表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

前半

「さみぃ。」


まだ朝はけっこう冷えたりするな。

非常に起きたくない。

ボソッと呟き、そんな事を思いながらもベッドから起き上がる。

二階にある自室から出て、階段を降りたらすぐ左手にある扉を開けてリビングへと入る。


「凉はまだ起きてないか。ったく。」


独り言もそれだけにし、朝早くから仕事に行った親が準備してくれてた料理をテーブルに運ぶ。

そして、これまた準備してくれていた、ドリップしてポットに入っているコーヒーをカップに入れて、テーブルに持って行く。

それが二セット。


先にコーヒーを飲んで待っていると、リビングの扉が開く。

寝起きだと言うのに髪はそんなにボサボサとしていない、さらさらの黒髪ロングの妹が目を擦りながら眠そうにやってきた。


「あ、お兄ちゃんおはよー。」


「おう。早く食えよ。」


「はいはい。てか、寒くない?」


「まぁ、そうだな。」


妹の凉が椅子に座ってから二人で朝飯を食べ始めた。

それからすぐにパンを噛っている俺に向かってそう言った。


まぁ、4月7日だし、始業式の日だし、まだ寒いのは仕方ないだろう。


「なんかテンション低いね?朝からこんな美少女といるのに。」


「あー、ハイハイ。そうだな。てか、毎日会ってんだから、別に変わらん。それに眠い。」


美少女と言うのは否定しないが。

アニメの妹なんかとは違ってうちの妹は可愛いと言うよりは綺麗系の部類だ。

身長も高くスラッとしてるからな。

かく言う俺は、顔はそんなに悪くはないはずだが、目が死んでいる。

目が致命的に俺のイケメン度を損ねていると言ってもいいくらいだ。

元々目付き良くないのに目が濁ってるって、死んでるって………。

身長は男だから其なりにはあるのだが。

…………まぁ、目は俺の気力の問題とか腐った根性のせいとか色々と理由はあるかもしれん。


「それと、今日から学校なんだからテンション低いのは当たり前だ。」


「そう?久しぶりに会う友達とかいると楽しみじゃない?」


「何お前?それ嫌味?」


「あー…………お兄ちゃん友達居なかったね。」


やめろ哀れんだ目で見るな妹よ。

友達いないとか事実だけど、好んで独りでいるのだから哀れまれる必要は断じてない。

本当だよ?


「まぁ、そんな事はどうでもいいけど、凉も三年だし今年は頑張れよ。」


俺は今日から高二。

妹の凉は中学三年だ。

つまりは受験生。

まぁ、俺も凉も勉強はそこそこ出来る方だし心配はないかもしれんけど。


「うーん、まぁ、ぼちぼちね。さてと。じゃあ、準備するから後お願いしていい?」


「おう。」


それだけ会話すると凉は立ち上がってリビングから出て行った。

食べた後の片付けは俺。

まぁ、何時もの事だからいいか。

女は色々と準備が大変みたいだしな。


俺も立ち上がって食器を片付けたら自室に戻り着替える。

鞄を持って階段を降りたら玄関にいた飼い猫の(リン)がニャーと鳴きながらすり寄って来た。

それを退かして、先に玄関を出て自転車の準備する。

そうしているうちに凉も玄関から出てきた。


「鍵閉めたか?リンに餌出したか?」


「大丈夫!」


そう言って俺が跨がっている自転車の後ろに乗ってくる。


「んじゃ行くか。ちゃんと掴まっとけよ。」


それだけ言って俺は自転車をこぎ出した。

こうやって登校する時だけは基本俺が自転車で送って行ってやってる。

凉は地元の中学校に通っていて、俺は地元からそんなに離れていない高校に通っている。

中学校の前は通るし、中学校までは5分くらい、高校までは20分かからない位だから、別段手間のかかる事では無いのだ。

俺が高校生になってからだから、一年間これが続いていて慣れたしな。

とはいえ、最初の頃は大変だった。


まず美少女の凉と2人乗りしてるだろ?

