第1話 神様、いきなり来すぎじゃない?
2025/5/25~再編集して投稿しなおしています!
もしよろしければ最後まで見て行ってね!
――「え?」
真人は目の前に見える光景に理解が追いつかないまま玄関で立ち竦んでいた。
いやいや、何の冗談だよ。
ラノベの主人公じゃあるまいし、こんなバカなことが現実に起きるわけがない。
玄関の扉を閉め、再び扉を開ける。
が、目の前の光景が変わることはなかった。
「まぢかぁぁぁぁ」
突然の出来事によるショックにより膝から崩れ落ちる主人公。
日本での生活が突然終了したショックもデカいが、異世界に転生させられたという事実は正直嬉しかった。
何故ならばあの逃亡生活ともおさらば出来たからだ。
だが転生させらたものの、何をすればいいのだろう。
そもそも俺は何のために異世界に飛ばされてしまったのだろう。
あのメッセージは誰から来ていたのだろう。
異世界転生ものといえば何かしらの理由が大抵あるのが王道だよな。
そう思い玄関を閉め再び部屋に戻ろうとすると…
「あのーーー」
突然、自分の部屋の中から聞いたことのない女性の声が聞こえてきた。
「だ、誰だ!?」
誰も居ない部屋の中から急に声がしたので、驚いた。
先程まで誰も居なかったリビングの方から女性らしき声が聞こえてきた。
玄関から恐る恐るリビングへと続く扉を開く。
扉を開けるとそこにはとても人間の容姿とは思えない女性が凛とした姿で待ち構えていた。
その容姿はまるで天使のような背丈より大きな羽が生えていて、髪は腰にかかりそうなくらいの金髪のロングヘアで、瞳は宝石のように青色に輝いていた。
元いた世界でこのレベルの容姿の女性が果たしているのだろうか。
そう思えるほどに彼女の姿は美しかったのである。
と、思わず見とれてしまったが……まあそんなことを思う前にこいつが何者か問いたださないとな……
「あんたは誰なんだ?突然人の部屋に現れて…」
「これは、失礼しました。自己紹介をまだしていませんでしたね。
私はこの星の創造を司る神アルマノルティアと申します。今後ともよろしくお願いします、真人様」
「神か…(神ならその容姿にも納得…か…?)
それで、そんな神が俺にいったい何の用なんだ」
「えっとですね、その…真人様のことがですね…好きなんです」
んーーー?
彼女は何を突然言っているんだ?
きっとこの目の前にいる神が俺をこの世界へと転移させたのだろう。
俺の名前も知っているみたいだし、あのメッセージの送り主もこの神なのであろう。
そんな神が俺のことが好き???
「真斗様が思っている通り、この世界へ転移させたのは私です」
「え!?お前心の声でも聴こえるのか?」
「意識を集中させればそれくらいのことは可能ですよ?」
そんなことも知らないんですか?みたいな顔をしてこちらを見てくるのに腹が立った。
勝手に俺の心の声を聞かれてプライバシーが欠如しているな?こいつ。
「今後俺の心の声を聴くのは禁止な」
「ええ。そんなぁぁ」
「あんただって勝手に心の声を聴かれては嫌な気持ちになることくらいあるだろう」
「うぅ…そうですね。勝手に聞いて申し訳ありませんでした。善処します」
「そうしてくれたら助かる」
「まぁ神ってのは、普段人間とはあまり関わらないんだろ? それは分かる。でも――」
真斗は腕を組み、目の前の女神に向き直る。
「そもそも俺は、何でこの世界に“転移”させられたんだ?」
「はい、それなのですが……まず一つは、私が真斗様に心惹かれていたからです!」
「はぁ?」
「ですがっ、それだけではありません!本当の理由は――この星が、“ある問題”を抱えているからです」
「……ある問題?」
「順を追って説明させていただきますねっ!」
⸻
そう言って、女神・アルマノルティアは語り出した。
この世界――《アルバスミコトリア》は、かつて技術と魔法が高度に融合し、地球より遥かに発展した文明を築いていたという。だが、神々が種族に力を与えすぎた結果、対立が激化し、幾度となく戦争が勃発。最終的には、世界を巻き込む大爆発が起こり、住人の八割以上が失われ、文明は壊滅的な衰退を遂げた。
