古谷さん
「すみません、ここで働いてる人で古谷さんっていますか?」
僕は、慎と仕事が休みな力と一緒にボケじいの話のあと図書館に来て、受付の人に聞いた。受付の人は不思議そうに
「いえ、職員のなかにはそのような方はいませんけど・・・」
「そうですか、すみません。」
僕は頭を下げて、急ぎ足でその場を離れ、二人が僕のあとを追って来た。空いていた椅子に座ると、慎が
「なんだったの、さっきの?」
僕は今朝の話をして、
「僕が今日も行く場所で両親が知ってるのは、図書館だと思ったんだけど・・・」
「その古谷さんってのが誰かわからないってことだよな?」
力が確認する。僕も頷き、しばしの間3人に沈黙の時間があり、
慎が急に立ちあがり、僕と力が慎を見ると、慎が
「その人のこと考えてても意味ないから、ボケじいが言ってた駅員さんのこと調べよう。」
「でも、そんなのどうやって調べるんだよ」
力が言うと、慎は「はあっ」と息をはいて、
「力、ここは図書館だよ。昔の新聞とかそういう資料だってあるよ」
「ああ、そうだな。」
力は少し恥ずかしそうに言い、3人で別れて資料を探した。
30分くらいして、再び集まったとき、僕と力はなにも持っていなくて、慎だけが小さな新聞記事をもっていた。
「さすが慎。」
力がそう言うと、慎は首を横に振り、
「いや、僕もこの記事については自信がないよ。」
「とりあえず、見よっか。」
僕が言うと3人で小さな記事を覗きこむ。記事には
「高村市長の解任の原因はその失政にあり。」
の見出しから始まっていた。高村市長とは僕のお父さんのことで、これにはボケじいの話と関係性が見つからなかった。そこに力が
「慎、今はボケじいの話の市長だろう?海のおじさん関係ないじゃないか。」
「いや、ボケじいの話と関係はないと思うんだけど、この記事にさっき海が言ってた人と同じかわからないけど、古谷って名前があってさ。内容はまだよく見てないけど。」
僕達はもう一度記事を見た。
「高村現市長は、前々市長であった古谷氏の政策である子どもに対する給付金制度の維持を訴え、子育て世代の得票を集めたが、児童養護施設への過度の援助等が表面化し、市長本人の生い立ちから、一部の子どもにのみ、援助を行っていたのではないかとの批判が高まっている。古谷氏の政策には確かに児童養護施設の運営費の補助が含まれており、政策実行には着手できていたが、一般家庭の子どもへの給付金を減額して児童養護施設への援助金を増やしていたことに対しての反発は根強くあり、私情による子どもの差別だと批判する議員も出てきている。」
「これって俺らの施設への援助がってことだよな?」
「そうだね。僕らの施設維持のためにしてくれたことで海のおじさんは・・・」
力と慎は暗い顔で、ただ記事を見つめていた。僕も何も言えずに同じように記事を見ていた。




