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第9話:トラブルと破壊はお手の物ですから!

「いやいや参ったのう。ランド殿のもう1つの魂の事をすっかり忘れてたわい」

平和だと思っていた学校での生活。

しかし突如、魔物が現れて生徒を襲いだした。ランドは、獣人化をし魔物に向かうが、3年と言うブランクもあり体が言うことを聞かなかった。

一方的にやられてる内に、学校の教師だろうか──狐の魂を持った剣士が魔物と戦い始めた。

ランドは何度も立ち上がり、狐剣士の応戦に向かう。

だが、実はこの2人にはある共通点があった。とても不利な共通点が…。


魔物は凄い力でランドを校舎に投げ飛ばす。彼は何度目だろうか──窓を突き破り廊下の壁にめり込む。

魔物の力を知った狐剣士は、奇妙な構えを取った。何かの踊りの様な──だが、短い踊りが終わると狐剣士の周りを小さな人魂くらいの大きさの炎がいくつも現れた。

狐が古来から持っている、狐火と言うものだ。

普通の狐は、しょっちゅう出すものでは無いが、魂となり情を交した生物に宿る時、ほとんどの魂は本来の力を取り戻す。

「婆ちゃん!ほら、心配なんか無いよ!あの先生が狐火を出した!」

興奮するパメラを尻目に、理事長はまだ不安を隠せない様だった。

「しかしじゃな──ああ言う特殊な能力を使うには大変な精神力を使うのじゃ。1度外せば、2度目は無いじゃろう」

「相手はあんなにデかい魔物よ?外すなんて有り得ないんじゃ無いの?」

確かに、魔物は体が大きく動きも遅い。狐の必殺技は外す方が難しいくらいだった。

「ワシが心配しとるのは、外すんじゃ無くて当たるか当たらないかじゃ」

パメラは婆さんの言っている事が理解出来なかった。当たらないと言うのは外すと言う事では無いのか──それとも他に別な理由が…?

狐剣士は、魔物の攻撃を避けながらも1撃で倒せるくらいの炎を出し続ける。後は、隙を見て放つだけであった。

「ところで婆ちゃん。さっき言ってたランドと狐先生の共通点って何?」

「考えすぎだと良いのじゃが──実はのランド殿はもう1つ能力を持っておるのじゃ」

「もう1つって、傷を癒す力と素早い動きじゃ無いの?」

「いや──あの動きは、本来の聖なる狼の身体能力じゃ。それとは違う別の力じゃ」

「別の力?」

「聖なる狼の雌は、傷を癒す力を持っており──雄は…」

理事長の言葉が終わらない内に、狐剣士は貯まった狐火を魔物に投げつけた。それと同時期くらいに、校舎の開いてる穴からいくつもの水の固まりが魔物に向かって飛んできた。

火の玉と水の玉は、空中で当たると相殺される。

「雄は水の力を操る事が出来るのじゃ。あの2人の共通点は、相性が悪いのじゃ」

理事長は、半泣きになりながら話す。パメラは話を聞きながら唖然としていた。

「嫌な予想は当たるもんじゃな──」

確かに、攻撃は外れなかったが当たる事は無かった。

狐剣士は、何がなんだか分からぬ様子だった。


ランドは血だらけになりながらも、校舎から出てきては不思議そうな顔をしていた。

魔物からしてみれば、嫌だと思っていた攻撃が目の前で消えたので、してやったりだった。

「まさか──学校の危機を乗り越えれると思ったのに、ゆういつ戦える人が相性悪いなんて」

パメラの身体中に絶望が流れた。

しかし、その絶望はすぐに取り祓われた。

ランドは、誰よりも早く攻撃を仕掛けた。

魔物の腕を空中で器用に避けると、腕つたいに顔の前まで移動する。魔物は、余った腕でランドを追い払おうとするが、すかさず狐剣士が腕を受け止めた。

ランドは、腕から魔物の頭の上に飛び乗ると爪を頭から一気に突き刺した。腕は、一瞬で頭の中に収まると残った腕を魔物の眉間にかざすと、勢いよく頭の中の腕を前に押し出した。

