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第17話:ところで、コウモリ豚はどうなったんだろう…。

「いやいやいや…本当に助かりましたよ」

倒れこんで来た少年の1人がお茶をすする。

少年のうちの1人は、赤い髪をしていて少しやんちゃっぽい感じがした。もう1人の方は、青い髪をしておとなしそうにしている。

「本当、腹が減っちゃって行き倒れになっちゃう寸前で、こんな美味しい料理が食べれて光栄ですよ」

赤髪の少年はかんぱつ入れずに喋る。

「アナタ達は、ドコに行くつもりだったの?」

ルナは、青髪の少年にお茶を注ぎながら聞いた。

「僕達ね、クルシスランドに行く途中だったんですよ!」

「クルシスランド?ってここよ」

プリムは赤髪の少年の隣に座る。

「えええっ!本当ですか?じゃあ、ここにクルシスランドの王女様に居るんだね!」

「兄さん…ここには居ないよ。王宮に行かなきゃ会えないって」

お茶をすすりながら、青髪の少年が言う。

プリムは、見知らぬ少年達には身分を明かさない様にと周りの連中にアイコンタクトを投げる。周りの連中も、それに気づいたか頷いた。

「この国の王女様に何の用なの?」

プリムは聞いた。

「いやー機密事項なんですけどね、実は…」

「兄さん!喋っちゃ駄目だ!ランドさんに言われてるだろ?誰にも話すなって」

青髪の少年が、赤髪の少年の口を塞いだ。それよりも何よりも、青髪の少年から出た名前“ランド”確かにそう言った気がする。

「ちょっと待って――今、何て言ったの?」

「あっ…スイマセン。秘密事項なんで話す事は出来ないんですよ」

「そうだった。2週間前にランドの兄さんから言われてたのを忘れてたよ!狼の“魂”の事でさ」

「兄さん…!」

強引に口を塞ごうとする青髪の少年を振り払い赤髪の少年は喋りまくる。

「“2週間前”…“ランド”…“狼の魂”…ランドは生きてるって事?」

その単語を聞きプリムは立ち上がって赤髪の少年の両肩を掴んだ。

「へっ?ランドの兄さんならピンピンしてるぜ?なあ、シュルツ」

シュルツと呼ばれた青髪の少年は、コクンと頷いた。「キングス兄さん…王女様に話すまで、ランド兄さんから言われた事を言っちゃ駄目だよ…」

「あっそうか悪い悪い」

キングスと呼ばれた赤髪の少年は、本当に悪びれた様子で謝る。

「ねえ?私がこの国の王女――プリムなんだけど…」

相手はランドを知っている。それだけで理由は十分だった。

「ええ?本当かな?そんな事を言って、ランドの兄さんから聞いた話を聞きたいだけなんじゃ無いの?」

口は軽いのだが、なんとも疑り深いキングス。

「そんな事無いよ!ほらコレ!私達、“貴族”しかないこの証!」

プリムはポケットの中から薄汚れた首飾りを出した。ダイヤや金で固められた首飾り。損害に扱うプリムを見ると、やはり貴族は嫌いな様だ。

「うわぁぁ、綺麗な首飾りだね兄さん。紛れも無くこの人が王女様だよ」

「本当だな!良かったよこんなに早く王女様が見つかって」

キングスもシュルツも嬉しそうにしている。

「ねえ教えて!ランドは今ドコにいるの?」

「ランドの兄さんだったら、コッチに向かって来てるよ!なんか、“大切な物”を奪われるからね」

シュルツは笑いながら立ち上がる。

“大切な物”――今まで寝転びながら、話を聞いていたソフィアは、ハッと気づきシュルツに襲いかかった。

しかし、襲いかかった先にシュルツは居なかった――いやシュルツだけでは無いキングスもプリムも居ない。

「良かった良かった!アイツの名前を出したらこんなにも上手くいくなんて思わなかったよ」

頭上から声がしたので、ソフィアは上を見上げ驚いた。

少年の背中からは、羽が生えており天井近くでとどまっていた。キングスの腕の中で、プリムがジタバタと暴れている。

「王女も捕まえた事だし、後はコイツらを殺すだけだね」

ニヤリとシュルツが不気味な笑いをかもしだした。妙な殺気で体が動かない…

「ガウッ!ガァァァッ!」

旦那さんの声で正気を取り戻したソフィアは、振り返った。

「ソフィアちゃん!今、動けるのはアナタしか居ないの!ランドを急いで呼んできて!」

ルナも叫ぶ。

「でもっ!」

ソフィアの声が頭に響く。

「大丈夫!私達は、大丈夫だからお願い!私達が、隙を作るからその間にね?」

