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#05 ドS

朝、僕が先に起きるという当たり前のことは出来ず、【『ピッタリ』というカタカナを遠くから見たとき、『ピ』の丸が濁点に見えて、『タ』の中の横線が全然見えず、『ビックリ』だと思ってしまって、間違いだと気が付いたときにはまさにビックリしてしまった】みたいなことくらい特殊な、彼女の胸ぐら掴みで目覚めた。


セルフレジであと1円あれば会計が完了してピッタリ小銭がなくなるという状況になったのに、いくら財布を探しても1円が見つからなくて、あと1円が無いので千円を崩して999円の小銭を持ち帰る羽目になってしまい、財布を入れているポケットの重さによる腰の負担を気にし続けるしかなかったが、それよりも恐れていた、あの悪キャラに彼女はなってしまったのだ。


ギャルは豆腐が美味しいときに、馬耳東風みたいな感じで、マジ豆腐~と言うのだろうかとか、バジリコ豆腐のことを、バジ豆腐~みたいに言うのだろうかとか考えていたが、そんなこともこの先言えなくなってしまうかもしれないってくらい、コンプライアンスなどが厳しくなったこんな世の中で彼女は、死ねとか殺すとか言ってきて、キャラだと言い聞かせ自分をゆっくりと落ち着かせた。


いつもは起きている時間ではないので、起きないでいると、また彼女が僕の方にやって来て、手にはフライパンと包丁を持っていて、フライパンを包丁でパンパン叩く音がたぶん苦手だろうと思っている僕には、恐怖でしかなかった。


包丁を持った手を普通に動かして、彼女は、あたかも包丁の刃先を自分の手の爪の先に見立てているようにしていて、無理矢理食卓に拉致されたのだが、よく見るとそれは金属風に加工された子供用の包丁だった。


今のこんな彼女のキャラクターからして、食べられないものを食卓に並べたり、バットを振り回したり、視覚で恐怖を与える系のものをしてくると想像していたが、それはなく、食卓には分厚い卵焼きが並んでいるだけだった。


あの分厚さは、中に凶器などの良からぬものが隠れているに違いないと思ったが、彼女の顔を見ると、何か企んでいる顔は一切してなくて、高級なレストランでお客さんの感想を聞きに、席まで来たシェフの顔みたいな優しい顔をしていた。


パンツという単語は、上がるように言うと上のパンツになり、下がるように言うと下のパンツになるという【変な単語】であるが、食卓の片隅に置いてあるパックに入った【変な団子】が気になって、集中力を欠いていると、突然、口にまるごと卵焼きを彼女に突っ込まれて、ワサビが口全体に広がった。


卵焼きには、凶器ではなく凶器に近いワサビが入っていたという、ドS特有の思考回路を考慮しても計り知れないほどの考えに、『承る』という二文字ではなく、どちらかというと『慮る』という二文字に近いものが生まれる気配がした。


不思議ちゃんというものが、常に今までの彼女のどのキャラにも含まれている気がしていて、【『中』という漢字にも両端の縦線が下に少し突き出しているものがあり、スクロールの関係上、下が上手い具合に隠れていて、『由』という漢字に見えてしまった】ことがあったが、この偶然が重なった不思議を越える不思議を彼女は持っていた。


ワサビの辛さを抑えてくれるから飲んでよ、みたいなことを言ってコーラを彼女は渡してくれたが、これを飲むことでドSロードの上をしっかりと歩かされているような感覚が溢れてきて、道というより、ドSレール上にいると言った方が正確なのかもしれない。


テレビでよく生活情報を紹介する番組をやっているけど、そのためになる情報みたいなものを番組は4択の選択問題なんかにしていて、生活情報を4択の選択問題なんかにしてしまったら、不正解の方の選択肢を間違えて覚えてしまう僕のような人もいるのだからやめてほしいな、と深く深く考えてしまい、それを飲んで酸っぱくて炭酸黒酢だなと思ったときにはもう吹いていた。


今の彼女の優しさを信じてはいけないけど、拒否したらドS炸裂になるからもう拒否など出来なくて、『S』という文字はひっくり返しても『S』のままになるように、ドSをひっくり返しても、どうせ変わらないと思いながら、吐いたもの以外の全てのそれを飲み干した。


日本人がカッコイイネーミングにするために、日本語を英語にするみたいに、もしも英語圏の人々がカッコよくさせたいときには、どうするのかが知りたい、ということが一番の僕の関心事だったけど、今は変わって、ゴメンねと言って、たった今彼女が唇を近づけてきたことの理由が一番の関心事だ。


彼女の姉のノートを見る限り、このようなキャラにピッタリなのは無かった気がするけど、ドSキャラであることは確かで、同じキャラの登場とはいっても、日々キャラも成長を続けているのだよ、言い聞かせなくてはならないと思った。


広い部屋なのに、ピンポイントにロフトという上段だけに冗談で住んだら、上段に冗談で住んだというダジャレ称号が付くからまあいいけど、唇が触れる直前に、彼女は息を吐き、僕の唇にくっ付けると、思いきり吸ってきて苦しくて死ぬかと思った今は、何の称号もなくて、疲れがドッと出ただけだった。

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