#67 リピハラ
小声が聞こえなくなり、急に無口になって、小声キャラは終わったのかと思っていたので思い返したら、トイレに行って彼女と離れたことがあって、またベンチで寝て、今度は全くしゃべらない無口キャラになったか、みたいな感じになって、無口のまま、手を繋いで歩いたが、結局、口マフラーで聞こえなかっただけだった、次の日が今である。
ベッドにいるけど、目が開けられないでいて、それは、まぶたが接着剤で付けられているとか、セロハンのテープをまぶたの上から貼られているとか、ではなく、普通に、次のキャラが変なキャラだったらどうしよう、次のキャラが変なキャラだったらどうしよう、みたいにおもっただけだ。
音はなくて、彼女の小声もない、ここに、いるのかいないのかも、彼女が外に行ってしまっているのかも、彼女が彼女のまま、ここに存在できているのかも、何もかも何もかも分からず、【何もかも】が、どこからどこまでを表す言葉なのかも、よく分かっていない。
もう、性格だけでも普通になってほしいと思っていて、正確と、正格と、精確の区別のしかたは分からないし、使い分けとかは出来ないかも知れない僕だけど、製革は、なめし革を作るという意味、ということだけは知っていて、まあ、とにかく、まあ、とにかく、そういうことだ。
外見だけ突飛なキャラのヤツがいい、みたいに今は、思い始めてしまっていて、やっぱりジワジワと追い詰めてくるのは、言葉が変な方向から来た時や、変な行動から痛みを伴うものに、移行してしまったときなどなどなどなどなどなど、だと思っているから。
目を開けると、そこには彼女がいて、外見は普通でそこにいて、ピンクのTシャツに、黒のロングスカートで彼女がそこにいて、普通の基準は、ひとそれぞれで、ワイシャツパンツスタイルがフツーだよ!、と言う人も多々、多々々々々々々、いるかもしれないが、そこは、ご了承ください、と言いたい。
しゃべり方も普通で、急に奇声をあげたり、小声でしゃべったり、しゃべるペースが、遅くなったり早くなったりもせずに、イントネーションも普通で、やっと昔の彼女に戻ってくれたかと、思っていたが、まだ油断はできないと、慎重になっていた。
少し安心の渦のなかに、カラダを入れかけたその時、今言っていた、やや長めの文章を一言一句変えることなく、また言っていて、それが言い終わると、またもう一回、同じ言葉を繰り返していて、同じ言葉を、三回以上リピートするキャラになってしまったんだ、なってしまったんだ、なってしまったんだ、と思った。
リピートハラスメントだ!、リピートハラスメントだ!、リピートハラスメントだ!、みたいに思ったのだが、彼女のリピートハラスメントのせいで、脳内は勝手に、言葉リピートの世界になっていて、リピートハラスメントってヤバイ、リピートハラスメントってヤバイ、リピートハラスメントってヤバイって思った。
しつこいのが、苦手だから、これからどうなるか分からなくて、誰かに【無理!】と言われるのは、まあよくて、誰かに【無理!無理!】と言われるのも、まあまあよくて、誰かに【無理!無理!無理!】と言われるのもいいけど、【無理!無理!無理!無理!】と四回続くともうダメだ。
3回でも、短いスパンのものなら、なんとか大丈夫かもしれないと、思い始めていて、スパンスパンと歯切れよく、端的に言ってくれれば、まあ、普通にこぶしを強く握りしめて、爪がほどよく手のひらに、突き刺さるくらいで抑えられるから、いいなと思っている。
公園に散歩しにいこう、公園に散歩しにいこう、公園に散歩しにいこうと言ってきた彼女は、僕に、子供がよく言うような、盛り上がりを含んだ繰り返し言葉も言ってきていて、繰り返し言葉でも、スポーツの応援で、自国を応援する場面で言う掛け声みたいなものなどは、気にならないみたいだ。
これ以上、長い文章はやめてくれと思ったけど、慣れることも、あるっちゃあるし、ないっちゃないけど、あるよりのなしに限りなく近い、あるよりのある、くらいだから、慣れることもあるんだな、みたいに思ったり思ったり、してしまって、してしまっている。
お弁当作ったよ、お弁当作ったよ、お弁当作ったよ、と3回言ってきて、ややうれしくなってしまって、同じ言葉3回繰り返し、よりもお弁当を作ってくれた気持ちに意識がいっていて、あまり気にならなかった、そういうことだ。
2回目、3回目を聞き逃せば、昔の彼女そのままで、平凡と言えば失礼になるが、非凡と言っても失礼になる、みたいな感じの彼女に戻ってきていて、良かったなとか、やったーとか、思ったけど、2回目、3回目を聞き逃すことなど、至難の技だ。
2回目、3回目を聞き逃すことなど、昔、家にあった首振りのストーブのボタンを、一回でしっかり押して、一回で正確な位置に止めることくらい難しくて、ため息をつきそうになっていたら、大好きだよ大好きだよ大好きだよと、3回彼女が言ってきてくれて、かなり嬉しくなった。




