隠している話
その裏側をめくって
中を覗こうとする
目で見て認識したいからである
その前に
目で見て認識したいという欲求が
小さくなっていく
カーテンに触れようと
手を近づけていくだけで
それは消えていく
消える欲求が
次の欲求を作り出している
自分の目で実体として
その裏側を見たいと
新たな欲求になる
期待、期待、期待
カーテンレールの音
カーテンの位置はズレて
明るい外に
中の物が露わになる
その子は小さく肩を落とした
急速に元気と呼ばれるエネルギーが
減っていっている
カーテンの内に何があるのか
把握している側にとって
特に何があるとは言えない
ただの壁であり
そこの壁色を変えたいと
カーテンを取り付けたに過ぎない
何を思って
そのカーテンをめくったのだろう
秘密の窓か
内緒の部屋か
どんな空想が見えていて
どんな色になっていただろう
何故、何故、何故
めくった裏側には
何も無かった
あっちの色と同じ
ただの壁だった
どうして
こんな何処にカーテンがあるのか
カーテンで隠したい物が無いのか
兄の部屋には
変な本があった
父と母の部屋には
見たことが無い棒があった
でも
ここには何も無い
もしかして
カーテンを飾りたいだけなのか
確かに
家にある物より高そうだ
生地が違う
色合いも綺麗だ
良い匂いもする
そうだ、きっとそうだ
カーテンは隠すばかりじゃなくて
飾っても良い物なんだ
その子は首を動かして
何かを納得している
自分で考えて
自分で納得しているのだ
疑問と見つけた答え
教えてくれないだろうか
どんなことを考えたのか
教えてくれないだろうか
カーテンを開けようとした時
その子の両親が注意しようとした
それを制止して笑って見せた
今は両親とテーブルを囲んで
紅茶を飲みながら談笑をしている
近づけて来てくれないか
尋ねてくれないか
まだ少しだけ考えている
何を考えているのか
気になる
両親の話を五割程度で聞きながら
その子を観察する
また、違う物に興味が出たようだ
そちらへと向きを変える
ジュースを置いた方が良いか
話をしてくれるかもしれない
さて
どのタイミングで冷蔵庫へ立とうか