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#06 ドS②

今は、彼女の特殊な胸ぐら掴みで目覚めた後、彼女の姉のノートを見る限り、このようなキャラにピッタリな項目は無かった気がするけど、ドSキャラであることは確かで、同じキャラの登場とはいっても、日々キャラも成長を続けているのだよなと、言い聞かせなくてはならない、と思ったという感じの状況だ。


ドSでかなりのドSで、ドSはドSでもかなり特殊なドSで、もしハンドエステを彼女にされることになっても、ハンドエステという言葉にはドエスが入ってはいるが、それほど強くはしてこないタイプだと思っている。


食べた食器を全て洗わせてきたり、「あなたの髪の毛は、流れが複雑に入り組んでいるよね?みたいなことを美容師が言ってきた」というエピソードを無理矢理聞かせてきたりと、彼女は肉体的苦痛をあまり与えてこなくて、たまに肉体的な苦しさも与えてくるが、その方法はほぼ息の出来ないディープキスだった。


ニンニクが入っていない商品のパッケージに、ニンニク薫ると書くのは駄目だが、ニンニクが入っていない商品のパッケージに、ニンニク風と書くのはいいみたいで、今の彼女のキャラ名をドSからツンデレというキャラ名に変更することを視野に入れていたが、ドS風がいいかもしれない。


外出することになって一番に考えたことは、ヘッドバンギングなんて楽しいこと以外に何のメリットもなくて、ネットバンキングよりも需要がないのに何であんなに支持されているのだろうということではなく、彼女の外出時の持ち物や、外出の行き先で運命は全て決まるということだ。


シンプルにカラオケにしようと、彼女がすぐ行き先を決めてくれたのはいいが、行き先決定から家を出るまでに与えられた時間の猶予は1分しかなくて、『スーパーに行って何気なく見て回っていたら、新商品のやさしいミルクティーが気になってカゴに入れて、新商品の豆乳が入ったソイミルクティーが気になってカゴに入れて、次に新商品のミルクティー味のソフトクリームが気になってしまったが、トリプルミルクティーになってしまうので、渋々諦めた』という感じのあの日のように、色々と諦めるしかなかった。


外傷も何もなくて、精神的苦痛を含めなければ、普通と言ってもいいくらいの普通の歩きが出来ていて、カラオケボックスに向かって歩くという行為を、何も起こらずにやって来ていたが、外に出て落ち着いたとき、大好物の紅茶を要求されて、水筒は持っていないので自販機を必死で探して紅茶を買って渡した。


靴下のホコリやゴミの付着力からしたら、僕の知識の付着力なんて大したことはないけれど、今彼女に渡した紅茶の缶はスチール缶で、とてもとても硬いということや、今から行くカラオケボックスにあるマイクは、何かの金属が使われていてとてもとても硬いということは分かっていて、キスでしか痛めつけてこないことは分かっているが、スチール缶やマイクなどの硬いものを彼女が持つと、かなりドキッとする。


カラオケボックスまでの道のりを、カラオケボックスを一ミリしか考えずに、100円ショップで買ったおもちゃのブロックで作るライオンが輪ゴム掛け要員になってしまった事実も受け入れずに、手に彼女から与えられた、握った時の力の強さだけを受け入れて歩いた。


一分後には骨が折れてしまうほどだが、全て愛がしたことかと、前向きに考えたら、なんだか乗り越えられそうな気がしてきて、僕は【て】という平仮名の上に乗って、綺麗なバランスを保つ自信があるが、それと同じくらい乗りきれそうな自信というものが出てきた。


吸引力の強いキスよりは苦痛は少ないが、取り敢えずは手を守りたいという気持ちが、これでもか、これでもかと、たくさん溢れ始めていて、なぜか、その気持ちを上書きするように、吸引力の強い掃除機で唇を吸われるイメージをしてしまっていた。


手の骨や気持ちが折れる一歩手前まで来て、ドSの恐ろしさを改めて感じ、靴ひもがほどけそうというギリギリの理由で手を離してなんとか守ったが、まるで僕の方が毎日キャラが変わる人になっているかのような目で、彼女はこちらを見ていた。


カラオケボックスに着いて、ドSとかツンデレの情報をこのデートが終わったら、ノートに追加する必要があるということを頭の片隅にメモしておいて、もしも僕がこのキャラの彼女にもう一度恋をしたなら、たぶん脳内で[トゥクトゥン]って鳴るんだろうな、みたいな明るめのことを考えることにした。


密室で、鈍器的なもの満載のカラオケのボックスにきたが、密室という空間がドSといるときの一番危険な場所であり、鈍器的なものが、一番危険なものであるという僕の研究結果があって、ドSキャラのなかの本来の彼女の愛を確める機会だとプラスに考えて、進めた。


僕がもし雑貨屋の商品の配置を頼まれる立場にあったら、全ての商品の関連性を見つけ出して、その関連性をグラデーションみたいな感じで並べて、自然に横へ横へと導かれて、最終的にはお客様が全ての棚を見てしまうような、そんな並べ方をしたいと思っていて、僕は優しさを求めているんだと再確認し、攻撃的な曲を選ぶと思いきや、バラードを選んだ彼女をとても愛らしく思った。


安心をくぐってくぐって、安心の奥へ奥へと突き進んでいって、もう、安心のその先のその先に行く勢いだったが、安心していた僕を切り裂くように、彼女のシャウト気味の声が鼓膜を突き刺し、暴れ出して、安心は簡単に消滅してしまった。

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