表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/58

6話 おふろ

俺は今、風呂に浸かっているのだが、ひとりでは無い。

例の女の子と一緒にお風呂場にいるのだ。


風呂というのは、一人、静かで、豊かでなくてはならないのにも関わらずだ。

一人でお風呂に入る信用を得るために、どれだけ苦労したと思っているのか。

それにも関わらずだ。

俺は決死て故意でこの状況を作り出したわけではなく、不備はない、万事オールオッケーだ。不可抗力だ。

決して、ラッキースケベだなどと考えては居ない。

良し、いろんな意味でオールオッケーだ。

俺は自分の胸の前で拳を握った。

神様、幻神様ありがとう。

俺はあなたを一生崇め続けたいと思います。


さておき、なぜその女の子と二人で風呂に入っているのか。

俺が泥だらけにさせてしまった女の子と、バランスを崩し、転んでしまったせいで土汚れまみれになった俺を、母親が無理やり風呂へ押し込まれたからだ。


その女の子はというと、泥で汚れた身体を綺麗にするため、

湯船に浸かっている俺の隣で、身体を洗っている。


(主様。あまりじろじろ見ないでください。温厚な私でも怒る事はあるのです)

(はい)


ケット・シーはそう言うと、桶の中でぐでんとリラックスしはじめた。


ちくしょう、保護者がいるとか聞いていないぞ。

せっかく神様が与えてくださったこの機会を、みすみす逃しては男が廃る。

可憐な少女が目の前に、しかも裸体でいるというのに、鑑賞する権利すら与えられないなんて。

俺の行為は美術を愛でる芸術家のそれだ。

問題はなど何もない。正当な権利だ。

別に、率先して少女を愛する人種な訳では無い。嫌いではないが。

決して我欲の為に鑑賞するのではないのだ、少しくらい良いじゃないか。


あまりじろじろ見ていると、ケット・シーに何をされるのか分からないので、他のことを考えよう。

ヘリオス兄は何をしているんだろうか。

風呂に入るのを嫌がってたからな。

遊び足りないと思う。まだ剣を振り回しているのだろう。

と、そんな事を考えていると、女の子に声を掛けられた。


「ねぇ、キミ。名前はなんていうの?」


身体を洗い終わった女の子は、ぽちゃんと湯船の中へ入ってきた。

この家の風呂は木製で、しっかりとしている。

子供2,3人程度ならゆっくりつかれるほどのサイズだ。


「……セリニス」


なんだろう、すごく緊張する。

そのためか、返事もぶっきらぼうになってしまった。


「セリニスって言うんだ、私は、アスティアナよろしくね」

「うん、よろしく……」


名前はアスティアナというらしい。

しかし、アスティアナは恥ずかしげもなく、堂々としている。


「アスティアナはさ」

「ティアでいいよ」


呼びやすくなった。


「ティアは男の子とお風呂に入っても大丈夫なの?」

「え、男の子と言っても、ほんと小さいこどもでしょ。特に気にする必要ないと思うけど」


うーん、そうなのだろうか。

そんなものなのだろうか。


「そんなことより、セリニスって強いんだ、びっくりした!」

「そ、そうなのかな」

「わたしの友達だって、まともに打ち合える子なんていないんだ。掠ったくらいだけど、わたしに当てるなんて結構凄いんだよ」


いや、ごめんなさい。

身体強化で、ずるをしていたのだけどね。


「ティアもすごいよ。同じくらいの年で女の子なのに、あんなに動けるなんて」

「む。これでも10歳なのよ」

「あ、そうなんだ……」


ちょっとむくれたティアだったが、

少しして何かを思いついたようにこちらを見た。


「今度うちに来てよ。剣の訓練もできるよ!」

「え」

「嫌なの?」

「い、嫌じゃないけど」

「じゃあ決まりだね!」


決まってしまった。

でも、俺、家から出られるのだろか。


「で、でも、家から出たことないし、母さんがなんて言うか」

「あとで、おばさんに聞いてあげる」


ものすごい行動力だ。

為す術無く、あっという間に外堀を埋められてしまうであろう。


「わ、分かった。母さんが良いって言ったらね」

「ふふふー。楽しみだなー」

「その時は、兄さんも連れて行くよ」

「……分かった」


なんだったんだろう、今の間は。


「そう言えば、魔法使ってたよね。なんで詠唱なしでも出来るの?」

「えいしょう……?」


そう言ってケット・シーを見る。

彼女は、あっ、まずい、というような表情になり、目をそらした。