魔物の眉間は割れて、ぐちゃぐちゃになった脳味噌が飛び出してきた。

パメラは目を反らす。いくら魔物とは言え、ここまで残酷な殺され方をされると、少し可哀想な気がしてきた。

ランドはそのまま、魔物の肩に飛び降りて首を切り落とした。

そこから次は上空に高くジャンプをすると、魔物の体はゆっくりと地面に倒れた。

狐剣士も理事長もパメラも戦いが終わり、臨戦態勢を解くがランドはまた魔物の体に着地すると再度、腕を体にのめり込ませた。

「オイッ!もう終わったのだぞ!死体を痛ぶるのはよせ!」

狐剣士は、獣人化を解きながらランドに駆け寄った。ランドは、言葉に耳を貸さずに(はらわた)を引きずりだした。

魔物の腹は2つに裂け、真っ赤な血が流れ出した。ランドは、血で染まった魔物の肉を掴むと引きちぎり口に運ぶ。

それは誰も予想だにしなかった行動だった。しかし、ランドにとっては獲物を狩ったのだから食すのは当たり前の行動だった。

肉の味は当初の見た目通りの味だった。臭くて口にするような物では無かったのだ。

ランドは口の中の物を吐き出すと手に持った肉を投げ捨てた。

「婆ちゃん…私、ランドが怖い」

それは、その場にいた皆も同じ気持ちだった。

そこに立っていたのは、いつもお茶らけているランドでは無く、獲物を取った野生の狼そのものだったのだから。

「パメラ…目を反らしちゃいかんよ。アレが狼なのだから──本能なのだから」

突如、空から手を叩く音が聞こえてきた。

校庭に居た全員が、音のなる方へと顔を向けた。

空中に、背中から翼が生えた人間がコチラを見下ろしていた。

「いやー愉快愉快!なんとか危機を乗り越えて、我がペットを倒すなんて」

翼人間は笑いながら拍手を辞めなかった。

「誰だ貴様は!」

狐先生が叫んだ。

「初めまして──と言いたい所だけど、狼の君は会うのは2回目だよね」

翼人間は、ランドに視線を向けた。

「誰だ!俺はお前を知らない!」

ランドは叫ぶ。

「おや?忘れちゃったのかな?君は昔、僕に会った事があるハズだったよ。そして、君と僕は…」

「話はそこまでにしておけ!」

いつの間にか現れたのか、翼人間の隣にもう1人翼の生えた人間が飛んでいた。

「ごめんごめん。あっ、そうそう狼君!僕達、君の大切な物をこれから奪いに行く所なんだよ。何だか分かる?」

翼人間はランドに問いかける。

「彼女、可愛いね。クルシスランドの王女様なんだよね?僕ら、今から彼女を殺しに行くからさ」

翼人間はニコニコしながらランドに手をふった。

「貴様ら!プリムに手を出すんじゃねぇ!」

ランドは手を交差に振ると、空気を切り裂き斬撃が翼人間達を襲うが、目に見える物じゃ無いが翼人間はひらりと斬撃をかわした。

「あははは!怖い怖い!君はゆっくりと学園生活してなよ!僕達に追いつける訳なんて無いんだからさ!」

翼人間達は、空中で旋回すると空を飛んで行く。

「待ちやがれ!」

「待つのじゃ!」

ランドが追いかけようとするが、理事長がそれを阻止する。

「ランド殿!頭を冷やしなされ!今、追いかけても追いつくのは不可能じゃ!」

「邪魔をするな!俺のスピードなら一気にクルシスランドまで帰れるんだ!」

「ランド殿!それは無理じゃ!クルシスランドは、丁度この国の正反対の場所にあるのじゃ。海を越えなければ帰える事は出来ないぞ」

ランドは言っている意味が分からなかった。海を越える?それは何の事だ?

「やはり、ランド殿は気づいておられなかったのか──。ランド殿は、今のクルシスランドの王女は誰か知っておるか?」

「プリムだろ?」

「プリム様は、王宮から追放されたのじゃ──丁度、3年前にのう」

「何──?」

「つまり、ランド殿は3年間の情報が入ってこなかった事になる。そして、3年前に出来たこの島の事も知っているハズが無いのじゃな」

「プリムが追放されたと同時にこの島が出来た──!?と言う事は」

「そうじゃ──全く関係は無いんじゃがの」

パメラは辺りの空気が冷たくなるのを、肌でピリピリと感じる。

「とりあえず、今から追いかけても追いつけないと言うことだろ?」

「そうじゃ──。だから、今日は休んで明日ワシが船を用意するからそれでクルシスランドを目指せば良いと思うのじゃが」

ランドの体から緊張が抜ける。緊張が抜けると一気に疲れが出てきた。

「そうだな──ありがとうな婆さん。頭、冷えたよ」

疲れた顔をし、欠伸をすると獣人化を解く。

「ランド殿から話を聞くのは、生徒達にとても良い経験になったのじゃが──大切な人の命には代えられないからの」

パメラはコクコクと頷いた。

「それとランド殿!学校では、婆さんじゃなくて理事長と呼びなせえ!」

ビシッとランドに指を突き立てた。

「婆さん──今さらかよ……」

表の騒ぎが静かになったので、生徒達がひょこひょこと校舎に帰って行く。

しかし、数秒後には悲鳴が聞こえてきた。

「あっ……そう言えば俺、校舎を無駄に破壊したんだった──」

生徒達の悲鳴と一緒に、理事長の嘆きの悲鳴が聞こえてきた。


第1章完と言った感じに、第2章に続きます。最後なので、かなりの長編にしようとしています。

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