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真夏の彼女と蒸し暑い日

「やーだ、抱きつかないで。暑いでしょ」

夏のある日、二人でゴロゴロと昼寝をしようとしていた。何時ものように彼女に抱きつこうとすると、急にお預けをくらってしまった。

「嫌だって言ってるでしょ」

めげずに抱きつこうとするも、本気で嫌がられているようだったので諦めた。


「そんな目で見ないでよ…今日は特に暑いし、くっつかれるともっと暑くなるでしょ」

確かに、今日は今月1の暑さだ。まだ7月だというのに、三十度を大幅に超えている。仕方がないので布団から出て立ち上がった。

「あ、怒っちゃった?ごめんね、別に嫌いになったわけじゃないからね」


彼女の言葉に、別に、と返すと押し入れからパンダの抱き枕を出してきて布団に潜り込んだ。

「なにそれ?」

「抱き枕。舞に抱きつけない代わりに、舞ちゃん2号に抱きつこうと思って」

名前は今付けた、そう言って2号を抱きしめた。身長140センチある2号は、ほぼ人と変わらないサイズ感だった。

「舞、愛してるよ。いつもありがとう」

「舞、大好きだ。ずっと一緒にいてくれ」


「・・・何やってるの?」

2号の耳元で囁くのをやめ、本物の舞に向き合った。

「この子を舞だと思い込もうとしてた。本当に思い込めれば寂しくないかなって」

「えー、それ私は横でずっと聞かされ続けるわけ?すごい微妙な心境なんだけど」


「舞、愛してるよ」

「ねえ、なんで向こうむいちゃうの?ねえねえ」

そう言って彼女はシャツの裾を引っ張ってくる。


「よしよし、舞はかわいいなあ。好きだよ」

「・・・ずるい」

ずるいって何が、と本物の舞に向き合った。


「ずるい。私そんなに言われたことない」

「でも今だって一応舞に対して言ってるつもりだし・・・」

「私を見て言ってよ。ね?」

そして彼女は首筋にキスをした。生温かくて、くすぐったくて。背筋をぞくぞくとなぜるような感覚に、鳥肌が立った。

「愛してるよ」

振り向いて舞の目を見て囁いた。ほんのりと頬が染まっていき、彼女はふいと顔をそらした。


「ねえ、なんで向こうむくん?」

彼女に言われた言葉を言い返す。照れた舞は一段と可愛いなと思いながら、自分もまた後ろを向いて2号を強く抱きしめた。

彼女がごそごそとこちらを向いた気配がした。吐息がうなじにかかり、くすぐったい。


「ねえ、好きだよ」

そう言って彼女は右腕に抱き着いてきた。普段からスキンシップをしてくれない彼女からの行動に、飛び上がりそうなくらい嬉しかったが、彼女の言う通り暑い。

「暑いから離れよ・・・?」

そういって彼女の腕を振りほどいて逆を向くと、背中に張り付いてきた。


「なに、今日はずいぶん甘えるね」

背中越しに話しかける。彼女は小さくうんと言って、はにかんだ。パンダに嫉妬しちゃったと笑う彼女に抱き着いて、クーラー入れようかと囁いた。

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