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第26話:君のいる町まで…

「よし…今日こそは!」

パメラは息を潜め気配を消して部屋の扉を開けた。

昨日は夜遅くまで、みんなで話していたりして騒いでいた。こんな朝早くに起きて人の顔に落書きをされようなんて誰も思わないだろう。まだ外は、うす暗く陽も昇っていない。

パメラは今まさに、ランドの寝顔に落書きをしようとしている最中なのだ。

音を立てずに慎重にベッドに近づいていく。ペンも油性にし、フタも開けている。

(ランド発見!)

心の中で声を出すと、ランドの顔に真・花の楽園を書き出した。不思議には思わなかった。こんなに楽に行くとは…

絵が完成されるとパメラはまた静かに部屋を出ていった。


そして…日が昇る


パメラは目覚めの気分は最高であった。こんなに気分の良い朝は初めてかもしれなかった。階段を降りキッチンへと向かう。キッチンからは、いいにおいが漂って来ていた。

扉を開けると、ルナが朝ごはんを作っていた。その後ろで、ソフィアが大笑いをしていた。多分、朝見た兄の顔がスゴい事になっていたからであろう。パメラはソフィアに近づいた。

「どう?最高でしょ?」

「アレはパメラさんがやったの?もう最高!良い気味だね!」

笑い過ぎて涙目になってるソフィア

そこまで笑ってもらえるなら、やった甲斐があったなとパメラは思った。

パメラ続いてランドが少し遅れて部屋に入ってきた。

「おーっす…おはよう」

少し寝ぼけた感じでフラフラしていた

「おはようお兄ちゃん!プリムさんの顔を見た?面白いよね!」

『プリム』と言う名を聞いて少し身じろいをした。確か、落書きをしたのはランドの顔だったハズなのだが。

「俺が、夜作ったダミーに引っかかった奴がいるんだな」

「だ…ダミー?」

パメラは思いきって聞いてみた。ランドは頷くと、机の上にあった水をひっくり返すと、自分の頭だけ作った。

(やられたー!)

ランドだと思って落書きをしたつもりだったが、実際はランドに見せられたプリムだったのだ。パメラは、この国の王女に落書きをしていたのだった。

「プリムの顔が見えないけど、どうしたんだ?」

見栄すいた嘘をつく。

「プリム様は…朝の支度が出来てないのよ…私、手伝ってくる!」

来た道を駆け足で戻っていくパメラ

「ソフィア。悪いんだけど、パメラを邪魔しに行ってくれないか?」

えーっ!とぶーたれるソフィアだったが、ランドの後ろでルナが、お願い!と言う格好をしていたので、しぶしぶ階段を登って行った。

ソフィアの姿を最後まで見送ると、ランドは静かに外に向かった。最後の決戦の時…その言葉を強く噛み締める。

「ランド。夕飯までには戻ってきなさいよ」

ランドは何も言わずに頷くと、約束の場所まで歩き出した。

約束の場所へは、町を抜けて更に進めば見えてくる。この国の城!パンドラ城が…

3年前と同じように、キッシュは1人で待っていた。

「遅せーぞランド」

キッシュは笑っていた。つられてランドも笑う。

「昔も今も変わらないなお互いに」

2人はお互いの姿を見た。3年前と何ひとつ変わらない姿。

「そうだな。2人して命が止まっていたからな」

「ああ…変わらないな俺達」

ランドは少しうつ向くとすぐに前を見た。今までと違い本気の顔になっている。

「ランド!これで最後だからな!決着をつけようぜ…じゃなかったな」

急に肩の力が抜けた。

「お前とやり合う前に、話があるんだ。俺と組まないか?」

ランドは笑った。今さらそんな気は無かったのだから。

「ただ、ちょっとやってみた事があってな」

キッシュは指をパチンッと鳴らすと地面の中から何かが現れた。

カマキリとクワガタとカブトムシとヘラクレスオオカブト…

「スゴいだろ?死者まで操作出来るんだぜ?このグリムドラゴンの力は」

1人除いて、苦戦をしいられたキッシュの兄弟達…

「お前が俺と組めば、クルシスやロクサス…まだ会った事が無いロンゾまで生き返らせてやるぜ?」

ニヤリと笑う。ランドは正直迷っていた。

人間の世界で生きるのでは無く、家族で静かに暮らす事もできる。

「どうだ?ランド…お前は父親と言うものを知らないんだろ?母には会いたく無いか?兄と一緒に狩りが出来るぞ?」

沈黙が流れた。

「俺、父さんに会ってみたい!母さんや兄さんと一緒に、狩りに出たり毎日を過ごしたい!だけど…俺は、もう人間になっちゃったんだ…だから、俺は今の仲間達を見捨てる訳にはいかないんだ!」