あいつ…忘れていやがったな。


「魔法って、詠唱しなくても出来るんじゃないの?」

「出来ないよ。そんなの聞いたことない」


そんな馬鹿な。


今まで、ほとんど部屋に篭っていたし、外にも出ていなかったし、誰かが魔法を使っているところなんて見たことなかったから、魔法を使うのに詠唱が必要なんて知らなかった。


それに、俺は魔力を操作する事にしか頭が回らなかったし、その訓練しかしてこなかった。魔法が使えたのは、偶然の発見と言うか、たまたま出来ただけなんだと思う。


「わたし、エルフの血が混ざってるけど、そんな事できないよ」

「エルフ?」

「うん、エルフ。エルフは魔法を使うことが得意なんだって」


ファンタジー系の物語によく登場する、あのエルフか。

良く分からない世界に来てしまったものだと、つくづく思う。


「ティアも魔法をつかえるの?」

「んー、ほんのちょっとだけ。あんまり得意じゃないんだよねー」


そう言いながら、ティアは身体を口の辺りまで湯船に沈め、

ぶくぶくと息を吐いた。


「ふぅ。それにあんまりエルフっぽくないんだよ。耳の形が少し変わってるくらいだし。ほら、こんな感じ」


そういって、垂れた髪を耳にかけ、みせてくれた。

ほんとだ、言われないと気にしなかったが、耳の先端が少し尖ってる。


なんとなく手をのばし、触ってみた。

彼女は拒絶するわけでもなく、触らせてくれる。


「ほえー」


エルフか、凄いな。

本当に居るんだ。

どういう作りになってんだろ。

遺伝子レベルで決まってるだけなのかな。

といろいろ考えつつ、気づいたら俺は長いこと触っていたようだった。


「……っん」


そんな声出さないでほしい、物凄くドキッとしてしまった。

そして、なにかこうふつふつとは…こないな。

流石にまだ3歳だし。


「あ、ごめん。すごく珍しくて」

「大丈夫。気にしないで」


彼女はあまり細かい事を気にするような性格では無いのだろう、あっけらかんとした表情でこちらを見ていた。


「セリニスは風魔法が得意なんだね、すごい力でびっくりした」

「え、風魔法なんて使ってたっけ」

「使ってたよ。あの風で私飛んじゃったんだから」


あれ、風魔法だったんだ。

ちらっとケット・シーを見ると、頷いて合図してくれた。


とっさに魔力を前方に押し飛ばしただけなんだけどな。

ためた魔力を前方へ押し出す、そうすると風が起こる。

不思議だ。


そんな事を考えていると、ティアに声を掛けられた。


「どうしたの?」

「ちょっと考え事を」

「ふーん」


ティアは少し深呼吸をして、ざばっと湯船から上がった。

俺はつい凝視してしまう。


「じゃあ。おばさんには後で聞いておくね」


ティアはそう言うと、風呂場を出ていくのであった。


(主様。見すぎですよ)

(はい、ごめんなさい)


その後、ティアは俺を家へ招くと母親に話し、何の問題もなく了承されていた。


3歳で外を歩き回るのは普通なのだろうか。

生前、親戚の子は、4才前後でお使いをしていたが、大抵、泣いて戻ってくるか、出たらすぐ遊び出すかで、まともにお使いを成功させた試しがないかった記憶がある。

あれはお使いと言って良いのだろうか。

みていたこっちははらはらして気が気ではなかった。


この世界は、車も走っている訳でもないし、人もそんな居ない。

そこまで気にする必要は無いのだろうが、何も起こらない保証は無いだろうに。

俺が周りに気を配ればいい話か。

精神年齢で言うと、おじちゃんだからね。

君たち子供を守ってあげようではないか。


今回、家から出ることを許されて、なんだかんだ楽しみではある。

どっかの龍が閃くような、秘伝の奥義とか教えてもらえるのだろうか。

日本男児としては刀を持つのは憧れてしまうよな。

この世界にも似たような武器があったら良いのに。


しかし、とても良いタイミングで剣術の訓練の話が舞い込んできた。

ここ最近のマンネリを解消できて、さらに腕に磨きを掛けられるだろう。

変な癖が付く前に、ヘリオス兄が正しい剣の扱い方を覚えるのは、きっといい話だと思う。

俺も頑張って訓練してみよう。

ブックマークと評価ありがとうございます。


とても励みになります。


つたない文章でアレですが、引き続き頑張ろうって気になります。


もしよろしければ、ブックマーク、評価いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