第22話:そう言えば、第6話と第7話が存在しなかった(笑)
「あっ!そうだ!」
プリムは急に立ち止まった。何か思い出した様だ。
「私、急に城に戻って大丈夫かな…話の最初の方に変な設定をしちゃったのよね」
急に止まったプリムを避けつつルナは聞き返す。
「設定?」
「うん。後の事を考えないで第5話か6話くらいに、城を追い出された的な事になってるの」
「大丈夫でしょ?今は22話よ。そんな昔の事なんて誰も覚えて無いわ」
しばし沈黙…
「そうね。去年くらいに書いた事だしそんな設定無かった事にしましょ」
無かった事にしましょう!本当に…読み返さないで下さいね(笑)
話も一段落?着いた所で、プリム達はまた走り出した。――のだが、
「あ…」
また急に止まるプリムに今度は避けきれず、ルナは背中に思いっ切りぶつかった。
「痛たたた…プリムちゃん今度はどうしたの?」
背中にルナがぶつかったと言うのに、プリムは平然と立っていた。何か考え込んでいる様だ。
「ランドとソフィアが、おとなしく捕まってると思いますか?」
プリムの言葉にハッと息を止めた。
「確かにね、あの2人の事だもん。きっと抜け出してるわね」
「それに…一緒に居た女の子も気になる!」
「そうねー…ランドの彼女かもしれないもんね」
笑い事の様にルナは話すのだが、プリムには冗談に聞こえなかった。
「か…彼女ですか?」
「ほら、ウチの息子ってソルやルルと違ってなかなか容姿が良いじゃない?結構モテるし」
「彼女…彼女?」
最早、ルナの話なんか聞いてはいなかった。だけども、耳には自然に入ってくる。
「3年も姿を消してたのよ?何か理由が合って一緒に居るのよね?私に会わせたかったとか?」
「それはもしや、結婚するとか親に会って欲しいとか…」
「うん。でも、普通は逆だけどね……でも、どうしてランドは生き返る事ができたのかしらね…。あっ!変な意味じゃなくて、生きてたのは嬉しいんだけど、でも私あの子が死んじゃう瞬間を見た訳だし」
「えっ?“死ぬ瞬間”を見たんですか?」
「死ぬ瞬間ってよりも、死ぬ行為をね」
「って言うと?」
「あのキッシュって人を倒す手段として、あの人が宿していた魂を自分に取り込んだのよ」
「魂を取り込む?」
「そうね。グリムドラゴンの能力が“完全なる命”らしくてね?何度倒しても再生するらしいのよ」
「完全なる命……って言うことは、ランドはその力を使って再生したんじゃ無いですか?」
「うん……でも、魂を4つも宿すと魂が反発して肉体が滅びるとか言ってたわ。だから、もし再生しても魂の反発で、肉体が崩れてしまうと思うのよ」
「崩れる前に、肉体を治したとか?狼の能力を使って」
「もしくは、肉体が崩れた時に宿していた魂が抜けちゃったとか?そうすれば、長い年月を得て少しづつ傷を治せるんじゃないの?」
「まさか、そんな奇跡が…」
と言った所でプリムは息を止めた。
「プリムちゃんも気づいたと思うんだけど、奇跡が起こったのよ。だから、ランドは生きているの…キッシュもね」
誰もが思いたくもなかった事なのだが、そう思うしか無かった。
「経緯はこうよ。ランドはキッシュの魂を体に宿し1度死んでしまったの…でも、肉体が滅びる時に体に宿した魂が体から出てしまった。ランドは、長い年月をかけて無意識に自分の傷を治したのよ…それが奇跡なのよ。ただ、抜け出した魂もまた復活を遂げてしまった。それが…」
「キングスとシュルツ?」
「そう…記憶を奪ったのはキングス。2人の名前を合わせると『Kingssyurutu』でちょっと強引に変えると?」
「キッシュ…!!」
途端に頭上から羽音が聞こえてきた。キングスとシュルツだ。2人は、プリムの前に降りてきた。
「王女様!こんな所にいたのですか」
キングスは頭を下げた。どうやら、2人はまだ洗脳が解けていないものだと思っているらしい。
プリムは視線だけをルナに投げた。ルナは小さく頷いた。
「ええ…ほらっあの〜…罪人の様子でも見に行こうかなって思って」
「罪人の様子ですか?王女様が見に行くような輩ではありませんぞ」
「し…知っている!だけど、心配なのよ!ほら、逃げ出さないかとか」
「そうですか…でも残念ながらその心配は無用でございます」
