表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/58

4話 魔力の実験

以前、魔力の話を聞いた時から、約半年が経った。

肉体的にはハイハイが出来るようになる頃合いらしい。

らしいというのは、もう一人の赤子の様子を観察しているから分かった事だ。


以前、ケット・シーに、「早く外に行きましょうよ! この世界の事、いろいろと案内したいんですよっ!主様といろんなことしたいんです。さぁ! 成長促進で走れるくらいの肉体になってください!」


さぁ! と言う、ケット・シーの勢いに負けて、少しばかり無茶をして魔力にて体の成長を促したのだ。

そしたら、かなり早い段階でハイハイが出来るようになり、立ち歩きが出来るようになった。


しかしだ、年齢として分不相応な動きをするのも如何なものだろうと思い、兄弟の成長を観察し、成長度合いを合わせることにしたのだ。

その結果、半年くらいでハイハイが解禁されたのだ。


そうそう、もう一人の赤子は、双子の兄だった。

名前をヘリオスと言うらしい。


俺は生前、自分の子供が居なかった。

だから、赤子の夜泣きがここまで精神的に辛いとは思わなかった。

赤子は泣くの当然で、それが仕事でもある。

だから文句を言うつもりは無いのだが、ほぼ毎晩泣かれると結構しんどい。

ノイローゼになってもおかしくないなって思う。

この上、景気が悪い時、俗に言うブラック企業にはまともに育児休暇が無かったり、心無い言葉を浴びせられたりしたらしい。

そんなヤツが、ぶん殴っていいと思う。

親って大変だったんだな……

と、今更ながら、生前、世話をしてもらった事を心から感謝する。


逆に、俺は泣かなすぎて、心配されてしまっているので、兄の真似をし、嘘泣きをしてみたりしている。

精神年齢と身体が一致しない日常ににとても疲労を感じる。


(主様って演技下手ですねぇ)


俺は演技の才能なんて微塵も無いんだ。

クラスの出し物の時、その演技力のなさにバイクの役なんて演らされた。

「エンジンがないと動かないじゃん。ただ動けばいいだけだから大丈夫」じゃない。

俺は男であるから単気筒ではあるが、その前に人間だ。

水1リットルだけで数十キロも走れたりするわけが無い。

あれは演劇なんて高尚なものじゃない。

コントだ。

学生のノリってほんと怖い。



赤子の日常というのは寝るか、食事をするか。

その程度しかやる事がなく暇で暇でしょうがない。

だから、魔術について理解を深めようと思った。


(ケット・シー)

(はいはい、何でしょうか)


暖炉の前でうとうとしていたケット・シーはのっそりと起き上がり、猫らしい背伸びをした後、欠伸をしながら、ふよふよと浮いてこちらにやってきた。


(魔術の事、いろいろ知りたいんだ)

(はいは、魔術ですね。何から話しましょうか。どんな事が聞きたいですか?)


聞きたい事と言っても、これと言って聞きたい事は浮かばない。


(何が出来るか分からないしなあ。お手軽に出来る事って無い?)

(そうですね、部屋の中で魔術を使うのは怖いですからね)


ケット・シーは片手を顎に当てて、うんうんと唸っている。


(属性魔法以外で、無属性でなにか出来る事と言いますと……)


しばらくの間、ケット・シーは考えている。

しかし、いいアイデアは浮かんでは来ないようで、前転をするように、空中でくるくると回り続けている。

ふよふよ浮いているケット・シーをしばらく見ていてピンときた。


(ケット・シーが浮いているのは魔法を使ってるから?)


妖精は大概浮いているものだし、当たり前の事ではあると思うのだが一応聞いてみた。

空を飛ぶのは夢ではあったし、生前読んだマンガでも気の力で飛んでいたし?

魔法使いって箒で空飛ぶのは定番じゃん?


