#52 エセ関西人
旅館の風呂に入ろうと言うと同時に、服を全部脱いでいたり、飛び込むかもしれないという不安が的中し、彼女はやはり上半身から飛び込んで底辺りを泳いでいたり、そんな日も終わって、次の日になったのが、今のことである。
さすがに、思ったこと全行動キャラは続かないだろう、今日まであの、思ったこと全行動キャラが続いたらたいしたもんだよ、もう続かないでくれ、もう続かないで、たのむたのむたのむたのむ、そう思いながら、一日をスタートする覚悟を決めた。
おそるおそる目を開けて、周りを見たけれど、特に変わったことはなく、一目で変なキャラだと分かることはなかったが、変なキャラはうちに秘めていて、段々と解放していくものだと、そう気が付いて、思ったこと全行動キャラはまだあるかもしれないと感じた。
そこには、たこ焼きがあって、たこ焼きがグツグツというか、ジュージューというか、とにかく音を立てていて、普通だな、普通だな、たこ焼きがある風景は普通だなと、安心していると、彼女らしき人が近づいて来て、おそるおそるおそる、僕は彼女らしき人の方に目をやった。
すると、彼女らしき人の前にはサイドテーブルがあって、そこにはたこ焼きが100個くらいあって、普通じゃないなと感じて、手がブルブルして、手がプルプルプルプルして、パーティーかなんかであってくれ、タコパで、3から4人の招待客を呼んでいてくれ、と願っていた。
ストックしていたのか、何なのか、彼女は裏から焼き溜めしていたであろう、たこ焼きをまた持ってきていて、そんな彼女のトップスはヒョウ柄で、たこ焼きとヒョウ柄、たこ焼きとヒョウ柄、たこ焼きとヒョウ柄、と頭のなかで唱えたとき、答えが出た。
マシンガンのように、立て続けにたこ焼きの魅力について語り始めた彼女だったが、絶対に大阪キャラだろうな、これは大阪キャラ確定でいいのでは、みたいに感じていたが、たこ焼きとヒョウ柄の二つだけで決めつけてしまうほど、僕は適当ではない。
食べよう、と彼女が標準語を続けながら言ってきて、笑いながら強い力で叩いてきて、たこ焼きとヒョウ柄に強い力で叩くという、とてつもなく強力な要素が入ってきたので、もう、大阪キャラで確定してもいいのかもしれない、それでいいのかもしれないと、思った。
それまで大阪弁は言っていなかったが、ずっと言っていなかったが、突然言ってきて、他の言い方をすると、不意に不意に言ってきて、その言葉というのは、ゆうとりますがな、だったのだが、そのあとはその一本で来て、だからゆうとりますがな!、が怖くなりかけた。
たこ焼きを100回くらいフーフーしていて、ショッピングモール内で、どこかの企業がティッシュを配っていたのだが、その場所というのが、ものすごい香りのするバスボム屋さんで、貰おうとしたけど、クラクラして貰いそびれてしまったときくらい、頭がクラクラしたかもしれない。
ボケか、日本随一の猫舌か分からないけど、しつこさからいって、ボケの方がありがたいなと思っていて、でも、さっき、不意に不意に、なんなんだよ!という言葉を、ニャンニャンだお!と言っていたので、猫舌の線も捨てられない。
もう、猫かもしれない、猫が人になったみたいな感じかもしれない、そう思ってしまっていたが、よく見ると、やっぱり彼女で、普通に彼女の姿をした彼女で、今度は、好きやで!を何度も何度も言ってきたのだった。
たこ焼きは、出汁につけて食べるのが最高なんや!と早口で、スラスラとマシンガンのように喋られて、関東の人の関西弁だよな、関東の人の関西弁だよな、とずっとずっとずっとずっと、思ってしまい、やや苦痛の入り口に近づいていた。
彼女に美味しいと伝えようと思い、口を開いたが、本気で間違えてしまって、たこ焼き美味しかったよ、と伝えなければいけないのに、たい焼き美味しかったよ、と言ってしまい、ただのバカだったことがバレるよな、みたいに感じた。
すると彼女が、『そうそう、この丸みを帯びた、たい焼きのフォルムが、食欲をそそるんだよなって、これはたい焼きじゃなくてたこ焼きだよ!』と突っ込んできて、すごいなすごいな、本場のものとは全然違うけど、とにかくすごいな、よく出来るなと思った。
クオリティーはさておき、ノリ突っ込みは素晴らしいもので、どこかの誰かのセリフを借りて言うのなら、『アメイジングだねぃ』で、どこかの偉い人の言葉を借りて言うのならば、『拍手喝采ものだよ』みたいなもので、とにかく素晴らしいものがあった。




