3話 魔力の扱い方
魔力について。
好奇心を刺激される話だ。
ファンタジー要素溢れるゲームや書籍などが好きだったから、いざ使えるとなると心が躍る。
いろいろ想像が膨らみ、期待してしまう。
(さてさて、魔力についてお話をしましょう)
ケット・シーはそう言いつつ、ふよふよと空中を浮かびこちらに向かって飛んでくる。
しかし、飛んでいるというのに羽は一切動いていない。
あの羽根は何の為に付いているのだろうか。
不思議生物は、ふわっと俺の直ぐ側に着地した。
(魔力とは、空気中に漂っている魔術の源となるエネルギーのことです。さきほど集めてもらったエネルギーですね)
あの心地いいような、悪いような、
身体に纏わりついている物質の事だな。
(火、水、冷、地、風、雷の属性が存在するとされており、個々の才能、体質によって、得意とする属性が違ったりするそうです)
(あっ、そうだ、幻神様が言ってましたよ。「幻神の素養を組み込んだから、気合さえあれば全てが扱えるはずだ」って)
幻神の素養? 良く分からないが、全ての属性が扱えるのか。
とりあえず感謝をするべきなのだろう。
(あとは、魔力そのものを使って、いろんなものに影響を与える事もできます。こちらは属性がない魔法なんで無属性魔術と言えば良いのですかね。ちなみに私達のような幻種族しか使え無いらしいですね)
(無属性魔術は、さきほど行った通訳と念話が例ですね)
(それと、知っている事で言うと……身体強化、身体活性、成長促進が出来ます。恐らくですが、無意識でしょうけど、先程、行っていたように見えましたね)
(おそらく、目に成長促進を行って視力を上げていたのでしょう、目元に魔力が集まった後、視線がしっかりと定まるようになっていました)
教えてもらう前から出来ていたらしい。
魔力の感覚なんて無かった気がするけど、意識していなかったからなのだろうか。
(あの時は魔力を集めたりはして無いはずだけど)
目をはっきり見えるようにしたのは、魔力の集め方を教えてもらう前だったはずだ。
なんで上手く出来たのか分からない。
(魔力って、ある程度は身体の中に溜まっているのです。先程は、体内に溜まっている魔力を使って、
魔力にて成長促進を促して、視力をある程度まで成長させたんだと思います)
全く意識してなかったが、いつの間にか魔術を使っていたらしい。
(ちなみに、体内の魔力は使いすぎると良くないです。死ぬ場合もあったり。なので、気をつけてくださいね)
前の身体で死んだ時の死ぬときの感覚は薄っすらと覚えている。
その時の事を考えていたら、死んだ際の記憶が蘇り背筋にヒヤッとしたものを感じた。
もうあんな事はごめんだ。
生に執着していないが、死にたい訳では無い。
どうせなら生きていたい。
(ざっとですが、今思いつく限りでの説明をしてみました)
情報量が多くて、分かったような分からないような。
(魔力を集める時だっけか、身体に悪いとか、そんな事を言ってたよね)
(あ、そうですね。今の主様の身体だと、流れ込む魔力に耐えられないかもしれません)
(耐えられなかった場合は?)
(そうですね、この世界で起こった事で例で言うと――)
そう言って、不思議生物は、頬に手をあてて、何か思い出そうとするような素振りをしている。
(身体が燃えて消し炭になるとか)
燃える。
(石化して、石像になってしまったりだとか)
石になる。
(身体が弾けて木っ端微塵になったりですかね)
嘘だろ。
(そんな危ない事をさせてたの!?)
(……てへっ)
下をぺろっと出してウィンクしている。
(私がちゃんと見てたので大丈夫すよ。もうっ、信用して下さいよ!)
腕を組んで、頬をふくらませている。
ぷんっぷんっ! といった擬音が聞こえてくるような、可愛らしい仕草だ。
(そんな可愛く怒ったって、誤魔化されないぞ)
(もぅ、可愛いって。主様ったら)
頬に手を当てて、照れたように視線を逸している。
こいつ、誤魔化そうとしている。
自分が可愛いと分かっていて、男心を理解し、女性の部分を押し付けて陥落させる。
こうやって、魔性の女は男を手玉に取るのだ。
生前、散々痛い目を見た経験を今活かすのだ。
もう俺は騙されないぞ。
(主様は、怒っているのでしょうか)
じっと、うるうるとした瞳に見つめられ続ける。
(ねぇ、主様?)
そういって、にじり寄ってくる。
(ごろごろにゃーん)
俺は簡単に誤魔化された。