獣人化をすると、斬撃を繰り出した。見えない力が、周りの草を切り裂きながらキッシュに向かってきた。

「残念だよランド…」

キッシュも獣人化を始めた。黒く大きなドラゴンが姿を現した。

ランドの繰り出した斬撃は、カマキリに当たりバラバラに切り刻まれる。

「ガライは弱いなやっぱりな!」

カブトムシがランドを襲う。ランドは半回転する形でかわすと、カブトムシの頭をジャンプ台にしてクワガタを襲って行く。

キッシュは大きく口を開けると、火炎を吐き出した。空中では身動き取れないと思い、クワガタの角を掴むと火炎の中に投げ飛ばした。

何故か爆発が起こる。

今度は、ランドの着地地点にヘラクレスオオカブトがいた。オオカブトは、ランドを空中に投げ飛ばすと地面にいたカブトムシが変な動きをしている。

妙な殺気を覚え、どうにか防ぐように構えを取った時だった。

「当たれーー!」

聞いたことが無い少年の声…と同時に、カブトムシの顔に石がめり込んでいた。

ランドはそのすきに、カブトムシを潰す。

その余韻に浸る暇も無く、オオカブトが襲ってきた。

虫だけに虫の息だったカブトムシがランドの足を掴んだ。身動きが取れない…オオカブトは角を突きだし突進してくる。

殺られる!と思った瞬間だった…

「勝ってくれ!」

また少年の声…そんな時奇跡が起こった。カブトムシの手が一瞬だけ離れると、ランドは抜け出しカブトムシを思いっきり蹴飛ばした。カブトムシは、宙を飛びオオカブトの角の餌食になる。

ランドはその隙に、斬撃を飛ばす。オオカブトは見事無惨に、切り刻まれた。

「さてと残りは…」

キッシュを睨んだ。

キッシュもランドを睨む。

「これで終わりだ!」

ランドの先制攻撃!と思いきやキッシュは体を回転させ長い尻尾を振り回す。ランドは避けると、尻尾をつたって体の位置までやってくると心臓部めがけてパンチを繰り出す。

キッシュは首を半回転させるとランドを噛みつこうとするが、ランドは一回キッシュの背中で着地し顎にサマーソルトを繰り出す。

キッシュの体が、宙に浮かぶとランドは、尻尾を掴みキッシュを思いっきり地面に叩きつけた。

ランドは寝ているキッシュを爪で切り刻もうと飛び出した時であった。今までそこにあったキッシュの姿が無い…

「やっぱり、体が大きいだけじゃ勝てないな」

ランドの後ろにキッシュの姿があった。だが、今までのキッシュとは違い、ランドと同じ人間の様な姿をしたドラゴンになっていた。

ランドは後ろ回し蹴りを繰り出す。キッシュはかわし、ランドの頭を持つと地面に叩きつける。ランドはその腕を掴み、キッシュの腹を蹴る…キッシュは、くの字に体が折れ曲がるが、同時に口から火炎を吐き出した。

砂ぼこりが舞い、腕を解放され離れるキッシュの体に無数の傷が表れた。

「チッ…」

キッシュは舌打ちをし、膝をついた。砂ぼこりが晴れてくると、片腕の無いランドが現れた。

「くっくっくっ…肉体の崩壊が始まったか」

だがそれと同時に、キッシュの腕も崩れ落ちた。

「キッシュ…お前だって崩壊してるじゃ無いか…」

「ああ…ドラゴン2つの“魂”なんか無理があったんだな」

キッシュは笑っていた。

「この一撃で、最後になるだろうが…どうするんだランド?俺を倒しても、また復活しちまうぜ?」

「さぁな…何とかなるだろう」

ランドも笑っていた

「そうか…行くぞ!」





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