#22 計画的②
彼女が時間ピッタリに起きて、時間厳守の文字や、トイレの目安時間まで書いてある予定表を提示されたりして、彼女の鋭い目がギラギラギラと光っていて、予定表には、一分単位のものまであって、頭を抱えていたけど、こちらの望むものを予定の一部に組み込んでくれたっていいじゃないかとか、色々と考えてから約3、4分が経ってそれが今である。
まだ3、4分しか経っていないのに、もう2、3項目はこなしていて、【東大本倉氏】という人と、【灯台もと暗し】ということわざは信じてもいいけど、それ以外の様々な事柄は全て疑って掛かれ、というように脳が言っているような気がした。
目の前の料理を食べるにも、段階があるのか、幾つも幾つも儀式的なものや、準備的なものをやっていて、それは本当に必要かい?、それは本当に必要かい?、それは本当に必要かい?、と何度も何度も思うしかなかった。
食事は10分とスケジュール表的なものには書いてあって、溜め息をしたのだが、【ラッキーフードがフルーツサンドだったからコンビニに寄ったときに見てみたら、イチゴサンドとかバナナサンドとか何もなくて、キウイたっぷりのキウイサンドしかなくて、特殊だなとツッコんでしまった】あの日のツッコミと同じように、偏った時間配分に心で突っ込んでいた。
10分だったらおかずしか食べられないとは思ったが、【全員女の子の十姉妹のペットの、ジュウシマツが悪者の銃を始末した】と聞いた時のような、頭が混乱するような状況までは至らずに、何とかおかしくならないところにまだ留まっていた。
健康に良いようなおかずが、ズラズラと、ズラズラズラと並んでいるのに、健康に悪い早食いを要求されるというのは、矛盾のなかの矛盾のなかの矛盾みたいな感じの状況になっていて、誰かに追われるより、時間に追われる方が怖いと感じていた。
プラマイゼロだなとか考えている暇もないくらい、集中しなくてはならなくて、プラスマイナスゼロという言葉の意味も一瞬分からなくなるくらいまでになっていて、【市の体育館みたいな場所の近くを車で通るといつも、つけていたラジオがキュインキュイン鳴るので、たぶん何かある】と感じているが、お腹がキュインキュイン鳴っている今も何かある。
彼女は涼しい顔で、次々と料理を口に片付けていっていて、【重々承知という言葉を「ジュージュー小腸」みたいな感じの雰囲気を纏わせて相手に喋っていき、相手の頭に焼き肉を擦り込んで、焼肉屋に誘導させておごってもらうという作戦】を、一度でも考えてしまった僕のなかに、どこも涼しい部分なんて無い気がする。
食べ終わって、コーヒーとかコーヒーとかアイスコーヒーとか、ホットコーヒーとか、カフェオレとかカフェオレとか飲みたいのに、食器洗いを命じられて、洗って洗って抗って洗って、ピカピカにしてやろうピカピカにしてやろうと、神に誓った。
彼女は、僕の皿洗い時間突入と共に、メイクと身だしなみの時間に入り、こちらは、監視員から解き放たれる僅かな時間に喜び、そして、『酒飲み対決を15戦して8勝7敗で、30分の対決で全部で7杯しか飲めなかったら、7敗は下戸であって、7杯は下戸であるよ、みたいな感じになるよね』みたいな考えを膨らませてしまった。
彼女のメイク整え時間と、僕の食器洗い時間と、【隘路にアイロニー】という言葉は誰が聞いてもカッコイイよな、【隘路にアイロニー】って本当にカッコいいよな、うん、うん、うん、カッコいいよな、カッコいいよな、と一日に思う時間は、ほぼ同じくらいだろう。
お互いの綺麗にする作業が終わって、可愛い彼女が現れて歯磨きの七分間が始まったのだが、ここは丁寧なんかーい!、とココロのなかでツッコミが炸裂させるくらい、疑問がドバドバドバッと溢れて溢れて、もう溢れすぎて、逆の逆の逆の逆の逆で、少し怖くなった。
ウサギや猫以外でも、動物という生き物は、急に何かに飛び付きたくなる生き物であるのだが、彼女は綺麗好きとせっかちと几帳面が入り交じっていて、複雑に絡み合ってしまっていて、僕はかなり疲れてしまっているので、今はベッドに飛び付きたい気分だ。
出掛ける時間がもうすぐそこなのに、予定表という悪魔の紙切れには、あと4項目も出掛ける前にこなさなくてはならないヘビーな作業があって、【小比類巻新左衛門という名前だったら、書類の氏名の欄が小さくて書けないし、テストの時間が短くなるので配慮して欲しい】と思うと思うのだが、それと同じくらいの強さで、僕にも配慮をと願っていた。
ああ、腐る・・・・・・ああ、暑くて腐る・・・・・・みたいなことをぶつぶつと呟く女子のことを、サバサバしている、と言うのだろうと思っていたが、それは違くって、サバサバが、サバみたいにすぐ腐っちゃうよみたいな意味ではないことを初めて知ったのだが、少しサバサバしているような彼女の、落ち着きすぎている顔がやけに腹立った。
最近は、感染症の有効な解決法を産み出したいという意識を常に持ちながら、眠りにつくことにしているけど、息が詰まるキャラは今まで、それほど無かったから、一番ツラいかもしれなくて、もう今日はこの計画的なキャラの彼女のことを考えながら、眠りに就くしかなさそうだ。




