表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

盗賊

お城をでてしばらく歩く。

一人旅も、馬車に乗らないのも初めての経験だった。


俺はマジックボックスから庶民むけの布の服とアウトレット品で前に見つけた鉄の剣を装備する。

元勇者だからと言ってミスリルの装備なんて贅沢すぎたのだ。

俺にはこれくらいがちょうどいい。


次の街からは乗り合いの馬車などを使っていこう。

できるだけ知り合いに見つからないように。


予想ではおよそ3泊4日くらいでつくのではないだろうか。

天気は良く、風は気持ちいい。

勇者として育てられていつも何かに追われていた。

こうやってゆっくり散歩するのも気持ちがいい。


自然の中での思い出なんて小さい時に森に置き去りにされてサバイバル訓練だとかムチャブリされたことや、なぜか山の上から「俺は勇者だ! 世界で一番強い男だ!」なんて叫ばさせられた黒歴史を思い出す。


あの頃はそれが正しいことだと思っていたが、今では普通にありえないと思えるくらい無事に成長できたことが嬉しい。


街から離れしばらくすると、なにやら森の中から人の叫び声が聞こえてくる。

もちろん勇者だったら選択肢は一つだ。


俺は何も聞かなかったことにして次の街を目指す。

だって勇者だったら選択肢は助ける1択だろうけど、俺はすでに勇者ではない。

それに布の服にアウトレットの鉄の剣を持った男に助けられる方もきっと嫌だと思う。

考えて見て欲しい。可愛い女の子のピンチには必ず白馬に乗った王子様というのが定番だ。

それを破ってしまったら、助けられる側も楽しい恋が始まらないじゃないか。

ということで、俺が先を急ごうとすると災厄は向こうから走ってやってきた。


「助けてください!」

後ろに手を縛られた女性が俺の方に走ってくる。

俺は道を譲ってあげるが、背中側にまわりこまれる。

何としても俺に助けて欲しいようだ。


「おい兄ちゃん。その女をこっちに渡せ」

盗賊のような男達が5人俺と女性を取り囲む。

困ったな。こんな予定ではなかったのに。

女性はなぜか俺の背中を執拗に盗賊側に押してくる。

勘弁して欲しい。


「女を渡せば命だけは助けてやる。それともそのボロボロの剣で俺たちと戦うっていうのか?」

もちろん戦うつもりはない。

元勇者でしかない俺には盗賊を倒す力なんてないのだ。


「いや、女性は渡す。ただこの女性が……」

そう言った瞬間女性が俺の背中を思いっきり押す。

押された拍子につまずき盗賊Aに頭突きをくらわす。

盗賊Aはそのまま戦闘不能になってしまった。


「てめぇよくもやりやがったな。不意打ちなんて汚いマネしやがって」

盗賊Bが切りかかってくるが盗賊Bの剣に刃こぼれが見える。

こんな剣で切りかかったら折れて危険だ。

盗賊Bの剣をさらっと流し受け、剣が折れそうだと教えようとしたところ、盗賊Bは振り下ろした勢いのまま転び勝手に意識を失う。剣は見事に折れ、盗賊Cの足に刺さる。

だから危ないって教えようとしたのに。

盗賊Dと盗賊Eは俺を挟むように構え、そして二人して切りかかってくる。

これはまずい!

両方から切りかかってきたら、俺が避けたときに同士打ちになってしまう。

そこで盗賊Dの剣を先にかわし勢いをつけさせて地面にめり込ませ、盗賊Eの剣は俺のアウトレットの鉄の剣で受け流す。

あっ軽く受け流すつもりが勢いつけすぎてそのまま盗賊Eの腹部に俺の剣の柄の部分がめり込んでしまった。


申し訳ないことをした。

「大丈夫ですか?」

一応盗賊でも人相手だから気遣いは大事だろう。

声をかけるとなぜか

「ヒィ」

と声をあげて逃げていってしまった。

いったい何がしたかったのだろう。


俺はそのまま両手を縛られていた女性のロープを切り、

「名乗るほどの男じゃありません」

そう言ってその場を後にした。

一度言って見たかっただけなんだけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