#59 たくらみ
睡眠薬で、無理矢理寝かせにかかろうとして失敗し、睡眠薬を混ぜているところを見られて、彼女はネガティブだけ漏らしてきて、殺されると叫ばれたりして、彼女はベッドに飛び込んで塞ぎ込み、寝込みに入った後が今である。
今は寝てから一時間ほどだが、次のキャラが気になって、気になって気になって仕方がなく、木に生っているミカンくらい気になっていて、ミカンのことを考えていたら、ミカンのことばかり考えるようになってしまったのだった。
新たなキャラが普通でありますようにと、深く深くにいる神様に願い、そして頼み、そしてすがりすがり、おててとおててを合わせて擦ったり、擦らなかったりして、彼女が目覚めるのを、ずっと隣で、なかなか目覚めない事故に遭った彼女を病室で待つ、みたいな感じで、ずっとずっと待った。
すると、目を覚ました彼女が普通で、普通に立って、普通に歩き、普通におはようといい、普通にどこかに消え、普通に朝の準備をしていて、普通だ!かなり普通だ!顔が、幸せそうでも、不幸そうでもなく、普通の顔をしている、普通の[普]みたいな普通の顔だ、みたいに思った。
戸惑ったけど、嬉しくて、どれくらい嬉しかったかと言うと、彼女はいつも、イヤリングをしないのに、僕が買ってあげた、バッグクロージャーみたいなカタチと色をしたイヤリングだけは、頻繁につけてくれていることくらいか、それのちょっと上くらいの嬉しさだ。
昔の彼女を思い出して、こんな時代もあったなと、歌の歌詞みたいなものと一緒に、バーっと思い出していて、目がツーなって、胸がファーなって、手足がビーンなって、視線がバボーンなって、とにかくとにかく、なんかスゴいことになっていた。
懐かしさがバーッとよみがえってきたけど、その想い出の過半数を、バッグクロージャーみたいなイヤリングが埋めていて、食パンの袋を留めるCやGみたいなカタチのヤツを、バッグクロージャーと呼ぶのだが、そのプレゼントしたイヤリングから、真のバッグクロージャーの画しか、思い浮かばなくなった。
テレビ面白かったねとか、ティッシュペーパー明日買わないとねとか、あそこの電気つけっぱなしだったよとか、何気ない会話をしたりして、何気なく彼女に背を向け、少し経ってから、ふと振り返ってみると、不気味な笑みの彼女がそこにいた気がして、ややゾッとした。
普通に見えているけど、どこかで悪の顔みたいなのが、漏れている気がしていて、『普』みたいな顔が普通の時だとしたら、さっきは確かに、『皿』みたいな口元になっていて、もう、何か起きるんじゃないか、何か起こるんじゃないか、起きるも起こるも同じ意味だな、みたいな感じに思っていた。
サブリミナル不敵笑みを、また彼女がした気がして、怖くなってきたのだが、サブリミナル不敵笑みは、怖いが、サブリミナル不敵笑みを求める心も少しあって、言いたいだけだろと言われてもいいから、サブリミナル不敵笑みって言いたい。
なんか彼女が、やたらとこちらに背を向けているのは、かなりの不自然で、『組織の総指揮に逆らえば早々の時期に葬式になるよね』みたいな早口言葉のようなものが、街中の誰かの会話のなかで普通に、飛び交っているくらいの不自然さだ。
これは、キャラメモノートにも書いていない、真の真の真の真の、神の神の神の神の、新の新の新の新の新キャラか?、と思ったけど、警戒したり考えを飛ばしすぎると、神経をすり減らしたりするので、なんでもないようなキャラだった場合は、かなりの無駄だ。
もしかしたら、睡眠薬飲ませキャラかもしれないと、ピンと来て、背中を向けるという行為は、睡眠薬をバレずに何かに入れるときと、僕の声を彼女が自分の背中越しに聞きたいときにしかやらない、そう思っているから、間違いないだろう。
前にまわっても、何の怪しいこともなくて、手品がうまいというわけでもなさそうなので、こちらも普通をよそおって、普通にしてきたが、特に何も起こらず時は過ぎ、普通が普通に過ぎて、普通すぎて、普通だなって思った。
ただ背中を、こちらに向けているだけだったみたいで、彼女はただ、生まれつきの背中で語る女だったみたいで、昔も背中で少し語られていた日もあったなと、思っちゃったり、したり、しちゃっていた。
違和感があると言えばあるが、ないと言えばなく、普通で、変だといえば変だが、変ではないといえば、変ではなくて、怪しいといえば怪しいが、怪しくないといえば、怪しくなくて、昔からの彼女じゃないと思えば彼女じゃないが、彼女かもと思えば彼女で、もうもうよくよく分からない。