そうすると、周りからは'え、何であんな奴の後ろにあんな可愛い子乗ってんの?,みたいな目で見られる。

凉の友達なんかからは'年上の彼氏………じゃないよね?,

みたいな微妙な反応される。

凉に申し訳ないと精神的に大変だった。

凉は全然気にしてないみたいだったからまだ良かったんだが。


凉曰く'え?別に私は気にしないけど?楽だし、知らない人からの目がどうとか気にならないし。それに友達には説明したらすぐ納得してくれたからお兄ちゃんが気にする事何も無くない?,らしい。


昔を振り返っていると中学校の校門が近づいてきて、周りに登校中の中学生が増えてくる。

すると凉が友達を見つけたようで後ろから声をあげる。


「おはよー!お兄ちゃんありがと!ここでいいよ!」


「そうか。んじゃ、俺行くわ。」


「うん!じゃーね!あ、今日夕飯の当番私?」


ああ、そういえば、学校がなかったから適当だったな。

うちは両親共働きで帰りも遅い事が多いから夕飯は交代で作っているのだ。

春休みの途中までは姉の涼香もいて三人で交代の当番だったんだが、姉ちゃんは大学進学の為独り暮らしをするそうで、二人で交代になっていたのだ。


「いや、俺でもいいぞ?」


「じゃ、お願い!多分遊んでから帰ってくるから!」


「はいよ。」


『凉まーたお兄ちゃんに送ってもらったんだ。』


『ほぼ毎日送ってくれるとか超優しいよね。しかも三年にもなった妹の為に。』


『いいのいいの。ついでだから別にいいぞって言ってるし。』


そんな声を後ろに聞きながら、俺はまた自転車を漕ぎ出した。




俺は俺で高校に着き駐輪場に自転車を止めての校舎の方へ向かう。

周りでは'久しぶりー,とか'元気だったー?,とか'クラスどうなるかなー?,とか話ながら歩いてくる連中ばかりだ。

下駄箱がある玄関近くまで来るとクラス分けの紙を見て自分の名前を見つける。

B組ね。

俺の通っている高校は普通科のみの進学校でクラスは各学年6クラスのA~F組に分かれる。

そして、二年生から文理に分かれ、A~Cは理系。

D~Fは文系になる。

特に何かしたい事があった訳では無いのだか、単純に数学が得意だった為に理系を選んだのだ。

やりたい事見つけたとして、それが文系の方だとしても、三年になれば理系から文系に移動も出来るしな。


下駄箱で上履きに履き替えたら二階まで階段で登り、右に行く。

階段がある位置を中心に右に三クラス、左に三クラスあり右がA~C組だ。

教室に入ればまた騒がしく、その中を俺は誰かと言葉を交わす事もなく自分の席を見つけて座り、そのまま机に突伏して寝る。


春休みを挟み、クラスが変わったのもあってか、俺の噂については落ち着いたらしい。

それよりも担任誰だろうとかが気になっているみたいだな。

まぁ、俺は寝れればそれでいい。


寝ていたら頭を固い何かで小突かれた。


「黒木。起きろ。始業式始まるから体育館に移動しろ。もう皆行ったぞ。」


顔あげると出席簿持って立っている若い女教師の神山先生が立っていた。


「あ、はい。てか、担任神山先生なんですか?」


「なんか文句あるのか?」


「いや、無いです。」


余談だが、神山先生は27歳独身女教師である。

そう。

よくいそうな残念な美人女教師。

独身である。

因みに、去年は担任ではなかったのだが、何故か生徒指導係なので、俺も何回かお世話になった。


「お前、今なんか余計な事考えてなかったか?」


「いえ、そんな事ないですよ。」


何あなた、相変わらずエスパーなの?

ナチュラルに人の心読むのやめてね。

そして、拳を構えるのもやめてください!


「はぁ、まぁいい。じゃあ行くぞ。定番の長話を聞きにな。」


確かに始業式等の校長とかの話って長いよなー。

けど、先生がそういう事言っちゃっていいんですかね?

