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#04 ふしぎちゃん②

彼女が不思議ちゃんキャラとなり、朝起きたときにやっていたポーズはアルマジロではなくてダンゴムシだったことに気付き、納得し、彼女の立ったり座ったりしたり、立ったままぐるぐる回ったり、急に変な喋り方になったりという行動については、ダンゴムシ要素はそれほど感じられないが、不思議ちゃんが作り上げたダンゴムシの世界観にしたらもう納得で、彼女がしているこのキャラクターは、たぶんダンゴムシの妖精的な立ち位置なのだろうなと今は思っているところだ。


僕は、背徳の対義語が、ミルクのマークの青い看板が目印のコンビニではないとしたら、いったい何なのだろうか?と思ったりしていて、スモールパニックを起こしているところだが、彼女のことで世間のスモールパニックを起こさないためには、外に出したら駄目だから、このマンションに中庭があってよかったと思っている。


早速、ダンゴムシを探したいという彼女の依頼に応えるため、中庭に来たが、『中庭には二羽ニワトリとワニがいる』みたいな早口言葉みたいなことはなく、『十人十色の住人がギュウギュウに牛歩してる』みたいな早口言葉みたいなこともなく、この時間は住人が少なかった。


普通なら飛び抜けたことを言うとか、他の人が思い付かないことを言うのが不思議ちゃんだと思っていたが、ベタのなかのベタみたいなキャラのお手本である、語尾にダンゴムシのダンゴから取った『ダンゴー』と付けることを始めたので、一歩後ずさった。


『ダンゴムシがいたダンゴー!』という、本来の女の子のブリブリしたぶりっこの不思議ちゃんキャラとはだいぶ異なる男勝りなキャラをしていて、ダンゴムシが、このほぼ外という感じの中庭にいたことで、色々な感情が溢れた。


ダンゴムシを手のひらに載せてくるような予感はしたが、載せては来ず、『大量の野菜は前日に準備した』と表現せずに『準備』と『した』を入れ替えて『大量の野菜は前日に下準備』にすればなんかいいとか思ったり、このままこの時間が普通に終わればいいとか考えていたら、彼女にダンゴムシのモノマネを要求された。


着ぐるみを作るのは意外とお金が掛かるというけれど、もしも[尺八マン]という和楽器のキャラクターの着ぐるみを作るとしたなら、108万は掛かるだろうな、みたいに彼女が言っていたこともあったなと、懐かしく思ったが、尺八マンの着ぐるみを着て活躍することくらい、ダンゴムシのモノマネはやりたくないので拒み続けた。


拒み続けていると、彼女は、いじけていじけていじけまくって、ダンゴ状態からなかなか戻らなくなってしまって、『ハマった訳』という文字を『ハマった駅』と読んでしまう精神状態と同じくらいの精神状態になっていると確信し、彼女なりの引きこもりだと解釈した。


彼女がダンゴに閉じ籠もり、通常時は鼻呼吸なのにマスクをしている時にだけ、なぜか口で息をしてしまう癖がある僕が、完全な通常時の今、口呼吸をしてしまうくらい、今日の機嫌で決まる明日の彼女のキャラクターが心配になっていた。


不思議ちゃんは不思議ちゃんでも、空気を察するタイプの不思議ちゃんかもしれなくて、不思議ちゃんは不思議ちゃんでも、イントネーションがおかしい方の不思議ちゃんかもしれなくて、宇宙を見るくらいの勢いで天を見上げた。


本来の意味とは異なった意味でその言葉を使い、その言葉の意味を本来の意味よりも強いものにして、定着させればいいじゃないかと思ったりしているけど、このままずっと彼女がダンゴムシ状態でいたら、明日もダンゴムシのまま目覚めるかもしれないし、もう彼女の名前自体に、ダンゴムシが定着してしまうことも無くはない。


ずっと彼女は彼女として、彼女のなりの彼女で手足を抱えてうずくまっているけど、展開がない今は不思議ちゃん風味が薄れて、フシチャンくらいにまで下がっていて、ちょい不思議ちゃんみたいな感じになっていて、いい感じではある。


展開がなくて、退屈の上を行く退屈である『タイタイタイクツ』が、なだらかな波のように揺られて寄せてきたが、その嬉しい退屈を打ち破るみたいに、彼女はなんか、手足を抱えたまま前転みたいなものをしようとしているように見えた。


スマホで『B』という文字を出したくて、『ビー』と入力してから変換しようとしていたら、『ビ』と入力した後に色々とあって、最終的に『日』という漢字を選んでしまい、面倒くさいから直さないで、少し似ている『日』を無理矢理『B』に見せようとしている自分がいたことがあったが、今彼女がしてしまった前転を『微』ではなく『美』と捉えて、スゴいねと褒めてしまったから、テンションが戻って彼女が飛び跳ね出した。


ここから早く立ち去って、新たな遊び場を探す旅に出ようと、思ったときにはもう、彼女は僕の手のひらに強引にダンゴムシを渡してきた後で、『トイレは意外とうるさいよね』みたいな感情とほぼ同じものを今、僕は彼女に抱いていた。


虫は苦手なので、載せてきたダンゴムシを落としてしまい、拾うこともせず、謝罪の言葉も言わずにいたら、彼女は巣に帰ると言って帰ってしまったが、巣というのは、僕たちが同棲している意外にも狭い部屋のことなので、里帰り的なものではなく、普通にまた数分後に会うことだろう。

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