#71 ぐうたら②
目を開けると、彼女が横に寝ていて、彼女が横に寝ているなと思ったりして、少し経ってもまだ寝ていて、やっぱりカワイイと思ってしまっていて、まだ寝ている、ということは、まだ今日の彼女のキャラは確定していないんだと、思ったりして、強烈キャラではないのに、心の深くに来てしまった、後が今だ。
ぐうたらしてくれたほうが、やっぱり楽だよなとか、ぐうたらっていいよなとか、ぐうたらって、なんでぐうたらっていうんだろうとか、ぐうぐう寝て、たらたらしているからかな、とか思ったりしたりしたけど、やっぱりぐうたらは、楽だ。
彼女が起き上がって、寝ぼけながら、ただいまと言ってきて、最初は理解に苦しんだが、玄関に帰ってきたり、遠くに行っていた人が、駅についたりして、再会するときの言葉が、ただいまだから、まあまあ理解できなくはないな、と思い始めていた。
確かに、眠りの世界からは帰還したが、起きてすぐに帰還認識を出来る人間なんて、いままで見てこなかったから、驚きの向こう側に行く手前の、驚きのチョイこっち側あたりに、これから、ずっとずっとずっとずっと、いるんだろうなと、思っている。
今までの強烈なキャラからの決別みたいな、ただいまかもしれなくて、普通になったよ、私は普通キャラに戻ってきたよ、だから受け入れてほしいよ、強烈キャラはもうないよ、だからただいまだよ、みたいに思って、言ったのかもしれないと思った。
彼女はベッドに腰掛けて、何もついていないテレビを見ていて、まだ強烈キャラからは帰還してなくて、まだぐうたらキャラと確定していない、そう思い始めたが、ただいまと言ったのが、ぐうたらの中にいる真の寝ぼけだとしたら、すべて説明がつく。
ボーッとしたいときに、人は一点を見つめたがるな、と納得していて、テレビ画面を、改めてじっくり見てみると、なんか、画面の左下のホコリが気になって、ぐうたらの中にいるキレイ好きの部分が出てきたのか、と思った。
まだ、ただいましか言っていないけど、怖さは不思議となくて、でも、もしそれが、帰ってきたときの、ただいまではなく、これから一言も喋らない宣言で、多大な間をこれから空けますよ、の略称の《多大間‐ただいま‐》だとしたら、恐怖しかない。
何も発することのないまま、また横になっていった彼女だったのだが、何も言葉を発することがないことよりも、また寝てしまったことよりも、何よりも、ヌルッと縦から横になった、その過程が、かなりヤバイ感じだった。
ベッドから彼女が、まだ一度も離れていないことに気がついて、彼女の身体にずっとずっと、どこかしらのベッドの部分が当たっていることに気がついて、不自然だよね、不自然だよね、不自然だよねって、思った。
ぐうたらキャラだと、普通に思ってしまったことは不覚だったなと、反省したが、このキャラはなんというキャラなんだと、かなり思って、他のよりもかなり狭い感じの、ピンポイントのヤツだが、もう、ベッドくっつきキャラにしか見えなくなった。
ベッドから離れられないキャラかもしれない、そう思ったが、【ピン】とスマホで入力すると、ピンク色のブッ刺すやつの絵文字が、候補として上がってきて、なんでピンがピンクなんだ?ピンクにはピンという文字が入っているからか、とか色々考えてしまった。
もう、ベッドと彼女は一体化して、ひとつになってしまったのかもしれなくて、ひとつになったことで、【ベッドと彼女】だったこの組み合わせは、今は【ベドカノ】になってしまった、ということになってしまい、そういうことになってしまう。
確かに、朝起きて、ベッドから僕が降りたとき、険しい顔から、優しい顔に変わったし、ベッドに僕が触れているとき、そして触れていないときの、彼女の違いは明らかで、ベッドにも神経が通い始めた、重さも感触も、感じ始めた、そう思うのが、妥当だった。
それだと話は変わってくる、ことになって、怖さも増してくる、ことになって、でもでも、でもでもでもでも、触ったものが人間化というか、人間と一体化されて吸収されちゃうとか、絵本のファンタジーの中だけだと思っていた。
さっき【ただいま】と言った理由が、何となくわかった気がして、本当に何となく、わかった気がして、それは、ベッドに向けての、ただいまだった可能性もあるという意見にたどり着いて、とにかくここから抜け出したいと、思った。