「えっ?まだ――じゃなくて、逃げ出していないのか?」
まだ逃げ出していない事に少しホッとした。
「いえ…先程、一緒にいた娘は無関係と言うことで解放しましたが、他2名の罪人は刑を執行しました。今、町の広場にて公開しております」
“刑を執行”――その言葉を頭の中で繰り返した。「抵抗はしてましたね。結構、苦労しましたが最終的におとなしくなり斬首刑に罰しました」
ハッハッハッと笑いながら、シュルツはプリムの肩を叩いた。
ランドに限ってそんな事は無いと思っていた。だけど、現実はそうなってしまった。色々な気持ちが頭の中を回る。
「どうしました?王女様?」
自分でもどんな表情をしていたのか分からない…だが、不信に思ったキングスはプリムに声をかけた。
「えっ?あっ…そうか!ご苦労であった」
ここで、記憶が戻った事をバレる訳にはいかないと演技を続けるのだが、心の中では演技を続ける事が出来なかった。
「では、私たちはその罪人の惨め…惨めな姿を見に行くとするか」
プリムは顔を伏せた。言葉を続ける度に涙が溢れそうになる。
これで何回目だろう…夢であって欲しいと思ったのは。
ランドが、死にかけた時…
ランドが、居なくなってしまった時…
いつも思ってしまう。目が覚めて起きると何も無かったの様に隣にいて、何事も無かったかの様に生活をする。
ランドはそういうのが得意な奴だ。平気でする。
でも、現実はそうはいかなかった。
何度目が覚めても、彼は居なかった。3年もの間、彼の顔も声も聞いていない。
やっと――やっと、出会えた時は、記憶を奪われていて…記憶が蘇ると、彼はまた居なくなってしまった。もう…どこにも。
「さぁ、王女様と平民の方。私達の背に乗り広場まで連れて行きますよ」
シュルツが手をさしのべた。プリムは顔を伏せたまま手を握る。
そして、キングスが空に向かって放叫をすると、キングスの体はどんどん大きくなり巨大な黒龍が姿を現した。
シュルツは翼を広げ、プリムを黒龍の背中に乗せると、続いてルナも乗せる。
黒龍は翼を広げ空に飛びたった。凄い風圧に、プリムは吹き飛ばされそうになる。必死に背中を掴もうとするが黒く輝く鱗がそれを阻むのだが、苦労しながら翼の方まではいずり翼の根本を掴む。
今度は、シュルツの雄叫びが聞こえると隣に、ザリガニとカエルを足して2で割った様な色をした緑龍も並んで空を飛んでいた。
「気持ち悪い色の龍ね…」
プリムは毒ついた。だが、確信は出来た。間違いなくこの2人は、キッシュの魂が離ればなれになった個別の生物達だと。
「もあぁぁぁぁー!!」
プリムは不意をつかれた様に、声がする方向を見た。気づかなかった…隣に誰かが“立っていた”
“立っていた”――この風圧を物にもしないで、龍の背中に立っていたのだ。
耳はとんがっており、体は人間の数倍の大きさ――何故か、それよりも大きな葉っぱを持っていた。
「トドロ!プリムちゃんトドロよ!」
尻尾の先を必死に掴むルナが叫んだ。
「トドロ?……って、ルナお母様大丈夫ですか?」
「私は、大丈夫だと思うのよね」
落ち着いた声とは裏腹に、必死に尻尾にしがみつくルナ。
プリムはトドロを見た。
トドロもコッチを見ていた。プリムは寒気を覚えた。世の中にこんな生物がいたとは知らなかった。
「ぬばぁぁぁぁぁ!」
また声がする。
今度は、黒龍の頭の上に、何だかよく分からない生物がいた。その生物は、馬車の様な形をしていて頭には看板が刺さっていた。
看板には『ルナ』と書かれている。
「もあぁぁぁぁ!」
「ぬばぁぁぁぁぁ!」
2人の生物が一緒に鳴くと、今まで必死に掴まっていたルナが後方へ吹き飛ばされていった。
「えええっ!ちょっとお母様ぁぁぁ!」
プリムが叫ぶと同時に、トドロも吹き飛ばされた。すると、何だか分からない生物がそれを追い掛けて行ってしまう。
残されたプリムは、何が何だか分からなかった。理解したくも無かった。
この世界はどうなっているんだろうか…そのうち、踊りが得意なネズミでも現れるんじゃないかなとプリムは思った。
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時は、かなり遡る…




