいけなかったか聞くタイプだろうなと思っていて、彼女と結構一緒にいて、彼女のことをよく知っている僕ではなくても、床に座って、自分に何がいけなかったか聞くタイプだろうと、思うだろう。


体育座りをずっとしていたが、色んな座り方に変えていて、僕も座っているときに、いつも思っているのだが、この世にしっくり来る座り位置など、ひとつも存在してはいなくて、もしあったとしても、出来る人は、座ることに特化した専門家くらいだろう。


床に、ぺちゃんと座る体勢に彼女は変えていて、平仮名の『ひ』みたいに座っていて、なんかこの座り方、好きなんだよなと思ったが、他の平仮名で、あんな美しい曲線と、急激な筆路変更をする平仮名など、無いのではと思うくらい、『ひ』は特殊だ。


こちらは、演者としては休憩なので、ただ見ていたのだが、頭には、『彼女のことをよく知っている』と思った時に間違えて脳内変換してしまった『彼女のことを抑止っている』という言葉が、ぐるぐる、そしてぐるぐるぐるぐる、そしてそして、ぐるぐるぐるぐるぐるぐる、していた。


♪外の世界はキラキラしているんだろうな~、みたいに彼女が歌ってきて、確かに、このミュージカル世界から抜け出せば、幸せに近いものは、見つけられるだろうけど、このミュージカル世界を第三者となって外から見れば、たぶん、キラキラなのはこっちの方だろうと思う。


この状況は、ミュージカル映画でもありそうだが、ミュージカルアニメとかでもありそうなやつで、占いのラッキーフードが、昨日はチキンバーガーで、今日は野菜サンドで、ラッキーフードが5日で4回も〇〇サラダだった時もあって、そのラッキーフードと同じで、このミュージカルも先が読めない。


僕が入っていかないと、ミュージカルはハッピーエンドに向かえない、そう感じていて、ハッピーエンドってなんだ、みたいに考えたが、僕に適したハッピーエンドの言葉なんて見つかるはずがなく、少し恥ずかしいが、ミュージカル世界の人として、馴染む決意をした。


僕は外の世界の妖精のように、『外の世界に羽ばたいてみない?』と言っていて、この状況と、彼女から溢れている空気感と、あまり見たことのないミュージカルの、僕のなかにある最大限の知識を絞り出した結果、この言葉に行き着いて、この言葉を言ったあとの、彼女は笑っていた。

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