そう言うとルナは、手元にあった黒い物体(プリムの料理)を少年達に投げつけた。

物体は、見事にシュルツの口の中にジャストミートする。

「うわぁあぁあぁあぁあ!何だこの物体は!目が…目がぁぁぁぁ!」

予想以上の攻撃力に、コレで勝てるなんて思ったルナより裏腹に、プリムは暴れる力も無くし愕然と肩を落とした。

その隙を見てかソフィアは一気に扉へ向かって走り出した。

「あっ!クソッ!犬が逃げ出しやがったか!」

キングスはソフィアに向かって手を向けた。何が出る訳でも無いが、ルナは嫌な予感がしたのでキングスに向かいまだまだ大量にある最終兵器(プリムの手料理)を投げつける。

「くっ!」

キングスは向けた手を一旦引き物体を振り払った。空中で散開した物体は、無邪気に遊んでいる子供達の真ん中に落ちた。子供達は、急に目の前に転がってきた物体の匂いをかいでみた。

それは、歴史上に残る地獄絵図であった。

ランドもそうだが、犬類の嗅覚は人間の100倍以上と言われている。

「この攻撃は、私達にも被害がくるわね」

冷静に分析をするルナに対しプリムは、落ち込む気力も失せ沈んでいた。

「シュルツ!犬なんか放っておけ!それに、コイツらを殺す事より面白い事を考えたぞ」

キングスはニヤリと笑った。

「殺す事より面白い事?」

シュルツは聞き返す。

「ああ…」

ソフィアは、扉から外へ飛び出すととにかく走り出した。ランドは生きている…ドコに居るかは分からない――だけど、早く会わなければ!

方角も分からず、ただただ走った。日が昇り日が沈んで行く。

ソフィアは休む事なく走り続けた。

途中、山を越え海を越えひたすら走り続けた。走り続けながら頭の中で事の事態を整理する。

“生きているランド”

“拐われたプリム”

“羽の生えた兄弟”

“明日の晩御飯”

“黒い物体の驚異とそれを食べようとした旦那の真意”

「もう駄目…疲れた」

ソフィアの足からは血が滲み走ることも叶わぬくらいの疲労感と眠気が襲ってきた。

息を切らせ何処かの町に着くと、とりあえず人型になり物陰に隠れて眠りについた。


――3日後――


ソフィアは眠り続けていた。静かで何も聞こえないハズだった。

「私が居れば大丈夫!」

女の声が聞こえた。

「プリムさん…?」

寝惚け眼で、起き上がろうとしようとした時だった。今までベッドにしていたゴミが一気に崩れ落ちた。

「誰!?女の子?」

ソフィアの目の前に居たのは、何人かの人間を連れた少女だった。

「アナタ…盗賊なの?」

この少女から、クルシスランドの匂いが微かにした。

「な訳無いか。私はパメラ!アナタは何者なの?」

少女の問いにソフィアは答える

「私は……」

「あなたは!」

パメラとソフィアは同時に声を上げた。

「てめぇは!あの時の!」

ランドは、物陰から出てきた人物に牙を剥き出した。

「ランドの兄さん久しぶり!覚えててくれて嬉しいよ」

手をパチパチと叩きながら姿を現したのは、赤い髪の少年――キングスだった。

「こんな所で遊んでていいのかな?君の故郷は、大変な事になってるよ」

ケタケタと笑いながらキングスは言う。

「お兄ちゃん!コイツ!コイツが、プリムさんを…」

ソフィアが叫ぶ

「てめぇ!プリムをどうした!」

ぐっと足を曲げいつでも飛びかかれる体勢をとる。

「ああ…あの王女様の事だね。王女様なら今は、お城で元気に暮らしてるよ――ところで、君は俺の事を良く知ってるみたいだけど、ドコかであったかな?」

キングスは、ソフィアに向かって指をさした。

ソフィアは鼻を鳴らすと、獣人化を解いた。

「あの時の犬か――いや狼か…まさか、人間の“魂”を持っていたとはな!」

キングスはニヤリと笑い出すと、背中から翼が生え大きく広げた。

「早く来ないと大変な事になるぜ―――いや、もうなってるか」

キングスは大声で笑い出すと空に舞い上がった。天井を突き抜け彼方に飛んでいく。

「待てっ!」

ランドは、突き抜けた穴から外に出た。――が、キングスの姿はドコにも見当たらなかった。

「くそ…早くクルシスランドに戻らなければ」

キングスの消えた空の彼方から、1日を告げる日が昇り始めていた。


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