【プロローグ】異世界転移、クリック1つで
2024/12/25~再編集して投稿しなおしています!
もしよろしければ最後まで見て行ってね!
――カタカタカタ、カチッ。
「よしっと……ふぅ、これで今週分の編集は終わり!」
自分でも誰に向けたのか分からない声を漏らしながら、俺はゲーミングチェアから立ち上がる。
キッチンに向かい、棚の奥からインスタントコーヒーの袋を取り出す。お湯を沸かして、香りが立ち昇ってくる。
「やっぱ仕事終わりの一杯はうまいなぁ……」
とはいえ、“仕事”ってほどのもんでもない。
動画編集。それもFPSの切り抜きと実況。登録者はせいぜい3桁、再生数は気まぐれに伸びて50回くらい。
ぶっちゃけ、お小遣い程度にしかならない。でも俺にとっては、数少ない“表現できる場所”だ。
コーヒーを片手にデスクへ戻り、椅子に腰を下ろす。
そこは俺の城。ゲーミングモニター、配信マイク、PC3台の大艦隊。
「さて、次はこないだ配信した試合の切り抜きでもやるか……。前回は伸びなかったし、編集のノリ変えてみるか」
気を取り直して、有名配信者の動画をいくつか開く。
自分と大差ないプレイなのに、なんであんなに人気出るんだよ……って思いながらも、悔しさと参考の間でリサーチしていく。
――俺の名前は、天ノ風 真斗。
子供の頃から“特別な環境”で育ったせいで、今は逃亡生活を送っている。
住民票もなく、足取りも追えないように、定期的に住所を変えてる。
そんな俺にとって、動画配信という職業はうってつけだった。どこにいてもPCとネットがあれば働ける。
逃げながら、自分を見せるという矛盾。その中で、俺はようやく“自分”を保っていた。
「本職になって、好きなことで食っていけたらな……なんて、夢見すぎか」
そうつぶやいて、ふと時計を見る。
「うわ、もうこんな時間。腹減った……」
冷蔵庫を開けるが、当然のように空っぽ。
仕方なく、バッグを掴んでコンビニに行くことにする。が、その前に――
「先に、動画上げとくか」
――カタカタカタ、エンター、カチッ。
その瞬間、画面がバグったように一瞬チラついた。
ん? PCの調子でも悪いか?
と思ったら、目の前のモニターにこんなメッセージが表示されていた。
『異世界に転移して共に活動しませんか?』
【YES】/【NO】
「……は?」
冗談か? ウィルスか? どこの中二病アプリだよ。
普通ならスルーするところだが、疲れてたのもあって、軽いノリでポチッとな。
【YES】
「さーて、飯買ってくるか〜」
気にせずコンビニで弁当を買い、足早に帰宅。
レンジに突っ込んで温めつつ、再びデスクへ座ると――
画面が変わっていた。
『異世界に転生すると動画配信者として有名になれますよ』
「はああああ!?」
いやいや、ふざけんな。誰だこれ仕掛けたの。
何が“異世界”だ。
しかもなぜか俺が配信してることもバレてる。
『ほら、早くYESを押してください!!!』
「こっわ! 誰かに見られてんのかよ……監視系ホラー?」
モニターの文字は、どんどん強調されていく。
このまま放置すると、もっと厄介なことになりそうな気配すらする。
しぶしぶ、またYESをクリックした。
『ありがとうございます、真斗様。転移の儀を開始します』
「え、ちょ、俺まだ弁当食っ……」
言い終わる前に、空間がゆがむ。
視界が白く塗り潰され、次の瞬間には――
俺の部屋。いつものデスク。ゲーミングチェア。さっきの弁当。
「……え、戻ってる?」
何だったんだよ、今のは。夢オチか? イタズラか?
とりあえず、飯……と、思ったそのとき。
窓の外に、見覚えのない景色が広がっていた。
見渡す限りの草原、奥には深い森、さらに向こうに広がる巨大な山脈。
玄関のドアを開ける。
外は――完全に、異世界だった。
「……まさかとは思うけど……家ごと転移してるううう!!??」
こうして、俺の“動画配信者としての異世界ライフ”が、突如始まったのであった。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
誤字脱字等があればコメント頂ければ幸いです。
また、応援コメントやいいね等してくだされば非常に嬉しいです!