勇姿
「ハァ、ハァ・・・」
僕達が公民館に着くと、すでに多くの人が公民館の広い部屋に集まっていた。
「おじさんは?」
慎が聞き、辺りを見回すが姿はない。
「おや、海くんじゃないか?」
いきなり、名前を呼ばれて振り返ると、父と何度か一緒にいるところを見たことのある人が立っていた。
「こんにちは、え~と・・・」
「ああ、そうだよな。僕は海くんのお父さんの幼馴染みの田中という者だよ。あいつのことだから、僕のことなんて話してないと思ってたけどね。」
「すみません。」
「君の謝ることじゃないよ」
田中は笑いながらいい、真顔になって
「お父さんの最後になるかもしれない演説を聞きにきたのかい?」
「えっ、そうなんですか?」
力が驚いて聞く。
「そうか、何も知らないできたのか。まあ、お父さんの勇姿ってやつをしっかり見てやってくれよ。」
田中は言うと、そのまま前の方の席に座りに行った。
司会の人が
「それでは、高村市長お願いします。」
ブーイングの中、現れた父はまっすぐにマイクのある台まで進み、台の正面の位置で立っていた僕らを見て少し驚いた顔をしたが、直ぐに神妙な表情になり話始めた。




