#66 小声②
彼女がベンチで寝てからキャラが変わり、小声の早口で走り抜けていて、一秒に30文字くらい言っていて、植物の癒し効果も薄れる破壊力で、独占キャラはまわりにも僅かに恐怖を与えていて、でも、植物の説明が主だったから、ためにはなっていた、その後が今である。
うるさいのは嫌いだから、小声はいいかもしれない、いいかもしれない、ましかもしれない、ましかもしれない、そう思ったが、うるさいを漢字で書くと、五月蝿い、と書くことを思い出してしまい、なんで、五月蝿い、と書くのかということで、頭の中がうるさかった。
まともには、会話出来てないけど、それが、本来の生物の姿、ではないかと、思うようになってしまっていて、言葉のないところで、どうやって相手に気持ちを伝えるのかが、生き物の永遠のテーマだったのではないかと、思って思って、思って思って、思いまくっていた。
彼女が発する小声の向かう先は、全ての生き物なのかな、そういう気がしていて、植物園で、僕と来ている植物園で、僕しかまわりにいない植物園で、彼女は僕の方を見ずに、植物を前にして、ぶつぶつぶつぶつ言っているのだから、そう思うのが、一般的であろう。
大きな木に向かい、口を動かしていて、それは、植物と喋っているようにも見えるが、セリフ練習に見えなくもなくて、女優をしているとか、個人的なお芝居をする予定があるとか、特に聞いていなかったから、たぶん、やはり、そこらへんのなにかと、会話のキャッチボールをしているのかもしれない。
もうテレパシー的なやつかもしれなくて、実際に音で何かに伝えているとしたら、あんな小さい声では、耳のいい、限られたものにしか、伝わらないと思うから、テレパシーだろうと思い始めていて、彼女が、照れ無しーでテレパシーをしているとしたら、流石だ。
もしかすると、イルカ的なやつかもしれなくて、僕が、もしイルカ的な能力を手に入れても、イルカ的な能力いるか?、みたいなことを思うかもしれなくて、たぶん思うと思うが、彼女なら使いこなせる技量は、あると思う。
超音波キャラなのか?、今日は小声キャラではなくて、超音波キャラなのか?超音波キャラなのか?、そう思ったが、そんなことより、また思考ばかりが調子を乗ってしまい、全然、何もしてあげられていない気がして、彼女に、何もしてあげられていないな、と思った。
少し目をはなした隙に、小声が聞こえなくなり、急に無口になったのだが、何でか分からなくて、何でか分からないといえば、無口という漢字の無には口が6個も隠れていて、口という漢字の口1個と合計すると、7個も口があることになってしまうというのに、何が無口だよと思ってしまっている。
無口になったというか、口が動かなくなっただけかもしれなくて、もともと口の動きと合わさった小さい声に怯えていた訳だから、口が動いてさえいなければ、小声を集音する意識もなくなるから、みたいなこともあるかもしれないなと、空を見ながら思った。
小声キャラは、終わったのかと思っているけど、そこには、ちゃんとした理由があって、理由もないのに、小声キャラは終わったのかと思っている、みたいに言う人がいたとしたなら、ここに連れてきてもらいたいくらいの、気持ちだ。
さっき何度目かのトイレで、彼女とまた離れたことがあって、たぶんその時に、彼女が寝てしまったのだと思っていて、それならチュジチュマが合うというかなんというか、とにかくチュジチュマが合うってことだ。
またベンチで寝て、無口キャラになった可能性というか、そんなものが出てきて、さっき、ちゃんとした理由があって、みたいな言葉を頭でグルグルさせていたが、理由の理にも、由にも、それぞれ、口が4個隠れていて、理由という漢字も、全然無口じゃないなと思った。
帰ろうと言うと、首を縦に振った彼女だったが、その首はまっすぐ縦に振ったと言えば振ったが、振ったと言われなければ振っていないような、円を書くような、微妙な首振りで、でもこれは横首振りではないと、90%くらい思っているから、帰ろうということだろう。
無口のまま、手を繋いで歩いたが、トイレから帰ってから、まだ首と手と足と、まぶたくらいしか動かしていないと感じていて、みんな普通の人もそれくらいしか動かさないかと思っていたが、その時、彼女の耳が完全に動いて、耳が動かせる人だったのかと、僕は、耳に論破される形になった。
混乱していたのか、今まで気が付かなかったが、彼女が口にマフラーをしている、口マフラー状態だったことに気が付いて、口がそもそも見えていなかったら、小声なら何も聞こえないんだ、そう気づいたが、口が隠れていることに気付かなかった僕は、バカか。




