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第18話:第3章に途中から突拍子も無く入ります。

「ふんふんふふふふん♪」

女が鼻唄を歌いながら食事の用意をしていた。

鍋には、コトコトと美味しそうなシチューが湯気を立てている。

トントントン…と、軽快なリズムに乗る包丁の音がなる。

その脇で、他の男と女が焚き火をしながら料理が出来るのを待っていた。やがて料理が出来たのか、シチューを皿に盛り包丁で切り刻んでいたものをその上に乗せる。

料理が運ばれてきて男は腹が減っていたのかガツガツと食べ出した。

料理を作っていた女もガツガツと食べ始める。だが、もう1人の女は気分が悪いのかなかなか食べようとはしなかった。

男は、綺麗にたいあげると2杯3杯目と突入する。数分後には、綺麗に鍋の中が無くなったのだが、気分が悪い女は一向に食べようとはしなかった。その内、皿を地面に置くと立ち上がる。

「もう無理!毎日毎日!こんなの食べられないわよ!」

カツンッと爪先がシチューの入った皿に当たると皿はひっくり返り中身が飛び出した。

シチューの中からは、カエルの足とかネズミの尻尾とかが入っていた。

「イジメでしょ?毎日毎日!何でこんな物を入れるのよ!」

カチャカチャと下に落ちた皿を拾いながらもう1人の女は怒鳴る。

「嫌なら食べなきゃいいでしょ!せっかく私が、食べやすい様にしてるのに!」

「食べやすい様にしてるのは分かるけど!何で、具材がカエルとかトカゲなのよ!しかも、生だしっ!」

と女は、まな板の上を指さした。まな板の上には、カエルの内臓やら何やらが広がっていた。

「隠し味よ!」

「隠れて無いのよ!」

ギャアギャアと騒ぐ女達をよそに、男はため息をつくと空を見上げた。

空には真ん丸の月が浮いている。その月に手を伸ばして握ろうとするが、さすがに届かなかった。

「みんな元気かなぁ…」

男が呟いた。

「元気なんか出る訳無いじゃない!」

女が叫ぶのが聞こえる。

「そうだよな…みんな捕まっちゃってるんだもんな」

「捕まえるの大変だったんだから!」

妙に会話がリンクするのだが、男は1人で会話をし始めた。

「ソフィア!みんなを捕まえるのを手伝ったのか!?」

「そうよ!」

料理を作っていた女――ソフィアは答えた。

「私が手伝わなかったのは、食べたくなかったからよ!」

喧嘩をする女――パメラは答えた。

「食べる?パメラは、みんなを食べるつもりだったのか!」

「やっと本性を現したわね雌狐が!」

「狐!?パメラは狐の魂を持ってたのか」

「当たり前でしょ!」

2人はランドの言葉が耳に入っていなかった。そうとも知らずに、ランドは話を続ける。

「今度から捕まえた獲物はお兄ちゃんに全部食べてもらうからっ!」

「えっ!?俺が?人間の肉は結構不味いぞ…」

過去に1度と言わず、人間を食べた事のある人間。(※狼〜Before story〜参照)

