再会(1)
二時間くらい勉強したあと息抜きのために公園に向かい、昨日と同じベンチに座る。
今日も公園には誰もいない。セミの鳴き声と木の葉の揺れる音と時折通る車の音のみのゆったりした空間が心地よく目を閉じたまま時間の流れることも気にせずにいた。
ピタッと頬に冷たい何かが当たり目を開き何かが触れた方を向くが何もない。
すると後ろから
「お前もこの公園好きなのか」
と声がした。昔もこんなことがあったようなと思い後ろを向く。
背が高く、大工の作業着を着た金髪の男が悪戯っぽく笑っている。
「り、力?」
「やっぱり、海だったか」そう言って男は笑う。
「やっぱりってどういうことだよ?」
「えっ?マジか?なんだ俺、昨日向こうの入り口から見たときこっち見てたから海も気づいたのかと思ってたぞ。」
「昨日・・あっ!」そういえば昨日僕を見ていた男がいた。
「ご、ごめん」
「まあ、別に謝ることでもないけどさ。」少しがっかりした感じで言ったあと最初に振り返った時にしていた悪戯っぽい笑顔になり
「もしかして、今のおれの登場の仕方もわからなかった訳はないよな?」
「えっ、全然わかんない」さらっと言った僕に力は
「う、嘘だろ・・」と本気で落ち込んだ顔をした。
「嘘だよ。友達になった日のことは忘れないよ」と笑うと力はほっとしたように
「そういう冗談やめろよな。マジで忘れたのかと思ってめっちゃへこんだだろ。」
と言って笑い缶のジュースをくれた。
昔、お父さんに怒られ家を飛び出し、この公園で一人で泣いていた時、急に頬に冷たいものが当たり周りを見渡したが何もないし誰もいない不思議に思っているとベンチの下から金髪の少年が現れ、缶ジュースを出しながら、
「おまえもこの公園好きか?」と言った。
なんでわざわざその時を再現したのかはわからなかったが僕はとても嬉しかったがなぜこのようなことをしたかの理由はすぐに力が言った。
「お、おれさ・・あの~・・」言いよどみ、
僕が「どうしたの?」と聞くと決意をしたような顔になり
「あのさ海、あの時ひどいこと言って悪かった。お前は何にも悪くないのに俺、ガキだったからよくわかんないのにお前のこと責めるようなこと言ってしまってホント後悔してたんだよ」
「えっ?」僕は再会した喜びで忘れていたが、そういえば別れたあの日ケンカしていたことを思い出し少し気まずい感じになったが、
「だ、だからさ最初に戻ったらなんか仲直りできるかなと思ってさ」
悪戯っぽく笑い力が言った。僕は吹き出してしまった。
「何が面白いんだよ」少し怒った声で力がいい、
「いや、考え方が単純だなと思ったのと力は変わらないなぁと思って」
と言って笑うと力は恥ずかしそうに
「うるさいな、俺だってだいぶ成長したって親父に言われるんだぜ」
「ごめん、ごめん。でもあんまり変わってないのも嬉しいし、あの時のことも気にしてないよ」
そう言うと力はほっとした表情になり、
「おまえも変わんないぜ」と言って二人で笑った。
「さっき言った親父って・・」僕が言いかけた時、公園の入口の方から、
「力、テメェー」と言って男が走ってきた。
「やべぇ、海、明日もここに来るか?」
「たぶん・・」そう言うと
「じゃあ、また明日ここで会おうぜ。それじゃあな」と言って力はものすごいスピードで走って行った。
ちょうど追いかけてきた男が僕の前を通り過ぎようとして、少し行った所で振り返り僕に向かって
「もしかしてだけど・・」少し言いにくそうな感じだったので
「どうかしましたか」と聞くと
「いや、あいつにかつあげとかされてないよね?」と聞かれたので吹き出しそうになったが
「逆に缶ジュースただで貰いましたよ。」
というと不思議そうな顔になって何か言おうとしたがその前に
「力君だいぶ遠くまで逃げてますね」
というとしまったという顔をして
「もしなにかされたなら、この近くで家建ててるとこあるからそこ来てくれたらなんとかするから」
と言って力を追いかけて行った。結局何があったのかは、わからなかったが明日力に聞けばいいかと思いふっと明日も力に会えると思うとうれしい反面どんな感じで接したらいいのかわからなくなり不安にもなった。