#00 かのじょ
彼女は普通の一般的な彼女とは違い、『耳に違和感があって、水か耳あかかと思っていたら髪の毛だった』みたいな出来事と同じくらい、少し特殊に片足突っ込んだような、少し変な彼女だ。
その変な彼女の変の種類が、『もしも演技のお仕事をすることになって、もしもそれが上半身裸にならなくてはならない仕事の場合、両肩にラクダを埋め込んだみたいなカタチをしているから、NGにしてしまうかもしれないと思ったりしちゃっている僕』みたいに、自発に近ければ良かったのだが、そうではなかった。
僕の彼女は、約30のキャラを持っていて、朝にランダムで決まってしまうというもので、全てのものを100円単位で買えるようにしてほしいと思う気持ちと同等の、普通の彼女に戻ってほしいという気持ちを持っている。
【朝】という漢字を月を下にして半回転させた状態みたいな、そんな寝姿から彼女が目を覚ますと、怪獣から女神様まで幅広く多彩なキャラクターを見せてきて、そのキャラは起きてから寝るまで続くという、『電話に絶対出るという気持ちが強すぎて、着信音に驚きスマホを投げてしまい水没した』みたいな苦痛がある。
それでも彼女と離れずに、タバコやお酒のようにやめられずにやってしまうのは、寝ると別のキャラに変わるという、絶妙設定が彼女には設定されてしまっていて、リセットの安心感が、【感】という漢字のきちんとしたバランス感覚から来る安心感みたいなものに、似ているからなのかもしれない。
どのキャラが選ばれるかは分からず、今分かっているものだけで30はあるが、アボカドの種類が意外に多いとテレビでやっていたのを見てしまった昨日の今日なので、彼女のキャラが30でおさまるとは、心のなかのデビルな僕もエンジェルな僕も思っていない。
もちろん続けて同じキャラなこともあって、冷蔵庫に入っている僕のプリンを勝手に食べるようなカワイイキャラならまだいいが、罪を犯すかもしれない確率が一割よりも低い人や、私の辞書には「悪口」という文字がないよ、っていう人がタイプの僕には、恐ろしすぎる。
【感】という漢字よりも、【悪】という漢字の方が、安定感と安心感があることに今さら気が付いてしまったが、彼女と生きていく中で、それはすぐに気づかなくてはイケないことで、この先彼女のキャラで対応が遅くなる予感しかせず、嫌なキャラの時は無理矢理寝かせてしまう、という強引な対策を多用する未来しか見えない。
彼女の特徴を言い表すとしたら、お腹が下りましたという意味で、お亡くなりになりました風に、【おな下りになりました】みたいに言ってくることもあるかもしれないくらい、変になることもあるということだ。
哲学的な性格に躍り出ることもあるし、心から笑えるわけではないが、笑える性格になることもあって、[飽きるということ][飽きてしまうということ][飽きが来るのだということ]の三点の観点からいうと、いい意味で素晴らしいものではある。
僕の苦悩はずっと続くのだ、僕の苦悩はずっと続くのだ、とずっと思っていたが、漢字が苦しい脳と書くものだと思っていたのに、月ヘンではなくて、左側が竹みたいなやつを使っている漢字で、それによって、また苦悩は膨れ上がってしまったのだった。
何で左側の月が、竹みたいなものになっているのかは理解できなかったが、たぶん、かぐや姫という人は、竹と月に関係している人物だったと思うので、何らかの秘密を握っているのは、かぐや姫なのかもしれない。
彼女には、レアキャラとか、今まで出てきたキャラをわざわざ掛け合わせてくれやがったミックスキャラみたいなものもある気がして、今後は新キャラなども出てくる可能性があって、度が過ぎた強烈なキャラの極端すぎるものが来る怖さがある。
今思ったのだが、可能性という言葉は、いいことの場合にしか使ってはならない気がしていて、不可能性という言葉もあるにはあるが、そのどちらにも似ていない事柄の場合に、どういう言葉を使っていいか、いつも迷ってしまう。
もう、彼女の寝る度に変わってゆく変な性格の数々に、疲れ、楽しみ、楽しみ、疲れ、といった感じになっていて、唐揚げをおかずに味のない細めのうどんを豪快に啜りたい気分だし、【それは酢の物そのものだな!】みたいにダジャレ風に突っ込見たい気分でもある。
もしも付けることになったチョーカーがキツくて、その上、チョーカーの飾りが十字架で、さらにその十字架の下部が尖っていたら、首は絞められるし、喉は十字架に刺されるしで、生きた心地がしないだろうけど、今はそれに少し近い状態な気がする。