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第13話:いっそ殺して欲しいと思った恐怖の体験をした男の話

「ふぅー…この岩で入口を塞ぐのも大変だぜ」

額から流れる汗を拭いながら、男は言った。

別に独り言を言った覚えは無かったが、男の周りには何人かの男達が汗を拭う姿が見えた。

男達が動かした岩は、自分達より何倍もあるかの様な大岩で、洞窟の入口を塞いでいた。

「ったく、お頭の考えてる事は分かんないぜ。なんでまた、町の住人や旅の人間を閉じ込めるんだろうな」

男は岩に寄りかかりながら煙草に火を付けた。

「全くだよ。せめて女だけは外に出してくれれば俺たちだって仕事をする甲斐があるってもんだ」

もう一人、男が近寄って来て岩に寄りかかる。

「なあ、さっきの女の子可愛かったよな!男連れが気に食わなかったけど、お前はどう思うよ?」

等と馬鹿な話をしながら男たちは談笑し始めた。


キィンキィンキィィィン


突如、耳障りな音と共に岩に斬撃が走る。

「ん?今なんか聞こえたか?」

男の一人が気付く

「どーせ、また無駄なあがきだろ?気にすんなよ」

煙草の煙と共に、もう一人の男が言った時だった。背中から胸にかけて凄まじい衝撃が走ると共に男の体は空を飛んでいた。

周りがスローモーションの様に流れていく。男はそんな世界の中で衝撃が走った場所をしかと見た。

先程まで、力を合わせて動かした岩がまるでカッターか何かで切られたかの様な切味でいくつかに切り裂かれていて、その断片が自分の方へ飛んでくるのかが…。

男は頭から地面に落ち、地面に伏せた。その上を岩の一部が凄いスピードで過ぎ去っていく。

目だけ動かし周りを見渡した。何人かの仲間たちは、皆地面に伏せ中には気絶してる者もいる。

男は再度洞窟の方を見た。洞窟の入口には、住人達が互いに武器を持ちコチラを睨んでいた。

その中から何かはわからない。金色なのか、光る影が動くのが見えた。

「ランド!殺しちゃダメよ!」

女が叫ぶ。と同時に、男の目の前にシュボッと言う音と同時に何かが突き刺さる。

それは、紛れもない腕だった。自分の腕では無い。何かの動物みたいな腕。

「馬鹿か!そうゆう事は先に言ってくれ!」

男は声がする方を見ようと顔を上げたが、その姿を見る事が出来なかった。

首の後ろ辺りに強い衝撃が走ると、目の前が急に暗くなった。

「ランド!殺しちゃダメよ!」

パメラが叫ぶ。

ランドは、倒れていた男の頭上にいた。突きだしていた拳の方向を無理矢理に変える

「早く言ってくれ!」

ランドの拳は、間一髪で男の顔の前スレスレに通り地面に突き刺ささった。そして、突き刺ささった腕を中心に体を回転させると、男の首にカカト落としを決めた。

男は、小さな息を吐き出して気絶をしたのが伺えた。

「何者なんじゃ…お前らは」

パメラの後ろの老人は、ランドの異形な姿を見て問いかける。

「言ったでしょ?只の旅人だって」

老人に向かってウインクをする。

長い間、住人達を閉じ込めていた盗賊達が面白い様に次々と倒されていく。ランドと呼ばれていた狼は、本当に人を殺してはいないようだった。

「これで、おしまいっと」

既に気絶をしている男に更に追い討ちをかけると辺りを見渡す。

15人くらいいただろう、男たちは皆気絶をし地面に伏せていた。

「さてと、俺たちが出来るのはここまでだ」

手に付いた砂埃を払う仕草をしながらランドは振り返る。

この言葉に不意をつかれたのは、パメラより住人達だった。

「俺たちは、先を急がないといけないんだ。だから、この先はアンタ達だけで頑張ってくれ」

「ちょ――ちょっと待ってくれ!お前達は、私達を助けてはくれないのか?」

威勢よく若者が飛び出してくる。

「そうよランド!ここで見捨てるの?この人達を助けるって…」

ランドはため息をついた。

「一度も言った覚えは無い!俺は先を急がないといけないんだ!パメラ!お前は、この人間達を助けるのが目的か?だったら、ここに残れば良い!俺は、1人で先に進む」

狼の形相は更に怒りを増し恐怖の色が見えた。

「ランド…」

「臭いが強くなってきたんだ。クルシスランドの臭いが…。俺は、早く戻らなくてはならない!こんな所で足止めはしてられないんだ!」

ランドの覇気に、回りの空気がピリピリと肌で感じ取る。

「ごめんランド!私、この人達の町を取り返したい!だから、ここに残るよ。ランドも同じなんだよね…町を取り戻すって事はさ」

「…悪いパメラ」

言葉を吐き出すとランドの姿が消えた。

後に残ったのは、盗賊達の惨めな姿と住人達のどよめきだった。

「さぁ、行きましょ!みんなで力を合わせれば町を取り返せるわ!」

パメラは言ったものの、ただ不安だけが残る。

この先にいるのは、住人を全員追い出せる力を持った盗賊。ランドのいない今、住人とパメラだけで町を取り戻せるのか――と言う不安が残った。


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