それから数千年――神々はその反省から極力干渉を控え、地上の民も“神の怒り”を恐れ、必要以上に技術を発展させることをやめた。
そして今、この世界では「平和だが活気がない」――そんな“退屈”な時代が続いている。
「娯楽はあるんですよ、真斗様。料理も音楽も舞も……でも、かつてあった“熱”がない。みんな、ただ日常を消化するように生きてるんです」
「……熱がない、ね。分かる気がする。楽しむ気持ちを失った人間って、何か根本が空っぽになる」
「そうなんです! だから私は思ったんです。今こそ“誰か”が、世界に“楽しい”を届けるべきじゃないかって……!」
「楽しい…ねぇ」
真斗はしばらく沈黙し、それから小さく笑った。
「それにしても、神ってやつは万能じゃないんだな?」
「……はい。正直に言うと、私たちももう、この世界を導く力を失いつつあります。だからこそ、あなたのような存在に託したいんです」
「そうか……まぁ、俺も別に神を信じたことはなかった。けど、お前が“人間と一緒に頑張りたい”って思ってるなら、ちょっとは信じてみるさ」
アルマノルティアはほんの少し、嬉しそうに微笑んだ。
「……それと、真斗様の家系についてもお伝えしなければなりません」
「……天ノ風家のことか」
天ノ風あまのかぜ――それは、かつて地球において唯一、神と契約を交わした一族。
その血を受け継ぐ者は、生まれながらに“神の力”の片鱗を宿し、特異な能力を得るという。そして真斗は、その中でも特別だった。
異能の制御、超感覚、神術適性。あらゆる訓練を課せられ、文字通り“人としての自由”を奪われて育った。
だからこそ、彼は逃げた。
――十年以上、ずっと。
「俺にできることなんて限られてる。俺より優秀なやつ、いくらでもいるだろ」
「いえ。真斗様だからこそ、お願いしたいんです。力も、優しさも、かっこよさも……全部、私が選んだ理由です!」
「……恥ずかしげもなく言うな、ホントに」
思わず苦笑しながら、真斗はため息をついた。
「で? 俺は何から始めりゃいいんだ?」
「はいっ! まずは……《動画配信》です!」
「……は?」
「真斗様の力とこの世界の魔導技術を組み合わせれば、動画投稿やライブ配信も可能なんですよっ!」
「ネットも電波もない世界で、どうやって……」
「そのあたり、ちゃーんとご用意しております!さぁ、まずはこのおうちをご案内しますね
「この家は、真斗様の元いた世界から、まるごと転移させたものです。生活インフラ――電気や水、ガス、Wi-Fi的な通信環境まで、ほぼ完全再現されてます!」
「……Wi-Fi的なってお前。ここ、異世界だよな?」
「はいっ! 魔導通信でエミュレートしてますから、機能的には同じです!」
女神・アルマノルティアは胸を張って答える。
どうやら、この世界では“神の技術”と“魔法”を組み合わせることで、疑似的なテクノロジーを再現できているらしい。
「それじゃ、俺が動画配信しても、ちゃんと誰かに届くってことか」
「その通りです! しかもこの家には、《空間拡張》や《携帯召喚》の機能も備わってます。後々、信仰ポイントを集めていけば、拡張も進化も自由自在に!」
「……え、持ち運びできんの? この家」
「できます! お部屋も広げられますし、今後は《個人拠点》としての成長も期待してます!」
真斗は思わず部屋の中を見渡した。
4LDK、庭付き倉庫あり、築浅の隠れ家的な平屋。実家からもバレずに過ごしてきた、愛着あるマイホームだ。
まさかこれごと異世界転移するとは。
「それで、配信って言っても……この世界で何を配信するんだ? ゲーム実況もないだろ?」
「はい。真斗様には、この“世界そのもの”を配信していただきたいのです!」
「……世界、か」
「はい。各地には素晴らしい文化や景色があるのに、国同士が鎖国状態で交流も情報もありません。だから誰も、この世界の本当の魅力を知らないんです」
「なるほどな。だったら、それを俺が届けるってわけか」
「そうですっ! “旅をしながら世界を映す”。それが真斗様にお願いしたい、最初の使命です!」
──確かに俺も、これまでの人生で“楽しい”ってやつに触れる機会は少なかった。
逃亡生活で身を潜め、誰かに見つからないよう息を潜めて生きてきた。
