#50 思ったこと全行動⑤
彼女がオリンピック選手並に壁を登っていて、その間も楽しい楽しい楽しいと連発していて、僕は彼女という壁も登れないのに、ボルダリングの壁を登れるハズもないなと思っていて、彼女のキャラにしっかりとした出っ張りがあれば、攻略できるので欲しいと思った、翌日が今である。
不安とか不安とか不安とか不安とかが、心にあって、目覚めるのが少し、ほんの少しだけ怖くて、でもほんの少しだから、怖いに、ほんの少しだけ足を踏み入れただけだから、まあ大丈夫かと、思いながら目覚めると、彼女が僕の顔を覗き込んでいた。
目線離さないキャラかなにかかな?と思っていたが、目線は10秒ほどで外れて、外れたなと思う間もなく、再びじっと見られ、目線やや離さないキャラなのでは?目線離さないキャラではなく、目線やや離さないキャラなのでは?、と考えている自分がいた。
「今、思ったんだけど、温泉に行かない?」そうやって彼女に言われて、温泉をコンビニエンスストア的にとらえてるな、と感じ、そんな軽く温泉に行こうって言えるタイプなのねと、嫌な予感が少ししたが、たぶん、その予感は当たっているか、当たっていないかのどちらかだろう。
もしかしたら、昨日のキャラがまだ続いているかもしれなくて、昨日のキャラは、今までの彼女のキャラのなかで、一位、二位、三位、四位、五位、六位を争うツワモノキャラだったから、もうため息と、朝寝坊しないためのナイスアイデアしかカラダから出てこなくて、本当に嫌だ。
やっぱりかわいい、寝顔もかわいい、ホントかわいい、と彼女が言ってきて、僕のことをかわいいと昨日も言ってきたと思い出して、昨日のキャラと同じ、思ったこと全行動キャラだと確信したが、最後の「ホントかわいい」だけ、【ホント蚊はいい】に聞こえた。
これは、また思ったこと全行動キャラだなと、思ったり、考えたり、感じたり、想像したり、たりたりたりたり、たりたりたりたりしてみたが、このあとの不安が止んだり、消えたり、消滅したり、無くなったり、たりたりたりたりすることはなかった。
今のところ、彼女にかわいいと言われただけで、ドラマならクソドラマだが、彼女は今、キスしたいと思ったのだろう、かなりディープなキスをしてきて、それも、かなりの深さのディープキスで、もうディープキス越えて、ドゥーピキスだった。
かなりの深さのディープキスである、ドゥーピキスは止まらなくて、こちらから離さないと一生続く気がしたから、こちらから離すことにしたけど、なかなか離れないは、みたいな状況が長らく続いて、でも、このキャラにしたら普通のことだろうと感じた。
温泉旅行のために、カバンに必要だと思うものを全部詰めに行ったけど、本当に必要なものがよく分からなくなってきていて、もう、本当に必要なものなどないのかもしれないと、思うようになってしまい、もう、この彼女のキャラと向き合う勇気さえカバンに詰めておけば、何も要らないと、思うようになっていた。
今の彼女は、せっかちな性格も少しあるなと気付き始めていて、せっかちだな、せっかちだな、せっかちだな、せっかち、と思っているうちに、せっかちの、【せ】も【っ】も【か】も【ち】も、なんか中に空間があって、雨宿りできそうだな、と思うようになっていた。
車を僕が運転することになったのだけど、その前のこのキャラのときは、彼女が運転していて、この前とは違うキャラの可能性もあるってことか、みたいに思って思って、思って思って思いまくってしまっていた。
出発したけど、男性の運転がカッコよく見える理由を彼女に垂れ流され、ギャップとか、シルエットがナンチャラカンチャラとか、腕の筋が張り張りでドーンとか、よく分からない理由を話し始めていて、昨日のキャラから何かのネジを一本抜いたのかと思った。
温泉というシチュエーションで、思ったことを全て行動にされたらもうダメだろうと思っていて、普段もべったりはするほうだけど、このキャラになった彼女と、部屋の風呂でベッタリするのでは、明日にファイト!とアスファルトくらい違う。
彼女は、隣で温泉旅館の予約を取り終わって『ホッ』と言っていて、やはり、部屋に温泉があるタイプの温泉らしくて、彼女受け入れ体制にガンと気持ちを傾けさえすれば、かなり楽しめるのだと気づいて、信号待ち中に一瞬白目になり、ギアを入れた。
温泉で、今のキャラの彼女は、絶対に潜ることを抑えきれないだろうと思っていて、横を感じようとすると、釣ったばかりのカツオのように、プルプルしながら跳び跳ねている感じで、助手席を自主的に揺らしながら、温泉に向かっていた。




