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第15話:電池で動くババァの入れ歯はどこに行ったんだろう?

「やっと町に着いたわ!」

身体中、砂まみれになり額から流れる汗を拭いながらパメラは呟いた。

町に着いた時は、既に夜になっていた。建物からは灯りがチラホラと付いていて、全体的に静かだった。

「みんな!気を引き締めて!ここから何が出ても慌てず驚かず…」

パメラは住人達の方へ振り返り言葉を発していたが、途中で背後にある物陰から音がする。


ガタガタガタン


「キャー!ちょっ――ちょっと何よ!」

パメラは慌てて強そうな若者の後ろに隠れて音の発信元を探った。

「痛い!痛たたた――」

物陰から出てきたのは、女の子だった。歳は17・8くらいで白いマントをはおった不思議な女の子だった。

「あなたは盗賊なの?」

もし、盗賊なら盗賊なのかと聞くのはおかしな話だが、パメラは聞いてみた。

「えっ――?」

いきなり初対面の女に、盗賊かと聞かれ少女は戸惑ったが、すぐに返事は帰ってきた。

「私の兄が盗賊でしたけど、私は盗賊では無いですよ」

少女は笑顔で答えた。

しかし、兄が盗賊と言うのはどういう環境だったのだろうか。

「じゃあ、もしかしてこの町を奪い取った盗賊って言うのは、お兄さんの仕業なのかな?」

少女の表情が暗くなるのをパメラは感じとった。

何かヤバい事を言ってしまったのか――

「お兄ちゃん――3年前に、死んじゃったんです」

周りの空気が冷たく感じた。住人達も、横目でパメラを見ている。

「でも、最近になってからお兄ちゃんが生きてるって言う情報があったんです!」

少女は顔を上げた。

「じゃあ、そのお兄さんがこの町に居るから会いに来たんだね」

少女は首を振った。

「お兄ちゃん行方不明なんです」

少女の顔が曇る。

「え――あ―その―――お兄さんとこの町の盗賊は関係無いのかな?」

さっきから、一方的にパメラがいじめてる様にしか見えない会話に、住人達の冷たい視線が降りかかる。

「兄は、悪い事は一切しない盗賊だったんです。この町にいる盗賊とは、関係は無いでしょう」

となると、何故この町に少女は居たのか。考えても分からなかったので、パメラは聞いてみた。

「ですから、兄を探してるんです。私の“力”を使えば探しだせるから」

“力”…少女は確かにそう言った。

「“力”って、アナタも何か“魂”を持ってるの?」

「はい…」

少女は小さく頷いた。

「何の“魂”をもってるの?」

少女は答えなかった。

「大丈夫よ。“魂”を持っていても、ココにいる誰も驚かないわ。現に、私も最近まで“魂”を持った人と一緒にいたから」

パメラは笑顔で話しかけた。“魂”の所持者、出来れば力を貸して欲しい。

「私…人間の“魂”を宿してるんです」

数分くらいか沈黙が流れた。

「人間の“魂”?」

と言う事は、この子は人間を殺して“魂”を奪ったと言う事なのか。

「はい…私の事を可愛がってくれた人が“魂”を宿してくれたんです。とても大切な“魂”を…」

少女は胸を押さえた。

「そうなんだ…前まで一緒に居た人も大切な人から宿してもらったって言ってた…お母さんとお兄さんの“魂”だって」

「良いなぁ…その人も愛されてたんですね」

少女に笑顔が戻った。

「うん。しかもちょっと変わっててね、狼の“魂”を宿してるんだよ」

少女が急に驚いた顔をする。

お母さんとお兄さんの“魂”は、狼と聞かされれば誰だって驚くハズ。

「それって…もしかして!」

「そう。狼に育てられたんだって」

私だって最初は驚いたけど、やっぱり誰だって驚くもんだなとパメラは思ったのだが――

「お兄ちゃん!」

急な少女の言葉に、パメラは膝を落とした。

「お――お兄ちゃん?」

少女の言葉に耳を疑った。お兄ちゃんと言う事は、この子はランドの妹!?

パメラはランドに似ても似つかぬ少女をシカと見つめた。

確か、人間の“魂”を宿してると言ってたな――人間の“魂”??