まぁ、周りに俺しかいないからか。


神山先生は教室を出て、すたすた先を歩いて行くので俺もその一歩後ろを着いていく。

体育館まで行き中に入るとまだざわざわと騒がしい。

入り口で神山先生はじゃあ私はこっちだからまた後でなとだけ言って教職員の列の方へ行ってしまった。

俺もすぐに自分のクラスの列に並ぶ。

それから案の定長い話やら聞いて解散、教室へと戻った。


「よーし、それじゃあホームルーム始めるぞー。」


始業式が終わって休み時間が終わるなり教室に入って来た神山先生の声で皆席に着く。


「まぁ、もう皆私の事は知ってると思うが、とりあえず、今年このクラスの担任になる神山楓だ。よろしく。」


黒板に自分の名前を書きながらそう言ってクラスを見渡す。


「ふむ。君たちの自己紹介はどうするかね?」


「だいたい分かってるし、もういんじゃないっすかー?」


「確かにー。それより早く終わって欲しいー。」


早く終わって欲しいと言う意見には賛成だが、たった一年でもう皆お互いを知ってるの?

俺全然知らないんだけど。

いや、知りたくもないけどね?

人付き合いなんて面倒なだけだし。


「そうか。では、省くとしよう。じゃあ学級委員決めるぞー。やりたい奴はどうせいないだろうから、推薦していってくれたまえ。」


先生は先生で適当ですね。

にしても学級委員とか、俺には確実に関係ないな。

あ、これフラグとかじゃなくリアルに。

根本的に噂が落ち着いた今俺の存在は認識されてない訳だし、わざわざ絡んでくるような連中もいない。


「えー、誰がいいかなー?」


「とりあえず男子はかずくんっしょ!ほら!かずくんすげーし!!」


「え!?俺がやるのか?俺よりは達也の方がいいんじゃないか?ほら、ムードメーカーだし!」


「えー、永谷くんがするなら私しよっかなー?」


うっわ最後の女うぜぇ。

なんだよその私気になってるから一緒に何か係したいなアピール。

流行んねぇよ。

うぜぇわ。


とまぁ、そんな女は置いておき。

永谷和真と古池達也ね。

永谷もうざいけどな。

なんだよあのリア充モテ男。

イケメンでスポーツ得意とか、さすがに勉強はそこそこしか出来ないらしいが。

アニメのくそイケメンリア充とかアニメだけで充分だっての。

しかも何?何で指名もらっておいてさりげなく人にな擦り付けて拒否ってんの?

爆発しろ!!