この世界でなら……もしかしたら何かが変わるかもしれない。
「わかった。じゃあ、引き受けるよ」
「ほんとですかっ!?」
アルマノルティアの目が一瞬うるんだ。
さっきまで神様してた顔が、普通の女の子みたいに崩れて、今にも泣き出しそうな笑顔になっている。
「……まぁ、そこまで言われちゃ断れねぇしな。それに、これも何かの縁だろ」
「ありがとうございますっ!! あ、あと一点だけ……この家のこと、もう一つ大事な話があります!」
「まだあんのか」
「この家、《持ち運び式》で、室内拡張もできます! 信仰ポイントが溜まっていけば、庭がダンジョンになったり、倉庫が異空間倉庫になったり!」
「マジか。俺んちが最強拠点になんのか……」
にやり、と笑ってしまう自分がいた。
──この生活、案外楽しめるかもしれない。
「じゃあ、まずは何をやればいいんだ?」
「はい! 実はこのプロジェクトの実施にあたり、私がこの星の神々に正式な“協力要請”を出しました」
「協力要請?」
「この世界では文明が衰退し、配信を視聴する術がありませんでした。なので、各国・各種族の代表者に向けて、《視影水晶ビジョンクリスタ》という媒体を神々が配布し、視聴環境を整えてもらっています!」
「へぇ……じゃあ、どこかしらではちゃんと見られるんだな?」
「はい。各都市の広場や集会所など、最低限の公共視聴設備は整っているはずです!」
「それなら、やりがいもあるな」
この星の住人たちに、自分の映す景色が届く。
笑ってくれたり、楽しんでくれたりするなら――それだけで十分だ。
「それじゃ、改めてよろしく頼むよ。アル」
「は、はいっ……!」
少し照れたように、けれど嬉しそうに返事をする彼女。
神といえど、その反応はとても人間くさかった。
「それでさ、アル。さっき“異世界での力を渡す”って話してたよな?」
「はいっ。それでは今、お渡ししますね!」
アルマノルティアがそっと手を掲げると、
空気がピンと張り詰め、空間の中心に巨大な光の紋章が浮かび上がった。
円形の魔法陣は幾重にも重なり、まるで天体の軌道図を描くように、静かに回転を始める。
「真斗様。これより、あなたに――“世界を繋ぐ力”を授けます」
神の言葉と共に、黄金の光が無数の糸となって真斗の体を包み始めた。
暖かい。だが、ただの温もりではない。
それは魂の芯にまで染み込むような、根源的な“力”の流入だった。
「授ける力は、ふたつ――」
「一つ目は、私の持つ神の力。創造の理に触れる【創造の力マスタークリエイト】。
世界を紡ぎ、構築し、想像を形に変える力です」
黄金の球体が彼の胸元へと吸い込まれ、胸の奥が灼けるように熱を帯びる。
それと同時に、視界の奥で“世界の構造”がぼんやりと見えるような錯覚に陥った。
「そして二つ目――これは、未来すら定かでない未知の力」
アルの声が少しだけ緊張を帯びる。
「【異世界の力アンダーザ・パンドラ】。
これは、貴方の運命と、この星の無数の“もしも”が交錯して生まれた、唯一の祝福です」
漆黒の小さな箱が紋章の中に現れると、その蓋がカチリと開く音が響いた。
次の瞬間――
ドウッ!!
凄まじい勢いで闇の光が奔り、真斗の背中に雷のように突き刺さった。
「くっ、が……!」
意識が揺れる。体内が膨れ上がるような衝動。
それはまるで、人間という器をこぼれ出そうとする“何か”が流れ込んでいるようだった。
「まなとさま……! もう少しだけ、耐えてください!」
神の声がどこか遠くに聞こえる。
視界は白と黒に交互に染まり、時間の感覚も曖昧になる。
身体が熱く、冷たく、重く、軽い――すべての感覚がバラバラになっていく。
足元がふらつく。
(……やばい……これ、限界かもしれん)
膝が崩れ、倒れそうになった真斗をアルが優しく抱き止めた。
「もう大丈夫です……あとは、ゆっくり眠ってください……」
その声はまるで、胎内に戻るような穏やかさで、
真斗の瞼が重たく落ちていくのを、彼自身止められなかった。
「これが……異世界……か」
呟きと共に意識が闇に沈んでいく――
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