この子は、人間の“魂”を宿してる――ランドは子供の頃に親に捨てられたと言ってたな…そうすれば、妹の事なんか知らないハズ――と言うと…

パメラは頭を抱えた。

・人間の“魂”を宿した少女

・狼の“魂”を宿したランド

共通点は――この子は、狼!?もしかして…

パメラは顔を上げ少女の肩を両手で掴んだ。

「アナタ、もしかして聖なる狼の家系なの?」

少女は頷いた。

ランドの話を聞けば、聖なる狼の家系は魂を宿したランドのみと思っていた。だが、それはパメラの思い違いだったのだ。

純正の本物の聖なる狼。その子が今自分の目の前にいると言うことだ。

「お姉さん、お兄ちゃんを知ってるの?」

「知ってるも何も、さっきまで一緒に居たのよ!クルシスランドの臭いが強くなった!とか言って、1人で先に向かってったの!」

少女の問いにパメラは答えた。

「嘘っ!じゃあ急がなきゃ!」

少女は身を屈め走り去ろうとするが、パメラは必死に止めた。

「ちょっと待って!お願いだから、もう少しだけココに居て!」

「でも…」

「お願いだって!一生のお願い!私達を助けて!」

パメラは、何が何でも少女を止めたかった。

それは、ここの町を救う手助けをしてくれれば良かったのともう1つは…

「パメラさん――もう遅いかと」

今までの成り行きを見ていた住人の1人が話しかけてきた。

「何が遅いの――」

パメラは住人達の方へ顔だけ向けると“遅い”と言う意味が分かった。

盗賊達であろう。住人とパメラ達を囲むように勢揃いしていた。

「お姉さん……気付かなかったんだね」

少女が哀れみの言葉をかける。

「何で誰も何も言わなかったのよ!まさか、気付かれてるって思わなかったわ!」

誰も何も答えなかった。それは、アレだけ大声で叫べば誰だって気付くだろうと言いたかったのだが――。

ガチャンッ!!

住人達と少女とパメラは、手を縛られて大きな館の中に連れてこられた。

「ひっひっひっ…ファブレちゃんの“魂”が来たよ」

奥の方から声がした。

部屋に灯りがともり姿を現したのは、脂肪の固まりだった。

「豚人間!?」

少女とパメラの言葉がかぶる。

「豚じゃないブヒッ!俺様は、闇の暗殺者…コウモリ人間だブヒッ!」

口が大きく裂け、背中から羽が生えてくる。

「気持ち悪っ!」

少女とパメラの言葉が再度かぶった。

「親方!大丈夫ですよ!カッコイイです!」

盗賊達が言葉をかける――が、気持ち悪いと言うことは否定しなかったが。

「まぁ良いだろ!お前らはすぐに死ぬ運命なんだからな」

ひっひっひっと笑うと、口の端からヨダレが垂れた。

「スグに死ぬ運命?ふざけないで!アンタなんかに殺される訳無いでしょ!」

パメラは言い返す。

「威勢の良いお嬢さんだ!君の“魂”を頂く事にしようかなっ!」

コウモリ豚は、口を大きく開き羽を広げた。

その瞬時にパメラの脳が たてに揺れる。視界が、グチャグチャになり気持ちが悪くなってきた。

パメラだけでは無い。住人や少女までもが苦しんでいた。

「な――何よコレは……」

「助けてお兄ちゃん…」

「ひっひっひっ!どうですか?俺様の超音波は?スグに楽にしてあげますからね!」

コウモリ豚は、ヒタ…ヒタ…と足音を立てて近づいてきた。

「お嬢ちゃんの“魂”を頂くよ!」

コウモリ豚の爪がパメラの体に向かい飛んできた。


ザシュッ!


