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9話 魔法の進歩

日々が過ぎるのもあっという間で、俺は5歳になった。


今までやってきたことと言えば、

ティアの父親の所で剣術の練習をしたり、

魔力を操作する練習をしたり、魔法の研究をしたりといった具合だ。


剣術に関してだが、俺は、それなりに上手くなったと思うのだが、

あくまでもそれなりに、だ。

身体強化を行わないと、ヘリオス兄にも勝てない程度の実力だ。


ヘリオス兄は才能があったのか、かなり動けるようになっている、

好きこそ物の上手なれってヤツなのだろうか。

ティアといい試合を出来るようになってきたようだ。

流石に、経験と体格差には苦戦しているようだが。


魔法に関しては少し進歩した。


魔力が、意識すれば見えるようになった。

意識を向けている時、通常は薄っすらともやを感じるかな? 程度なんだが。

魔力を集めた時には、それがより濃く感じるといった具合だ。


そして、自分の半径100メートル程度だったら、遠距離操作が出来るようになったのだ。

このお陰で、手元からしか起こせなかった風を、

意識した場所から発生させることが出来るようになった。


これが結構大変だった、魔力で操作できる範囲は、自分の身体に蓄えている魔力の量によって操作できる距離が変わるらしい。

でも蓄えすぎたら、俺の身体が最悪爆散するらしいので、かなり気を使った。


ギリギリまで蓄えようとすると、悪寒と表現するのが近いと思う、ゾワゾワとするような感覚が身体を襲う。

身の危険を感じるのだ。

限界のギリギリを見極めた結果が、100メートルだったのだ。


風の魔法について。

現在、操作できる限りで最速で魔力を押しだした所、強力な風が発生した、

大人くらいだったら軽く吹き飛ばせる位の威力になったと思う。


風と言ったら空気砲だよね。と思い、圧縮した魔力の筒のような物を作り、圧縮した魔力で思いっきり押す要領でやってみようと、試しに岩に打ってみたら、ゴッという鈍い音とともに、岩が砕けたのだ。

結構な威力に戦慄した。

威力の調整は出来るのだが、日常生活だとあんまり使い道は無く、皆にお披露目する機会はとても少ない。


試してはないが、魔力を単純に渦を巻くように全力で回したら、竜巻を起こせるのだろうかとか考えているが、怖いので試していない。

前世でテレビで見たような大災害が起こったら洒落にならない。

だけど、機会があったら試してみたい。

戦術の幅は広げてるべきだとも考えている。


ちなみに、他の属性魔法を使いたいと、ケット・シーにお願いしてみたら。


(えっと、わたし、そういう事に興味なくてですね、詠唱の内容を知らないんですよね)


と言われてしまった。

なんてこった。

魔力は扱えるのに、魔法が使えない。

色々と試してみたいと考えているが、出来ないなら仕方がないと諦めているのが現状だ。


最近と言えば、ヘリオス兄、ティアと俺の3人で、近所の小さな丘の上の原っぱで集まり、各々やりたい事をやると言った感じだ。


ヘリオス兄とティアは剣術の訓練を行い、俺はその横で、魔力操作や魔法の実験をしている。


俺は、剣術の訓練を息抜き程度にしか考えていないから、そちらの技術は成長しないんだろう。


そんな感じで今日も集まり、俺は魔法の実験、二人は剣術の訓練といった感じだ。


「セリニス、お前もこっちで剣の練習するぞ」

「僕はいいや。魔法をもっと使えるようになりたいし」


ヘリオス兄は、もう普通に話せるようになっていた。


ちなみに俺の、普段の一人称が僕だ。

なんでだろうな、どうしても人と話すと、僕が基本になってしまう。

気があまり強くないからなのかな。


「そんな事じゃ強くなれいぞ」

「うーん……そうだね、もうちょっとしたらそっちに混ざろうかな」

「お前はいつもそうだ」


俺はあんまり人と争うのは好きではない。

格闘技とか全く興味なかったし。

と考えながら、膝の上でうとうとしているケット・シーを、さり気なく撫でる。


人によっては、殴る蹴るの格闘技を見て興奮するらしいが俺は苦手だ。

だってあんなの絶対痛いじゃん。

血も出たりするし。

技術には興味があるが、実践はだめだ。

どうしても目を逸らしてしまう。


今日は魔力を圧縮する練習をしている。

ぎゅぎゅっとね。その状態の魔力を遠隔操作しているのだ。

もっとだ。倍プッシュだ。


(おや……その魔力の状態)


何かに気づいたケット・シーからの急な念話に俺は驚きつつも、膝に座るケット・シーを見る。


(え、急に何? どうしたの?)

