最終話:狼
「だから何で今さらよ!」
プリムは机を殴る。
今、プリムの前には城の教育係と護衛が立っていた。
「プリム王女様!あの若者とは、身分が違いますのじゃ!只でさえ、私達が知らぬ間に小汚ない犬の魂まで宿してしまい…もう、王国としては彼らとの縁を切り城に留まって欲しいと願うばかりで」
「だから!なんで、隣国の王子と結婚しなきゃいけないの!って言ってるのよ!」
「ですから、今言った通りで…」
プリムは思った。今、獣人化をしてこの場から逃げてしまえばどんなに楽な事か…
でも、それをしてしまえば何も力を持たないルナやソル達に迷惑をかけてしまう。プリムは考える…
「じゃあ、こうしましょうよ!」
プリムの案に、皆不安を覚えたのだが獣人化して喉元に爪を突き立てられたのでしぶしぶ首を縦に振るのだった。
「と言うわけで!分かったランド?」
いつもBARのいつもの席で、飯をがっつくランドにプリムは話し出した。
「無理!俺、字読めないし!」
「無理じゃないわよ!やりなさい!」
「無理だって!何で、わざわざそんな事をしなきゃいけないんだよ!」
「隣国の王子を黙らせる為よ!あと、パパとママを納得させる為にも!」
拳を固く握りしめ立ち上がる。
「第一、俺は約束があるし」
「約束?」
「ああ。パメラの所に帰らなきゃいけないんだ」
その言葉に、プリムの頭の中に雷が落ちた。
「帰るって何でよ!」
「約束したんだ。無事に終わったら、パメラの家に行くってな」
「何で?」
「やり残した事があるんだ(学校の先生)」
「や…やり残した事ですって!」
「ああ。アイツらも待ってるだろうし(生徒達)」
「アイツら…ってまさか子供とか?」
「うんまぁ…(ランドから見て)子供だな」
ま…まさかの3年と言う月日で、ランドは1人立ちをしていたとは…
「いつから?(パメラと)」
「俺の意識が回復して次の日からかな!(先生をやりだしたのはな)」
「嘘でしょ?(パメラの事)」
「本当だよ!結構、楽しいんだよ(先生の事)」
「絶対に嘘よ!そんな身ぶりを見せなかったじゃない!」
「当たり前だろ?恥ずかしいじゃないかよ(まさか遠くの地で俺が人に物を教えてるなんてな)」
照れるランド。
そこに運悪くパメラが入ってきた。
「ランドー私、そろそろ帰るね!何か、いっぱい怒られそうだけどね」
苦笑いをするパメラ。
「俺も行くよ。婆さんに(終ったと)挨拶したいし…」
「挨拶!えっ!?もうそんな所まで行ってるの?」
「だから、終わったらパメラの家に行かなきゃ行けないんだって!約束してるんだよ。パメラの婆さんとな(半年間、教師をするということを)」
「約束って何?」
力が抜け、近くにいたランドは遠くの世界の人間になってしまった事に脱力感を覚えたプリムは、冥土の土産にパメラに聞いてみた。
「ランドは、私の学校で教師をするのよ。半年間だけどね!」
パメラはニコリと答えた。
「そうよね…3年もしたら私なんて忘れ…教師!?」
「笑うなよ…」
少し照れ臭そうにランドが喋る。
「じゃあ…約束って教師をすることだったのね!なーんだ」
急に元気が舞い戻る。
「って早く言いなさいよ!」
プリムの怒り+狼の力+ロンゾの力が合わさった拳がランドを貫いた。
「まったくもぅ…心配して損しちゃったじゃない!」
パメラは愛想笑いしか出来なかった。
「そうそう!忘れる所だったわ!ねぇパメラも、エキストラとして参加してくれない?帰るのは、その後でも良いでしょ?」
とにかく、王女の頼みに嫌とは言えず只首を縦に振ることしか出来ないパメラであった。
「じゃあ、コレ台本だから…明日までにランドに覚えさせといてね!じゃねっ」
足早にBARを出るプリム。王女の頼みには嫌と言えないパメラであったが、それだけは嫌だった。字もまともに書けない人間に、1日で台本を覚えさせるなんて無理な話である。パメラは辺りを見回した。
「ソフィア!居るんでしょ?出てきなさいよ!」
しかし、周りからは物音1つ聞こえない…
「ソフィアちゃんなら、さっきまで窓の外に居たんだけどね…いつの間にか居なくなってたよ」
マスターが口を開いた。
(逃げたか…)
パメラは肩を落とした。いや、そんな暇は無いとランドの元に近づいた。
「ランド!起きて!とにかく、今日は絶対に寝かせないからね!」
泡を吹き気絶しているランドを掴むとズルズルと引きづって行く。
外に出ると遠くの空を見上げた。
「お婆ちゃん…元気ですか?私は元気です。旅に出て思いました。聖なる狼の家系って、関わっちゃいけないんだって…」
遠くの空は少し赤みがかかっていた。この人に教える時間は残り少ないと他に、私の命もあと僅かと…しみじみ思った。
狼LAST STORY 君の待つ町まで…
fin
長かった…途中で訳が分からなくなった(笑)