「ランドは人間なの!アンタ達みたいな小汚い狼じゃ無いのよ!ネズミなんか食べさせないでよね!」

「小汚いって…」

ソフィアの言葉が止まる。パメラは少し言い過ぎたと思ったが、その後悔は遅かった。

「小汚いって…私だって、人間の女の子みたいに綺麗になれないのは分かってるけど…でも、毎日川で行水したりしてるのに…」

1つ1つの言葉が出る度に、目からポツポツと涙が落ちる。

「あっ――違うのよ。ほらっ!お兄さんとかボロボロだし、なんか印象的に…ねっ?」

「お兄ちゃんはボロボロだけど、獣人化したら綺麗な金色の毛並してるよ…だけど、私は狼に戻っても獣人化しても、白くて小汚い毛並なんだ」

「そ――そんな事無いわよ…ね?ランド?」

後先考えずに出した言葉がこんな結果になるとは…パメラはチラチラとランドを見て答えを求めるのだが、ランドは何も答えようとはしなかった。

「わぁぁぁん!お兄ちゃーん!人間がいじめるよー!」

ソフィアは泣きながらランドに抱きついた。

「ソフィアちゃん…ゴメンね」

ソフィアに話かけようとするパメラなのだが、それよりも何よりもソフィアに抱きつかれて呼吸困難になっているランドの方が気になる。

「ソフィアちゃん…お兄ちゃんが大変な事になってるわよ」

必至に引き離そうとしているランド。しかし、ソフィアの力は段々と強くなっていく。

「ソフィア…頼むから離れてくれ……」

「ヤダ!」

ミシミシッと何かがヒビ割れる音が聞こえる。

「パメラ…後を……頼んだ」

どういう原理だか分からないが、ランドが段々と白くなっていく。

「お兄ちゃん!一生離さないから!」

ソフィアの叫びも聞こえないくらい白くなるランドの耳に、木霊となって響いていった……。



――第3章――「この山を越えれば――見えてきた!クルシスランドよ!」

早大な草原の向こうには、綺麗なお城とその近くに大きな町がある。

ソフィアは山の頂上で背伸びをした。

「ちょっと待って!何なの?この設定は…」

ソフィアの後ろをズルズルと山を登ってくるパメラは呟いた。何故か、棺桶を引きずっている。

「お兄ちゃん…早く教会で生きかえさなきゃね」

ソフィアは振り向き笑顔で話す。

「だから、意味が分からないわよ!何なのよコレは!何でランドの入った棺桶を引きずりながら山を越えなきゃいけないの!」

山の高度と疲労のせいか、上手く呼吸が出来ない。

「だって、こう言う冒険物って棺桶が必要でしょ?」

どういう経路で間違いを覚えたのか誰も分からないが、ソフィアは不思議そうに聞いた。

「教会で生きかえらせるって、ドコの世界の設定よ!ランド、棺桶の中で寝息を立ててるわよ」

「ドコの世界って決まってるでしょ?ドラク…」

「あああああ!もう良いから!著作権に引っ掛かるから!」

ソフィアの言葉を遮るかの様にパメラは叫んだ。


返事が無い…ただの屍のようだ


「だから!やめてって言ってるでしょ!」

再度、パメラが叫んだ。

「もぉーだって、せっかくクルシスランドに着いたのに、お兄ちゃん起きないんだもん!つまんない!」

むくれるソフィア。そんなソフィアを見てパメラは呆れ顔になった。

「まったく――あれ?町の外れに小さな家があるわよ?」

一呼吸置いてからパメラは、町の外れにある小さめの家を指さした。

「あっアレ?お兄ちゃんの家」

「そうなんだぁ〜ランドの家――家っ!?」

そっけなく話すソフィアの言葉に若干惑わされる。

「へぇ〜ランドが産まれた場所かぁ」

とマジマジと家を見つめた。

「ううん違うよ。お兄ちゃんが産まれた地は、もっと別な所にあるよ。アソコは……って!あれ?ルナお母さんが普通に生活してる!」

ソフィアの記憶には、ランドの話をしている時に、キングスとシュルツに襲われたハズなのだが…遠い家の中から人影が現れると、洗濯物を干す何かが見えた。

「よく分かるわね?こんな遠くから」

「うん。人間と違って鼻が良いんだもん」

またもや、そっけなく答えるソフィア。

すると後ろの棺桶から、何かがぶつかる音が聞こえた。

「あっ…お兄ちゃん起きちゃった」

棺桶に打ちつけられた釘がピュンピュンと宙を舞う。

「最低な妹よね…お兄さんが寝てる隙に棺桶に入れて釘を打つなんて」

「さすがに、お兄ちゃんだって気づくわよ。ご飯の中に入れた無臭の睡眠薬がこの作戦の鍵だったわけよ」

フフンッと鼻で笑う。

「それが最低だって言うのよ」

パメラはため息をついた。

「ほらほら、お兄ちゃんも起きだしちゃった事だし!先に行こっ!」

ニコニコと人の話も聞かない無邪気な笑顔でパメラの手を引いた。

「ソフィア…分かってると思うけど…」

と途中で言葉を止めた。

人間の力では有り得ないくらいの力で引き寄せられパメラは叫んだ。

「こっちは崖ぇぇぇぇ!」

なす統べもなくただ落ちていくパメラ。

心の底から出る叫びだけが、クルシスランドに響いていった。


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