(その、”全てが停止”している感じ、冷属性魔法を発動している状態に近いですよ)


そんな馬鹿な。

魔法って、こんな適当な感じで使えて良いのか。


(ふふふ、さすが主様です。その極意まで会得してしまうとは、さすが私が見込んだお人です。わが弟子ながらあっぱれです!)


俺は、いつケット・シーの弟子になったんだろうか。


(試しに、その状態の魔力を、その雑草辺りに移動させてください)


言われたままにやってみる。

見た感じ、何か変わった様子を感じない。


(何も起こらないけど?)

(その雑草を触ってください)


恐る恐る、その雑草の葉を指先で触ってみる。

うわっ、冷たっ!

更に力を入れでつまんでみると、その草の半ば辺りから砕けてしまった。

この感じ、何処かで見たことある。

そうだ、液体窒素に漬けた物を握った時に砕けるあの感じだ。


(これが冷属性の魔法?)

(そうですよ)


勝手なイメージだけど、冷属性魔法というのは、氷が発生しそれで包むイメージをしていたけど実際は違うようだ。


そうだ、もしかしたら。


物が凍る状態と言うのは、確か、粒子だか分子だかが停止した状態。

それが物体が凍った状態ということになるなら、逆に、極端に動いている状態になったとしたら。


俺は少し興奮を覚えながら、魔力と震わすイメージで動かしてみる。


パチッ


ドアノブを触れる瞬間に起こる現象。

指先とドアノブの間に起こる発光現象が空中で発生した。

凄い、これって電気だろうか。

威力は静電気程度だけど、感動のあまり心が震えている。


もっと規模を大きく。


バチバチバチッ


うぉぉ。

凄い! 面白い!

原理はよく分からないが、電気を発生させることが出来た。


(主様すごいですね。雷属性も使えちゃうなんて)


なんだか、コツを掴んだような気がするぞ。

前世の研究者たちに感謝だ。

知識が無かったら、このような発想なんて思いつかなかっただろう。


俺はその日、他に何か出来ないかと試してみたが、思いつくような事はなく、他の属性魔法を扱うことは出来なかった。



今日は、ティアの家で食事会をする事になっている。

こちらの家族と、ティアの家族でホームパーティだ。


2つの家の両親は仲良く談笑をしている。

そして俺達は、各々好き勝手遊んでいる。


「セリニス、今日はすごかったねー!」

「え? 何が?」


ティアと二人きりになった時、急に話しかけられた。

そして褒められたが何の事かさっぱり分からない。


「だって、雷魔法も使えるなんてすごいよー」


あぁ、昼間の事か。

よく気付いたものだ。

そこまで近くには居なかったのに。


「見てたんだ」

「何してるのか気になっちゃってねー」


ティアに見られていたのか。

見られたからといって、困ることは無いけれど。


「そうなんだ。ティア達も凄いよね。もう剣術も立派になっちゃったし、僕はあんなに出来ないよ」

「そんなことないよ。だって、セリニスは魔法も使えるじゃない。魔法が使えて、剣術も扱える人なんてなかなか居ないよ」


確かにそうかもしれない。

そうなのだろうか…?

魔法の技量は特別凄いわけでも無いし、剣術も人並みより劣る程度だ。


「さすがセリニスね。私も頑張らなくちゃ」


なんか凄く持ち上げられて、恥ずかしい。

照れる。


「ティアは才能もあるし、もっと強くなれるよ。もうこの辺りの子ども達じゃ相手にならないしさ」


そう言うと、ティアは、はにかんだように笑った。


本当、ティアは可愛い。

きっと将来は、良いお婿さんを捕まえるに違いない。

いや、むしろ俺が探してきてやろう。

経済力、甲斐性、性格の良さ、全てパーフェクトな男をだ。

どこぞの馬の骨かも分からん男にティアを嫁がせる訳にはいかない。


そんな話をしていたら、時間はあっという間に過ぎていた。

辺りはずいぶんと暗くなっていたため、パーティはお開きとなった。


この様な日常が、幸せと言うんだろうな。

何処か他人事だったが、自分も幸せな気分に居ることに気づき、満たされた気分になった。


俺はこの様な生活を望んでいたのだろう。

剣術や魔法、親兄弟、友人と上手くやれている。


両親からの愛情表現はとても分かりやすく、愛されている事を実感出来て素直に嬉しい。

剣術の訓練、魔法の研究といった日常生活も上手くいっている。

物凄く充実している気がする。


こんな生活がずっと続けば良いのになと思いながらも、

その夜は心と体を休めることにした。

ブックマークありがとうございます。

心が折れない限り、引き続き頑張って続きを書きたいと思います。


よろしければ、ブックマークや評価をしていただけると嬉しいです。

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