#15 寡黙②
彼女がくれたハンバーガーには僕があまり好まない肉系ではなく、魚のバーガーもあって嬉しかったし、よく見るとそれは、パンのくくりに分けられるバンズではく、ご飯粒の数を辛うじて数えられそうなライスをバンズに見立てたライスのバーガーで、ほんの少し嬉しかった、その後が今である。
食べている間も、寡黙キャラだろうなと思うくらいのだんまりを決め込む彼女に、こっちまでだんまりになってしまっていて、壇マリという有名人がいたようないないような、みたいに考えたり考えなかったりしてしまっていた。
僕はライスバーガーのお米を数えることを必死で我慢してはいたが、【テレビで散弾銃と聞こえたのでビクッとなったら、三段にお重を重ねた三段重の方で、そうだよねと思ったことがあった】その日から変になっていて、つい我慢が出来なくなっていた。
抑えきれず、ライスで出来たバンズを解体し始めた僕だったが、彼女からすると、僕もかなりのぶっ飛びキャラで、今の二人のキャラを比較してみたりなんかしちゃったりすると、どちらかというと僕の方がトリセツが必要なほどの、変人で変人で変人で変人だということは明白だった。
そのとき彼女の最大級の『え?』が漏れてしまっていて、我に返って、『これはスイーツパンだけどゴハンとしてもイケルヨ!みたいに言われたら、もう頭のなかでパンという言葉とゴハンという言葉が、そばめしみたいにほぼ均等に混ざりあってしまうことだろう』という普段通りの思考が僕に戻ってきた。
僕はお米を我慢出来ずに数えてしまったが、僕がお米を数えることを我慢していたように、彼女も声を出すことを我慢していたのかと考えてしまうようになっていて、寡黙キャラはヤラセなのでは?と思ったり、寡黙の『寡』という漢字難しいなみたいに思ったりした。
寡黙の『寡』という漢字は、寡黙な人が立っているシルエットに見えなくもないなとか、たぶん彼女は無理やり喋らないようにしてるなとか、色々なものをぐるぐると巡り巡らせながら、僕は疑問を抱いて彼女を見つめた。
すると、さっきの『え?』とは少し違う、僕に対する『え?』ではなくて、自分に向けて発したような、少しとぼけた表情をしながらの『えっ?』を周りに振り撒いていて、このキャラが寡黙キャラではない可能性と、新たに寡黙キャラの進化版が出来てしまったという可能性が出てきた。
もしも半角数字や半角アルファベットが全て、全角文字のちょうど半分だったなら、きっちり揃えたい性格の僕の無駄な時間は減らせていただろうみたいな考えと共に、キャラに潜んだ裏の部分に対しての不安と、彼女の声が何度も溢れてきた。
「えっ?」とか「えっ?」とか「えっ?」とか「えっ?」とか、「ええっ?」とか「ええっ?」とか「ええっ?」とか「ええっ?」とか、【え】とちっちゃい【つ】の組み合わせの声しか、彼女は発しなかった。
今日は今までに「えっ?」という言葉しか聞いてないけど、えっ?のバリエーションはかなり豊富で、【防犯情報を見ていたら、高齢者の行方不明情報が載っていて、その特徴として、はげ上がっているという言葉が使われていて、もっとオブラートに包んだ言葉はなかったのかと熱くなった】その時以上に興奮して熱くなっている。
少し前に流行った新しい型のウイルスの名前は、言うことに詰まることなく流れるように言える心地のよい言葉で、言いやすくて言いやすくて、もっと言いづらかったら印象も変わっていたのでは、と考えてしまったこともあったが、今はえっ?以外の言葉が、周りの空気的にも言いづらくて、こちらも彼女の「えっ?」に「えっ?」で返してしまっていた。
えっ?しか喋ってはいないが、えっ?は立派な言葉で、えっ?と言っているときも喉を震わせて、酷使は少なからずしている訳なので、これはかなり喋っているから寡黙キャラではない、これはかなり喋っているから寡黙キャラではない、そう思ってきた。
全員女の子の十姉妹のペットのジュウシマツが悪者の銃を始末した!全員女の子の十姉妹のペットのジュウシマツが悪者の銃を始末した!と二回繰り返し聞いたら、頭が混乱するように、今はかなり混乱の渦の中にいるけど、彼女の今のキャラは完全に【えっ?キャラ】だろう。
入室時に、『失礼します』と言うのが普通だが、それを中の人が認めてしまった時点でもう、これから室内で起こるかもしれない悪事に文句が言えなくなる、みたいに考えて怖くなってしまうから、『失礼します』と言われるとビクッとなるし、何か仕出かしたのか?と不安になるので、退出時に『失礼しました』と言われるのもビクッとなる、そんな僕だからこそ、まだ寡黙キャラの方が上手く扱えた。
ライスバーガーを食べ終わると、テーブルの下辺りから、もう一個の紙袋を出してきて、もういいと言うと、渾身の『えっ?』を浴びせられて、こちらも咄嗟に言葉が出てしまったが、えっ?とはならず、えっ?の上の『はっ?』が出てしまい、必死で抑えた。