パメラの視界が赤く染まった。

「何で――」

パメラは言葉を振り絞るが声が出なかった。そしてそのまま地面に倒れた。

「ウヒャウヒャウヒャ…何でだ!クソ野郎が!」

勝利の笑みかと思いきやコウモリ豚は逆上し始めた。それもその筈、コウモリ豚の腕から先が無かったからだ。

「クルシスランドの匂いがしたのに、お前だったのかソフィア」

少女――ソフィアを背中に金色の狼が立っていた。

手にはコウモリ豚の手を持って――

「お兄ちゃん…なの?」超音波が鳴りやんでいたが、疲れた様子でランドを見上げた。

「ソフィア…苦しかったか?大丈夫か?」

ソフィアに向き合い手の縄を切り裂いた。

「オイッオイッオイッ!俺様は無視か!」

コウモリ豚の顔は、怖い形相になっていた。

「まだ居たのかカスが」

ランドもまた怖い形相になっている。

妹を傷つけた人間。理由はそれだけ。

「よくも俺様の腕を切り落としてくれたなっ!」

コウモリ豚は羽を広げ、超音波を出した。

――と思ったのだが、羽を広げようにも広げられなかった。

コウモリ豚は、背中にある羽とは違う重量感を感じ顔だけを後ろに向けた。

背中には、先ほどまで前にいた狼が背中に乗っており、こちらを見下ろしていた。目は赤く光り汗が凍るかの様な冷たい空気。両手で一つ一つの羽を掴んでいた。

ウルフは舌なめずりをすると力を込めて片方の羽をもぎ取った。

部屋中にこだまする悲鳴――床は、赤く血に染まる。

コウモリ豚は、背中に乗った悪魔を振り落とし前転をしながら避難した。悪魔――ウルフから発する嫌な気配…ピリピリと肌で感じとる。

この嫌な気配に住人達は皆、顔をうつ向かせた。中には顔を覆い座り込む人もいた。

「―――っ」

小さなうめき声をあげてパメラは気がついた。身体中についた血を見て気を失いかけたが、首を横に大きく振り立ち上がる。

最初に視界に入ったのは、羽や手がもげた気持ち悪い血まみれの豚――コウモリ人間だった。

何かに脅えてる気がした。ふと、パメラはコウモリ人間が見据える視線の先に目を向けた。

急に背筋が凍る気がした。一気に、首から爪先にかけて鳥肌が立つ。

そこに居たのは、金色の毛並が真っ赤に染まった狼人間が立っていた。

「ランド――?」

パメラは思わず呼び掛けた。

いつもと風陰気が全く違う彼に―――

パメラの横でソフィアが嬉しそうにランドを見つめていた。

「あ…アナタ、良く何も無い感じに見てられるわね…」

キラキラと目を輝かせてる少女にパメラは話しかけた。

「お兄ちゃんが、いつもの感じに戻ったんだもん!」

“いつもの感じ”パメラは耳を疑った。

いつものランドと言ったら、お茶らけた感じの彼だと思っていたがどうやら違う訳だ。

学校でキレた時もここまで酷く無かった。彼はやはり根っからの狼なのだなと思う。

「俺様が、超音波しか出せないコウモリだと思うなよ!」

コウモリ人間もといコウモリ豚は、意を決したのか捨て身でウルフに襲いかかった。

コウモリ豚のパンチがウルフに当たったと思われたのだが、パンチはすり抜けて地面をえぐった。

「なっ――残像か!」

コウモリ豚は、スグに後ろを振り向いた。その行為は考えてしたのでは無い、ただ何となくだが自然にしたのだった。――が、その行為が仇となってしまった。

後ろを向いたコウモリの先には誰もいなかった。地面に突き刺さった腕を引き抜こうとした瞬間に、とてつもない重力が腕にのしかかった。


バキバキボキッ!


腕が逆方向に曲がりだす。折れた骨が、肉と皮膚を切り裂き血と一緒に腕の中から飛び出してきた。

「あああああっっっ!」

逃げようにも逃げられない。コウモリ豚は、思いっきり体を後ろに反らすのだが、ウルフは踏みつけた腕を離さなかった。

やっとの事で腕を離され安心したのも束の間――今度は強烈な蹴りが顔面を捕えた。

コウモリ豚は、なす術も無く後方に吹き飛ばされていく。仰向けになり、天井を見上げた。

全身に広がる痛み、溢れんばかりの鼓動を抑えきれずため息をついたのだが、地獄はまだ終わらなかった。

天井に1つ黒い影が見えると、その影はコウモリ豚の脂肪で固められた腹の上にのしかかる。

腹にのしかかってきたのは、ウルフだった。ぶよぶよの腹は段々と凹んでいきその衝撃はアバラまで到達すると、骨が砕ける音が鳴り響く。

「――――っっっ!!」

声にならない声をあげもがくが、ウルフの非情なる攻撃はやまない。

ウルフは足を上げ地に足を着けると、片手でコウモリ豚の頭を掴み持ち上げた。

「てめぇの体から、奴らの臭いがぷんぷんするんだよ!」

「や――奴らって…?」

反抗する気にもならない――いや、出来なかった。片手は、ちぎれ――もう一方の手は骨が飛び出し使い物にならない。自慢の超音波も羽が無ければ出すことが出来ない。コウモリ豚は、何も出来ない赤子同然の状態であった。

「とぼけるんじゃねぇよ!奴らだ!お前は奴らとどう言う関係なんだ!あいつらは一体何者なんだ!」

手に力が入る。―――が突然!!


ザシュッ!


コウモリ豚の首から、黒い刃が飛んできた。

ウルフは身を翻しかわし、コウモリ豚を見た。

口をパクパクさせ何かを言いたそうにしていたが、声は出ていなかった。それもそのはず、コウモリ豚の喉は大きく裂け穴が空いていた。

その穴からは、空気がヒューヒューと音を立てて通り抜けている。

「可哀想な豚をいじめるのはドコのどいつだい?」

物陰から、1人の男が出てきた。

「あっ!アイツは!!」

ソフィアとパメラが同時に叫ぶ。

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