#37 嘘つき⑤
カラオケの最新の採点の機械で、100点取ったことがあると彼女が言い出したけど、カラオケに行く前に行きたいところがあると言われて、そこは激辛ラーメンのお店で、辛いのを食べてから挑んだ、カラオケの採点結果は89点で、90点台にも乗せられなかったみたいなことが終わった、次の日のことである。
やっと、あの日から解放されて、遅くまで目が覚めなくて、遅く起きてしまって、遅く起きてしまったけど、あの日から解放されているから、なんの罪悪感もなくて、全てをあの日に置いてきたような、そんな感じがしていた。
今日は仕事はないのでいいが、彼女のキャラが怖くて怖くて、仕事に行ったら、同僚や上司が、みんなスキップ移動している、みたいなことを想像してみたりもしたけれど、それよりも何よりも、彼女の新しいキャラに触れることが怖いと感じた。
目が覚めても彼女はいなくて、気分はあまり良くなくて、空の雲が美しすぎると、それに気を取られて、危ないから、歩いているときはそんなに、上を見ないで、下を向いて歩こう!をモットーにしようと思っているが、今の時期は、ガッツリ上を見て歩いてもいいかもしれない。
今日、普通のキャラになってくれていればいいのだが、彼女が、材料が切ってあって、タレや出汁が付いていて、説明書を見て炒めたりするだけで、簡単に本格料理が出来るキッドを買ってきて、作り始めて、「自由にやりたいこちらからしたら、ストレスを感じて、逆に時間が掛かってしまうよ」と言い出すキャラだったらどうしようと、考えてしまっていた。
突然、音楽が鳴って、彼女が陰から出てきたのだが、昨日からの記憶に残っている彼女とは、かなり似ていて、雰囲気などがそっくりで、今も昨日のキャラを引きずっているのではないか?とか、今日もまた地獄の日々なのかと、思ったりしてしまっていた。
「優原はみです」という、超有名女優の名前を名乗ってきて、女優憑依キャラなのか、それだったらいいけども、それだったらいいけども、それだったらなんとか耐えられそうだけれども、どうなんだ、どうなんだよ、みたいに感じていた。
今日はモノマネキャラなのか?モノマネキャラであってくれ、お願いだからと、あの嘘つきキャラだけは嫌だと思いながら、天の方向にいる全ての神様に願いを伝えて、伝えて、これでもかと、これでもかと、祈って祈って祈りまくってしまっていた。
二十歳ですとか、貯金かなりありますとか言っていたけど、優原はみさんなら、有名だから、二十歳であることも、貯金がかなりあることも、想像できる範囲内で、特にスゴいことを言っている感覚はなく、普通だろうと思った。
運動が得意とかも言っていて、想像でモノマネみたいなことをするのはいいが、もっとクオリティーはアップさせてほしい、色々と調べてクオリティーをアップさせてから、色々として欲しいと思った。
たぶんだけど、まだ嘘つきキャラが終わっていないのかもしれなくて、今までのモノマネやらが、テキトーな嘘の可能性が出てきて、塗り絵とかって、やっているうちに、集中とか熱中という名の絵の具で、脳を塗り潰されちゃうよね、と思うときがあるが、彼女がモノマネしているときの脳は、それくらい集中しているのだろうか。
ヒノキのこと嫌いなんだよねと言ってきて、急に言ってきて、何言っているんだよ、何を言ってきているんだよ、みたいに思ったが、もし嘘つきキャラが継続しているとしたら、それはそれで嬉しいことで、嘘つきキャラも悪くはないと思った。
嫌いとは言っているが、彼女の顔はニヤけていて、今にも大笑いしてしまいそうな勢いで、あなたの笑い声は、下敷きを手でペナペナしたときの音に似てるな、と言われたときくらいの、なんともいえない、穏やかな空気へと、部屋内は一変した。
こっちもニヤけてしまったが、それは久し振りに、ヒノキという僕の名前を呼んでもらえたからもあって、僕の名前はヒノキなんだ、僕の名前はヒノキなんだ、こんな外見しているのに、ヒノキなんだ、とずっと考えていた。
彼女の名前が、サクラであることも忘れかけてしまっていて、サクラって本当にいい名前だよな、日本ぽいけど、日本ぽすぎなくて、可愛らしいけど、かっこよさもある名前で、みたいなことを考えて考えて、考えて考えていた。
女優になりきって、「私、超有名俳優と結婚するの」と言ってきたが、その超有名俳優さんの具体名を出してこなかったから、たぶん嘘で、昨日の激辛まみれになった嘘つきキャラのときよりも、だいぶマシになっていて、なんか原点に戻れた気もして、良かった。