あと古池は喋り方どうにかしろ。


その後もぐだぐたと推薦された人間が文句を言い出す始末。


はぁ、決まらなそうだな。

まぁ、俺には関係ないない事なんだが。


「はい、そこまで!全く君たちは。早く帰りたいならさっさと決めないか。決まらないなら私が決めるぞ。」


その言葉で一同'えー!,の声。

ま、グダるよりはましか。


そう言って神山先生は黒板に当たるチョークのカツカツという音を響かせながら、決めていたと言わんばかりにさくっと生徒二人の名前を書いた。


「はぁ、結局俺なのか。」


成る程、まぁ、無難だろうな。

永谷は人望ある上人をまとめるには向いている。

それに対し女子の方は白石理帆か。

白石理帆、結構な有名人だ。

容姿端麗であるし、成績に関しては一年の頃常に学年首位だったと聞く。

わからないくらいの茶色がかった黒髪ロングで、おしとやかなお嬢様な感じだ。

実際、口数は多い方ではないのだろう。

友達もいないようで独りでいるのを見かける。

まぁ、性格に難があるせいかもな。


「さて、この時間でなら異論反論抗議その他諸々受け付けるが、この時間以降での意見は一切受け付けん。何かあるかね?」


クラスメイト達は納得しているようだが、一人真面目に挙手して、意見を言おうとする者がいた。


「先生、私は辞退させていただきます。」


「白石か。何か不満かね?」


「私を委員長にしよう。というのは理解出来ますが、私には欠けている物が多すぎます。それに……私は彼の補佐なんてごめんです。」


あー、そういう所なんだよ。

白石理帆。

確かにお前が優秀なのは全員が理解していると言っても過言では無いだろう。

しかしながら、その傲慢な態度こそが皆の反感を買うのだ。

特に、永谷の補佐を御免被る等、女子を敵に回す発言に等しい。

何故なら永谷和真という男は女子からの人気が高く、男からですら嫉妬などの汚いものより、尊敬という眼差しで、交友関係を求められるような男だからだ。

だからこそ今の発言に反発する女子が出てくる。


「は?あんたさー、何様なの?確かに、委員とかぶっちゃけめんどくさいだろうけどさぁ。その言い方何なの?」


女子の中で最も永谷に近い人物であろう戸松麻衣が声を荒げて白石に反論する。

戸松麻衣も二年では有名だ。

永谷和真に最も近く、親しい女子。

加えて、彼女はトップカーストであり、女王様気質だ。

男子ですら彼女に怯む事がある。

特に俺は超びびってる。


「私は思った事を言ったまでよ。何様かという質問に関してだけれども、私は私でしかないわ。どういう意味での'様,なのかしら?」


うっわ、バチバチじゃん。

古い漫画とかアニメじゃないけど、二人の間になんかそんなんが見えそうな勢いだ。

現に他の連中は黙り込んでしまっている。


「は?意味わかんないし。どの目線で物言ってんの?って話なんだけど?理解できる?」


「あら、ごめんなさいね。貴方とは感覚が違うから、伝わらなかったわ。そうね、'どの目線から,と言われると、少なくとも貴方よりは上だと思うのだけれど?」


「はぁ!?ふざけんな!」


白石が煽るように言ったその言葉に戸松は反応し、ガタッと椅子の音を立てて立ち上がり、そのまま白石の前まで歩いて行く。


「何かしら?少なくとも私なら苛立ってもそんな愚行は起こさないけれど?」


それでまた戸松は歯をくい縛るようにして、何かを我慢している。

恐らく平手打ちでもかまそうかと思っていたのだろうが、白石の言葉でそれを我慢したのだろう。


「あら?叩かないのかしら?てっきり叩かれると思っていたのだけれど?」


「何あんた?ぶたれたいわけ?望まれてるならやってあげるけど?」


「私にそんな趣味はないわよ。貴方の人間性からして、言い返せないなら手をあげると思っていたというだけの話よ。それで、何もする気がないのであれば、早く自分の席に戻ったらどうかしら?」


そこまで聞いた後は歯噛みした後、舌打ちをして戸松は席へと戻っていった。

ようやくクラスの連中は一息つけたようで、はぁというため息がちらほら聞こえてきた。

俺は関係無いから傍観するだけだが、さっさと済まして欲しいので早く争いを止めて欲しかった。

ていうか、神山先生なんで止めないんだよ。


ちらっと神山先生の方を見るとボソッと何か呟いたようだった。

唇の動きと態度から察するに'やれやれ、やっぱりこうなるか,とかそんなところだろう。


「やらないのであれば他の候補者を発てて欲しいのだが、君から誰か推薦人はいるかね?」


「そうですね………。推薦というのであれば戸松さんでしょう。推薦なので本人のやる気は度外視しますが、戸松さんであればクラスをまとめるのには向いているでしょうから。懸念材料があるとすれば、何かの決め事の際に、本人が強すぎて周りが否定意見を言えるかどうかということだけですし。」


正論だな。

戸松はカースト上位だ。

あれの意見に否定を出来る奴がいるとすれば、このクラスでは白石か永谷の二人だけだろうからな。

永谷が上手くやってくれればそれで問題無いが、あいつの場合は皆が楽しめるように。

もっと言えば'皆が幸せになれる,そういう方向に持って行くタイプだ。

だがそれは現実では無理な話だ。

だから永谷は大多数が望む形を取る。

ただそれだけの話でしかない。

大多数が戸松の意見に合わせているのならば、そのまま戸松の意見に流れるだろう。

大多数の本心が戸松と違っていたとしても。

ただまぁ、

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