(うぅん、どうなんでしょうか。確かに魔力を集めた上で飛んでいるので、魔法だと思うのですが、

物心ついた時にはもう飛んでましたしね。感覚で飛んでいますよ)


感覚か。

体に染み付いた動きって、具体的に説明するのは難しかったりする。

自転車を漕げるようになる為の方法と動きを、一から厳密に説明せよと言われても上手く出来る自信はない。物心ついたときには扱えるようになっていたしな。


(飛ぶ時って、意識している事とかないの?)

(そうですね。自分よ、浮けー! と考えていますよ。魔力をぐっと持ち上げる感覚なのでしょうか)


たしかに感覚的な回答だ。

これでは全く分からない。


取り敢えず、言われたとおりに魔力をぐっと持ち上げる要領で試しみた。

確かに、力を込めた瞬間は、身体が持ち上がるような感覚はあったが、持ち上げ終わった後は、いつも通りの状態に戻ってしまった。

何が違うんだろうか。

浮くってことは、重力が無いって事って考えても良いのだろうか。

宇宙空間では、とくに意識せずにも浮くのはそういう事だろうし……

そもそも、重力を感じない状態にする?

いや違うな、この世界の星の上にいる間は物理的に不可能だろうし。


重力に抵抗している状態にする? 何か近い気がする。

てことは魔力を下に向けて放つ?

でも、魔力を上に持ち上げたら浮く感覚があったしなぁ。

引っ張られる感覚じゃなくて、持ち上げる感覚なんだろうか。

ぐっと魔力を持ち上げてみる。

やっぱりだ、この時に一瞬身体が持ち上がる気がする。

よく分からない。


でも、一つだけ分かった事がある。

それは魔力で物体に干渉出来るということだ。

生前の知識でいうと、念力に近いのだろうか。

結局、空は飛べ無いんだけれど。


とりあえず、魔力の実験は続けようと思う。


1歳

歩く事が解禁された。

よちよち歩きではあるが、行動範囲が広がるのは嬉しい。

ヘリオス兄さん、順調に育ってくれてありがとう。


兄さんは好奇心旺盛なんだろう、目につく物全て掴んでは投げ、持ち上げてはひっくり返す。

油断したら、すぐ物を口に入れるから全く目が離せない。

一挙一動に、本当ハラハラする。

なので、俺は一日中兄さんの監視と世話を行っている。

幼児が幼児の世話をする、これいかに。


2歳

兄さんはこの頃になると、危なっかしくあるのだが、だいぶ走れるようになっていた。

そして、たどたどしいものの、ある程度喋るようになっていた。

俺は、日常会話程度なら、大人と変わらないほど流暢に話す事は既に出来るのだが、兄さんを真似て片言で話すようにしている。

むしろ、普段は話さないようにしている。

ボロが出るのが怖い。


なぜだか兄さんは、暇があれば俺を木の棒で叩こうとしてくるようになった。

家庭内暴力だ。

だが、小さな子どもが振り下ろす木の棒なんて大したことは無く、そういう時は、俺も木の棒をもって軽くあしらうだけだ。

ただ、何が楽しいのか、兄さんは疲れ果てるまで止めようとしない。

長い時には、小一時間ほど続くので、止めてほしいと両親に目で訴えかけるのだが、まったく取り合ってもらえない。

むしろ微笑ましく眺めているだけだ。

おとうさーん、あなたの子供が暴力を振るっていますよー。


この世界の育児は、放置と言うか、子供任せというか、

子供への干渉は、過度な行わないようだ。


あと、一番笑ったのは、兄の排泄の時だった、

あるとき急に俺を指差しから「ちんちん、出る」とほざいたのだ。


俺はそんな卑猥な名前ではないし、フルチンでもないぞ、と思いながらも、ずっと、ちんちんちんちん言っている兄をどうしたのか見ていると、急にあそこを両手で押さえて、ぷるぷる震えだしたのだった。


はっ! トイレか!

とひらめき、兄をトイレにつれて行き、

ヘリオス膀胱決壊事件を未然に防ぐことに成功するのだった。


しかし、誰だそんな言葉覚えさせやがったやつは。


あっ、俺だ。


そんな感じで、俺たちは生まれて3年目を向かえようとしていた。


よろしければ、ブックマークや評価をしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